NPSの業界平均スコアは?日本におけるベンチマークとNPS向上の秘訣 | 株式会社エモーションテック

NPSの業界平均スコアは?日本におけるベンチマークとNPS向上の秘訣

更新日:2025.12.05

このコラムの執筆者
梅川 啓

株式会社エモーションテック Marketing Manager 

複数企業の事業責任者を歴任したのち、2020年よりエモーションテックにCXコンサルタントとして参画。製薬会社や金融機関、化粧品メーカーのNPSプロジェクトやCXマネジメントの支援に携わる。2022年よりマーケティングに従事し、各種セミナーやイベントに登壇。

NPS(ネット・プロモーター・スコア)は、顧客ロイヤルティを測るための重要な指標であり、近年では日本でも取り組み企業が増えています。

取り組みを進める中で「自社のNPSは競合他社や業界平均と比べてどうなのか?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

結論から言えば、NPSの平均スコアは業種や市場・ビジネスモデルによっても大きく異なりますが、一般的な日本企業の場合、「-15」以下のマイナスになることが多いです。

この記事では、NPSの平均がマイナスになる理由から、日本の業界別ランキングの傾向、そしてNPSを真にビジネス成果につなげるための具体的な活用法までを解説します。

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業界別に見るNPSランキング:日本の最新データとベンチマークの考え方

NPS業界別ランキング

エモーションテックではこれまでに各業界におけるNPSベンチマーク調査を実施しており、その結果の一部をご紹介します。

これらはあくまで参考値としてご覧いただければと思いますが、製薬業界を除いてはすべて業界平均はマイナスの値になっています。

分類業界NPS
小売・EC・サービス関連スポーツメーカー24.5
女性向けアパレルブランド-8
アパレルECサイト-56.1
インターネット・EC-20
オンライン旅行サービス-31
ファッションビル-54.8
カタログ通販-32
百貨店・デパート-25
スーパー-38
金融・保険・不動産関連代理店型自動車保険-47.4
ダイレクト型自動車保険-31.7
法人顧客 メインバンク-47.8
個人顧客 メインバンク-37.9
メガバンク-34
従来型の銀行-52.1
ネット銀行-19.1
マンションデベロッパー-15.2
自動車・通信・家電関連通信-29.6
自動車メーカー-11
家電メーカー-35
IT・BtoBサービス関連グループウェア-40
MDM (モバイルデバイス管理)-37
ビジネスチャットツール-32
製薬業界2.9

NPSの平均スコアは、顧客がその業界に対して抱く期待値や、競合間のサービスの差別化の度合いによって大きく異なります。

日本の業界別NPSランキングの傾向として、とてもざっくりですが、以下のような傾向が見られるのではないかと思います。

傾向該当する主な業界の例特徴
比較的高い傾向クレジットカード、ネット銀行などサービス利用頻度が高く、使いやすさや利便性が直結しやすい業界。顧客とのタッチポイントが多く、改善効果が出やすい。
低い傾向通信キャリア、電力・ガスなどサービスが生活インフラ化しており、企業努力による差別化が難しく、不満点(料金、通信品質など)が目立ちやすい業界。

また、重要な点として、NPSのスコアが低い業界でも「その業界内での順位が上がれば競合に対する優位性が高い」ということになります。

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NPSは「業界平均」ではなく「競合優位性」と「時系列」に着目

NPSを計測する目的は、自社の顧客ロイヤルティを作り、競合優位性を築くことになります。業界平均のスコアと自社を比べるだけではなく、さまざまな取り組みの結果として相対的なポジションが向上しているかに着目をしましょう。

また調査の背景や母集団によってもスコアの捉え方は大きく変わりますので、自分たちで測定したNPSと他社が公開しているNPSや、公開されているNPSを単純に比較するには注意が必要です。

自社のNPSのポジショニングを把握するには「業界トップ企業」や「自社の主要な競合」のスコアをベンチマークとして設定し、独自でベンチマーク調査を行い、自社の立ち位置を明確にすることをおすすめします。

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NPSを正しく活用するための重要ポイント

批判者へのアクションが最重要

NPSを指標としてロイヤルティを向上させるための最も重要なポイントは、スコアを押し下げている批判者への具体的なアクションです。

批判者から寄せられた低評価の背景には、企業が気づいていない、あるいは軽視している深刻な課題が隠されている可能性が高く、これらの課題を改善することは、顧客離れを防ぐだけでなく、将来的に中立者や推奨者を増やすことにも繋がります。

一方で、日本では0-10点の推奨度に対して、大きな不満がなくても「5点」をつける方も多く見られます。そういった傾向が気になる場合には「0-4点」の半分より下の点数をつけている方を「強批判者」、「5-6点」をつけている方を「弱批判者」として再分類し、「強批判者」と「弱批判者」でどういった違いがあるかを見ていくことをおすすめします。

項目強批判者 (True Detractors)弱批判者 (Soft Detractors)
評価点0点〜4点5点〜6点
分類の意図深刻な不満や問題点を抱えており、ロイヤルティが極めて低い顧客。大きな不満はないものの、積極的に推奨できないと感じている、または日本特有の「控えめな評価」をする顧客。
定義企業に対して明確かつ深刻な不満を抱え、早急な離脱や強烈なネガティブな発言が予想される顧客層。製品・サービスに期待はずれの点があるか、あるいは消極的なため、推奨できないと評価した顧客層。
主な行動継続的な利用を停止する、ネガティブな口コミを積極的に広める、クレームを提起する。積極的な批判はしないが、自社への愛着は低く、競合オファーで離脱する可能性がある。
対応の優先度最優先 (早急に問題を特定し、関係修復を図る必要がある層) (不満を解消し、「弱推奨者 (7-8点)」への引き上げを目指すべき層)

批判者からのフィードバックは、「無料で提供された改善のヒント」として捉え、迅速かつ丁寧に対応することがロイヤルティ向上への近道となります。

NPSは「顧客体験(CX)」改善のための指標である

NPSはしばしば「満足度」と混同されますが、その本質は顧客体験(CX)の良し悪しを測る指標です。あり、ロイヤルティ向上を図るための手段です。

NPSは測定して終わりにせず、スコアの背景にある「なぜその評価になったのか?」という理由こそが重要です。顧客が商品購入から利用、サポートに至る一連の体験の中で、どの接点(タッチポイント)で感動し、どの接点で失望したのかを特定し、改善活動を行いながら、スコアをモニタリングするなど継続的な取り組みを行いましょう。

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CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?顧客体験向上のポイントや事例を解説

VoCをNPSデータと組み合わせて分析する

またNPSを効果的に活用するには、NPSアンケートで一緒に集めた各顧客体験に関する評価やその他フリーコメントなどのVoC(Voice of Customer:顧客の声)を分析することが不可欠です。

  • 定量VoC(NPS・顧客体験に対するヒョか): 課題がどこにあるかを把握する
  • 定性VoC(自由記述): 課題の原因を特定する

「NPSが低い」「特定の顧客体験に対する評価が低い」という定量データに対し、「サポート対応の待ち時間が長すぎる」といった具体的な定性VoCを組み合わせることで、どの顧客体験を改善すれば、NPSが向上するのかという改善の優先順位付けとアクションプランの策定が可能になります。

エモーションテックでは、このVoCをNPSデータと統合的に分析し、事業成長につながる真の改善ポイントを特定するVoC活用ソリューションを提供しています。


まとめ:NPSを計測する目的と次の一歩

日本においてはNPSがマイナスになってしまうことも珍しいことではありません。
重要なのは、業界平均やランキングに一喜一憂することなく、NPSは自社のロイヤルティ向上を測る指標であるという点です。自社のスコアの背景にある顧客体験の課題を特定し、改善活動を行い、継続的なモニタリングを行いましょう。


よくある質問

  • Q1. NPSの平均スコアはプラスになるべきですか?
    • A. いいえ、NPSは構造上マイナスになりやすく、日本市場では-15ポイント以下が一般的です。重要なのは、業界平均との比較よりも、競合他社と比較した際の優位性を知ることです。
  • Q2. NPSを測定する頻度はどれくらいが適切ですか?
    • A. 顧客接点の種類によって異なりますが、年1回の大規模調査に加え、特定のサービス利用後など、顧客接点ごとに短期的なトランザクションNPSを計測すると、タイムリーな改善に役立ちます。
  • Q3. NPSが高い企業の特徴は何ですか?
    • A. NPSが高い企業は、批判者からのフィードバックを最重要視し、顧客体験(CX)の全行程で一貫して期待を上回る感動を提供できる体制を構築している点が共通しています。
  • Q4. NPSと顧客満足度(CS)の違いは何ですか?
    • A. 顧客満足度(CS)は「過去の体験への満足」を測るのに対し、NPSは「将来的な推奨意図」を測るため、より収益性や事業成長との相関性が高いとされています。
  • Q5. NPSを向上させるための最初の一歩は何ですか?
    • A. まずは批判者(Detractors)の評価理由(VoC)を深く分析し、最も深刻かつ解決可能な顧客体験上の課題を特定し、その改善にリソースを集中させることが最初の一歩となります。

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