CX
公開:
2021.05.24
株式会社トリドールホールディングス
(写真左)株式会社トリドールホールディングス マーケティング部/株式会社丸亀製麺 マーケティング統括部グロースアナリシス部/西村友博さま
(写真右)株式会社丸亀製麺/営業支援部/大道 智明さま
急激な時代の変化にも対応できるのは 顧客の声を聞き続けているから。 5年間NPS®を使い続けてきた丸亀製麺のCX戦略とは?
エモーションテック 編集部
NPS活用やCX向上のためのお役立ち情報を発信しています。
目次
世界を舞台に飲食事業をグローバル展開する株式会社トリドールホールディングス様。今回は、その事業の柱である讃岐釜揚げうどん「丸亀製麺」のCX戦略を推進するお二人に、これまでの顧客体験マネジメントの取組みを取材しました。
―これまでの御社のCX調査について教えてください。
大道氏:
CX調査は、「EmotionTech CX」を導入した2016年頃から始めています。CXM(顧客体験マネジメント)の考え方が社内に浸透してきたのは、2017年にデータアナリストの西村が入社してからですね。
最初は、今のように全店舗での調査ではなく、数店舗を対象にCX調査を実施していました。
その頃実施した調査結果では、エモーションテック社の課題の可視化技術によって、自分たちの強みと弱みが見えた事を覚えています。
丸亀製麵の強みは、何よりも「手作り」「出来立て」そして「美味しい」という商品力。
NPSを定常的に計測していく中で、新商品が不人気だと、伴ってNPSも下がっていくと分かりました。強みである商品は、リスクにも繋がるということですね。
現在は、800店舗以上ある全店舗を対象にお客様の声を日々収集しています。
購入者に向けて発券する「うどん札」(クーポン券)の裏側に印字してあるアンケート用QRコード、もしくは「丸亀製麵」公式アプリ内からアクセスしていただき、アンケートに回答して頂いています。
調査結果は、西村が所属するグロースアナリシス部(分析チーム)が分析したものを共有してもらって、営業支援部から店舗統括者(管理職)に向けてレポートを共有します。
レポートは、週次、月次の2種類。
週次ではお客様のコメント等の定性的な情報を、月次ではNPS等の定量的な情報を確認します。
NPSと購買データの関連性を知る事で、分析の質がぐんと向上。
―2017年からCXMが本格化したとのことですが、まず西村さんがデータアナリストとして最初に着手したことは何でしたか?
西村氏:
まず、NPSと売上との関係性を分析しました。
例えば「EmotionTech」で得た調査結果(NPSや推奨度等)と、丸亀製麺の公式アプリにご登録のお客様の購買データとの関係性の分析や、NPSのトレンドと売上データのトレンドの相関の分析です。
その結果、
次の点が明らかになりました。
顧客の購買情報と調査結果との関連性を明らかにし、「NPSが高くなることによって社内にとっての重要指標が向上する」ことを確認することが出来れば、当然ながらNPSそのものに信頼を持つことが出来ます。
このNPSと購買データの関係性の分析によって、調査データ自体の信ぴょう性がぐんと高まりましたね。
回答負荷を抑えたシンプルさと現場目線の質問設計で、回答率が20%向上。
―調査データと顧客データの関係を分析し、データの信ぴょう性を高めることは、非常に大切ですよね。その他、何か調査や分析をする上で工夫した事があれば教えてください。
西村氏:
分析手法を改善したこと以外では、質問内容をがらりと変えました。
というのも、以前は質問数が多いことが回答率の低下につながっており、回答するモチベーションの高いお客様の意見に偏りがちという傾向が見られました。
つまり、非常にいい体験をしたお客様か、非常に悪い体験をしたお客様かのいずれかの意見に偏っていたということです。
一方で推奨意向の改善は、「何となく不満を感じたお客様」や「何となくまた来たいと思ったお客様」など、推奨と批判の中間のお客様の体験をいかに改善できるかということが重要になります。
したがって、中間層のお客様の声がより多く集まるようにアンケートの回答率を上げる必要があったのです。
当時のアンケートは、入店から購入後までのお客様の一連のジャーニーマップの全てについて、細かく質問設計していました。その結果、長くなってしまったのです。これでは、お客様の回答負荷がとても大きいため、回答数が下がることは明らかでした。
そこで、思い切って質問をシンプルにすることにしました。
具体的には、現場の皆さんに馴染みのあるQSC(品質・サービス・クリンリネス)に特化した質問に絞りました。
―いかに質問の負荷を下げ重要な情報を得られるか。これは永遠のテーマですよね。質問をシンプルにしてからは、どのような効果がありましたか。
西村氏:
まず、お客様の回答率が20%もアップしました。
これは狙い通りで、大きな成果だと思っています。
あとは、QSCの観点からデータ分析出来るようになった事。
これによって、NPSとQSCの相関関係を分析できるようになりました。またこの結果は、QSCのどこを改善すべきかという形でアウトプットされますので、実際に改善施策を行う現場の皆さんにとっても非常に伝わりやすく、良かった事だと思っています。
日々の調査と分析から、コロナ禍でのお客様変化にも、いち早く応対できた。
西村氏:
これは結果論ではあるのですが、質問数を変えたことで回答数が一定数以上取れるようになり、調査自体が安定した結果、ビジネスの変化についていきやすくなったと実感しています。
大道氏:
特に、今回のコロナという未曽有の事態におかれてからは、日々のCX調査の重要性を実感しました。お客様が今何に対して不満を抱いているのかということを、いち早く把握することが出来ましたよね。
西村氏:
直近だと、緊急事態宣言の前後で収集したデータから顧客の変化をいち早くキャッチし、改善施策に繋げることが出来ましたね。
これは、回答者を推奨者(推奨度9・10)と非推奨者(推奨度0~8)に分類し、非推奨者のフリーコメントを品詞別に分解したものです。
このように見ることで、お客様が今、何に対して不満や不安を持っているか、ということが、明らかになります。
様々なコメントが寄せられていましたが、推奨度0~8を選んだ「非推奨者」からのコメントで最も多く見つかったのが、「マスク」という言葉でした。
つまり「マスクの着用が徹底出来ていない」ということが、NPSを下げてしまう原因になっていることが特定できたのです。
大道氏:
当時のお店の状況を振り返ると、ウイルス対策で新しく様々なオペレーションが追加され、店内は大混乱でした。
しかしこの調査結果のおかげで、いち早く着手すべきことが何なのかが明らかになり、迷うことなく全店舗で徹底すべきことに優先順位をつけることが出来ました。
ちなみに、マスクの着用を改善した結果、その後の推奨度とNPSは、狙い通り改善されました。
CX戦略の肝は、全社一丸となって取り組むこと。
―CX向上を成功に導くために、最も重要なポイントは何だと思いますか?
西村氏:
会社全体として取り組む。これに尽きると思います。
ただ、顧客ロイヤルティの向上というのは、すぐに変わるものではありませんので、腰を据えてじっくり取り組まないとならないんですよね。
ですから、まずは、経営層からその重要性を理解してもらう必要があります。一部の部署だけが取り組んでも、成功はあり得ないと思っています。
NPSがいかに収益にインパクトするのか。NPSと各店舗の売上がどうリンクするのか。まずは、このようなデータを経営層に証明し、NPSへの信頼感を醸成すること。そして、そこから全社に波及していく。
これが、NPSを使ったCX戦略の肝じゃないかと思っています。
大道氏:
そうですね。あとは、いかに現場目線で考えられるか。これも重要だと考えています。
改善施策を続けても、営業成績として表れるのは2~3カ月後だったりしますので、ここをどう捉えるのかは、個々人で受け止め方が異なるのは当然です。
日々の売上を考えねばならない現場のみなさんに、CX調査やNPSの意義をどう理解してもらうのか。特にマネージャーの熱量が重要だと考えています。今後も社員の意識改革については、私たちが取り組まないとならない大切なテーマであるな、と捉えています。
―エモーションテック社を継続利用してくださっている理由について、教えてください。
大道氏:
アンケートシステム自体がとても使いやすいと思っています。
回答が入るとすぐにデータが取り出せるという、リアルタイム性も気に入っています。
あとは、グループ設定機能が良いですね。
【グループ設定機能とは】複数のセグメントを設定した上で、配信するURL/QRコードをひとつにまとめる方法。 集計単位を区切るためにセグメントを複数設定したいが、アンケート回答のURL/QRコードを個別に配布することが難しいという場合などに使用します。 質問に答えているように見えたまま、回答者がセグメントを選択するという機能です。
1店舗程度であれば、フリーのアンケートシステムでも問題ないかもしれませんが、我々は、800店舗以上も店舗がありますので、このような機能のあるシステムが必要だと思っています。
あとは、コストパフォーマンス。ありがたいです(笑)
西村氏:
「EmotionTech CX」は、単なるサーベイツールではなく、NPSに特化しているシステム。だから使いやすいのだと理解しています。
あとは、NPSって、一度やって終わりではなく、収集し続けることで、価値が高まるという特性があるじゃないですか。5年ほど「EmotionTech」のシステムを使い続けていますが、同じシステムの中でデータを保持し続けるというところで、日々データバリューが上がっていっています。
―ありがとうございます!おしまいに、今後御社がCXで挑戦したい事を教えてください。
大道氏:
本質的な話となりますけど、私たちの経営理念である「Finding New Value. Simply For Your Pleasure」(「”新鮮な感動”をお客様に届け続けたい」)に立ち返り、今、改めて「丸亀製麵にとっての顧客体験とは何か」という事を、きちんと定義し直そうと考えています。
目の前の売上は大事なのですが、私たちが本来「目指すべき売上」とは何なのか?
私たちのお客様にとって、ベストな”体験”とは何なのか?
今後、このあたりの本質的な問いを今一度問い直して、部署横断のプロジェクト等で再定義していきたいと考えています。
あとは、NPSだけでなく、eNPS調査(従業員体験調査)も導入を検討しています。
従業員エンゲージメントも、顧客体験向上にとって大切であると考えていますから。
西村氏:
今、ビジネスの形が急速に変化していますよね。
そのような時、自分たちがやっていることが正しいのか、そうでないのかは、唯一お客様が教えてくれるのだと改めて実感しています。
今後もCX調査を継続し、お客様の声を聞き、顧客志向の組織を形成していきたいですね。
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NPS調査やCXMをうまく社内で運用してほしいという姿勢があり、いつも素晴らしいなと思っています。