主成分分析とは? 顧客アンケートの「膨大な声」を「次の一手」に変える分析手法をわかりやすく解説 | 株式会社エモーションテック

主成分分析とは? 顧客アンケートの「膨大な声」を「次の一手」に変える分析手法をわかりやすく解説

更新日:2025.12.02

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エモーションテック 編集部

NPS活用やCX向上のためのお役立ち情報を発信しています。

CX(カスタマーエクスペリエンス)推進部門やマーケティング担当のみなさまは、日々NPS®(ネット・プロモーター・スコア)をはじめとする顧客アンケートの実施や、VoC(顧客の声)の収集・分析を行うなど、CXマネジメント(CXM)に取り組まれていることと存じます。

顧客の声を詳細に聞こうとすればするほど、アンケートの設問数は増えがちです。その結果、手元には膨大なデータ(変数)が残りますが、それらを一つひとつ読み込んだとしても、顧客が求めている体験の本質や、ロイヤルティに最も強く影響する要素を見抜くことは困難です。

この記事では、そうした「膨大な変数」から顧客のインサイトを抽出し、現場が動く「次の一手」に変えるための強力な分析手法である「主成分分析(Principal Component Analysis, PCA)」について、CXの専門家の視点からわかりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 主成分分析がどのような分析手法なのか、その基本的な概念を理解できる。
  • なぜCX推進において主成分分析が重要なのか、その具体的なメリットを学べる。
  • アンケートデータに主成分分析を活用する際の、具体的なステップや解釈のポイントを掴める。
  • 分析結果をどのように「次の一手」に繋げていくかのヒントを得られる。

ぜひ最後までご覧いただき、顧客の声の活用レベルを一段階引き上げるヒントとしてお役立てください。

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主成分分析とは?複雑なデータを「ギュッと要約」する技術

主成分分析とは、一言でいえば「たくさんの変数(データ)を、互いに独立した少数の『主成分』と呼ばれる新しい変数に要約する」ための統計的な分析手法(多変量解析)です。

例えば、健康診断で考えてみましょう。結果票には「身長」「体重」「BMI」「体脂肪率」「腹囲」「血圧(最高)」「血圧(最低)」など、非常に多くの項目(=変数)が並んでいます。これらすべてを個別に見て「健康かどうか」を判断するのは大変です。

しかし、よく見ると、これらの変数には似たような傾向を示すグループがあることに気づくはずです。

  • 「体重」「BMI」「体脂肪率」「腹囲」は、いずれも「体格・肥満度」に関連する情報です。
  • 「血圧(最高)」「血圧(最低)」は、どちらも「血圧の状態」に関連する情報です。

主成分分析は、このように「互いに関連性の高い変数群」をつけ出し、それらをひとまとめにした「新しい指標(=主成分)」を作り出す技術です。上の例で言えば、複数の項目を「第1主成分:肥満度」や「第2主成分:血圧」といった形で、元々の変数が持っている情報の「ばらつき(情報量)」を、できるだけ情報を失わないように、少ない数の指標に「要約」するイメージです。

顧客アンケートの文脈に置き換えてみましょう。
あるレストランの満足度調査で、以下のような多数の評価項目があったとします。

「料理の味」「料理の見た目」「メニューの豊富さ」「ドリンクの豊富さ」「接客スタッフの態度」「接客スタッフのスピード」「店内の清潔さ」「店内の雰囲気(BGMや照明)」「価格の妥当性」「注文のしやすさ」

10個もの項目があると、どれが総合満足度に影響しているのか分析しづらいです。しかし、主成分分析を用いて、これらの項目を以下のように要約すればどうでしょう。

第1主成分
(料理・メニューの質)
「料理の味」「料理の見た目」
「メニューの豊富さ」「ドリンクの豊富さ」
第2主成分
(接客・サービス)
「接客スタッフの態度」「接客スタッフのスピード」
「注文のしやすさ」
第3主成分
(店舗の快適性)
「店内の清潔さ」「店内の雰囲気」

10個あった評価項目を「料理・メニュー」「接客」「快適性」という3つの「顧客体験の軸」に集約できれば、データは格段に扱いやすくなります。これが主成分分析の基本的な考え方です。

なぜCX推進に主成分分析が重要なのか?3つの具体的なメリット

では、この主成分分析はCX推進担当者のみなさまにとって、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、ビジネス上の重要性を3つの側面に分けて解説します。

1. 複雑な顧客の声を「本質的な体験軸」で捉え直せる

最大のメリットは、前述の例のように、個別の設問項目(変数)の裏に隠された「共通の概念」や「顧客が評価している本質的な軸」を見つけ出せることです。

顧客は「接客スタッフの態度」や「スピード」を個別に評価しているというよりも、それらを総合して「スタッフの対応力」という一つの「体験」として認識している可能性があります。主成分分析は、このようなデータ上の関連性から、顧客の認識に近い「体験軸」を客観的に抽出する手助けをします。

NPSや総合満足度を分析する際も、「品揃え」や「価格」といった個別の項目と結びつけるだけでなく、「商品力」「利便性」「サポート品質」といった「主成分(体験軸)」と結びつけることで、より解像度の高い、本質的な改善ドライバーを特定できるようになります。

2. 「多すぎる変数」の問題(多重共線性)を回避できる

これは少し専門的な話になりますが、CX分析において非常に重要なポイントです。

みなさまが「NPS(推奨度)を向上させる要因は何か?」を特定するために、NPSを目的変数(結果)とし、各評価項目(例:「品質」「価格」「サポート」など)を説明変数(原因)として「重回帰分析」という分析手法を用いることがあるかと思います。

しかし、この時、説明変数同士(例えば「品質」と「機能性」、「サポートの速さ」と「サポートの丁寧さ」)の相関が強すぎると、「多重共線性(マルチコ)」と呼ばれる問題が発生します。多重共線性が生じると、分析結果が不安定になり、本来重要でない項目が重要に見えたり、その逆が起きたりと、分析結果の信頼性が著しく低下します。

主成分分析によって作られる「第1主成分」「第2主成分」…は、互いに相関しない(=独立した)変数として計算されるため、分析結果の信頼性担保に役立ちます。

元の変数(例:「品質」「機能性」)の代わりに、それらを要約した主成分(例:「製品力」)を重回帰分析の説明変数として用いることで、多重共線性の問題を回避し、より安定した信頼性の高い分析結果を得ることができるのです。(この手法を「主成分回帰」と呼ぶこともあります)

参考記事:
回帰分析とは? NPS改善に効く「重回帰分析」をわかりやすく解説

3. 顧客セグメンテーション(分類)の精度を高められる

CX向上においては、すべてのお客様に同じ施策を打つのではなく、お客様をいくつかのグループ(セグメント)に分け、それぞれのニーズに合ったアプローチをすることが有効です。この手法を「顧客セグメンテーション」と呼びます。

セグメンテーションを行う際、「クラスター分析」という手法がよく用いられます。これは、回答パターンの似ている顧客同士をグループ化する手法です。

しかし、ここでもアンケートの評価項目(変数)が多すぎると、どの変数を基準にグループ分けすべきか曖昧になり、分析結果が不安定になることがあります。いわゆる「次元の呪い」と呼ばれる問題です。

主成分分析は、この問題にも有効です。
まず主成分分析を行い、数十個あった評価項目を、例えば「価格重視度」「品質重視度」「サポート重視度」といった3つの主成分(新しいスコア)に要約します。
その後、この要約された3つの主成分スコアを使ってクラスター分析を行うのです。

これにより、元の変数が多すぎてノイズに埋もれていた「顧客の本質的な違い」を、よりクリアにあぶり出し、精度の高いセグメンテーション(例:「価格に敏感だがサポートは求めない層」「価格は気にしないが品質とサポートを徹底的に重視する層」など)の実現に繋がります。

参考記事:
クラスター分析とは?顧客を分類する手法とCX向上の活用事例をわかりやすく解説

主成分分析の分析・計算プロセス(わかりやすく解説)

では、主成分分析は具体的にどのようなプロセスで実行されるのでしょうか。ここでは、CX担当者のみなさまが「概念」を理解するために、統計ソフトウェアの裏側で行われている計算のステップを、数式を極力使わずに「わかりやすく」解説します。

(※実際の計算は、SPSS、SAS、R、Pythonなどの統計解析ソフトやBIツールを用いて行います。)

【ステップ1】分析対象データの準備

まず、分析に使用するデータを準備します。主成分分析は、基本的に「量的変数」(5段階評価のリッカート尺度、満足度スコア、購入金額など)を対象とします。

CXの文脈では、以下のような顧客アンケートの「複数評価項目」のデータセットが対象となることが多いです。

例:

  • 設問A「品揃えの満足度」(1点~5点)
  • 設問B「価格の満足度」(1点~5点)
  • 設問C「接客の満足度」(1点~5点)
  • 設問D「店舗の清潔度」(1点~5点)

【ステップ2】データの標準化(スケールを揃える)

このステップは非常に重要です。もし、アンケート項目の中に「5段階評価」の項目と「購入金額(0円~100,000円)」のような、単位やスケール(尺度)が全く異なる変数が混在していると、どうなるでしょうか?

そのまま分析にかけると、数値の「ばらつき」が極端に大きい「購入金額」の影響ばかりが強く反映されてしまい、5段階評価の項目の情報が無視されてしまいます。

このようなことを防ぐため、主成分分析を行う前には通常、「標準化(Standardization)」という処理を行います。これは、すべての変数を「平均 0、標準偏差 1」のスケールに変換(正規化)する処理です。これにより、単位が異なる変数同士であっても、平等に「情報のばらつき」を評価できるようになります。

(※すべての変数が「5段階評価」のように同一の尺度で測定されている場合は、標準化を行わず「共分散行列」を用いることもありますが、一般的には標準化を行い「相関行列」を用いて分析することが推奨されます。)

【ステップ3】相関行列(または共分散行列)の計算

次に、標準化した変数データを用いて、各変数間の「相関関係」を網羅した一覧表(=相関行列)を作成します。

これは、「品揃え」と「価格」の相関はどれくらいか、「品揃え」と「接客」の相関は…といったように、全ての変数のペアの相関(-1から+1の値)を計算したものです。主成分分析は、この「相関」を手がかりに、「どの変数同士が似ているか」を探りにいきます。

【ステップ4】固有値と固有ベクトルの計算

相関行列を基に、「固有値(Eigenvalue)」と「固有ベクトル(Eigenvector)」というものを計算します。(この計算を「固有値分解」と呼びます)
ここが主成分分析の数学的な核心部ですが、統計解析を専門としていない方にとっては、「情報量の大きさ(固有値)と、その方向性(固有ベクトル)を見つけている」と理解いただければ十分です。

  • 固有値: その主成分が、元の変数全体の「情報量(ばらつき)」のうち、どれだけの量を説明できているかを示す「重要度・情報量」のようなものです。固有値が大きいほど、その主成分は多くの情報を持っています。
  • 固有ベクトル: その主成分が「どの変数と強い関係があるか」を示す「方向性・合成比率」のようなものです。

通常、変数の数だけ固有値と固有ベクトルが計算されます。例えば10個の変数(設問)があれば、10個の固有値・固有ベクトルが算出されます。

【ステップ5】採用する主成分の数を決定する

10個の変数から10個の主成分が計算されますが、それでは「要約」したことになりません。主成分分析の目的は「少数の主成分に要約する」ことでした。

ここで、ステップ4で計算した「固有値」を使います。主成分は、固有値が大きい順に「第1主成分」「第2主成分」…と呼ばれます。第1主成分が、最も多くの情報量(ばらつき)を説明できます。

では、何個の主成分を採用すればよいのでしょうか? 主な判断基準は2つあります。

  1. 基準1:固有値が「1」以上(カイザー基準)
    標準化した場合(相関行列を使用した場合)、元の変数はそれぞれ平均0、分散(情報量)1を持っています。したがって、固有値が「1」を下回る主成分は、「元の変数1個分」の情報量すら持たない、要約する価値の低い主成分であるとみなし、採用しないという基準です。
  2. 基準2:累積寄与率が「70%~80%」程度
    寄与率(Contribution Ratio)」とは、その主成分が全体の情報量の何パーセントを説明しているかを示す指標です。そして「累積寄与率(Cumulative Contribution Ratio)」は、第1主成分から順に寄与率を足し上げたものです。
    この累積寄与率が、例えば70%や80%に達するまで(=元のデータの情報量の7~8割を説明できるまで)の主成分(例:第3主成分まで)を採用する、という基準です。

これらの基準を参考に、分析者が「解釈のしやすさ」と「情報量の損失」を天秤にかけ、採用する主成分の数(例:3個)を決定します。

【ステップ6】主成分負荷量(解釈)と主成分得点の計算

採用する主成分の数が決まったら、いよいよ分析結果の解釈に入ります。

1. 主成分負荷量(Factor Loadings)の解釈

これは「新しく作られた主成分と、元の各変数との相関の強さ」を示す数値です。この数値(絶対値)が大きいほど、その変数がその主成分と強く関連していることを意味します。

例えば、第1主成分について「主成分負荷量」を見たときに、

  • 「料理の味」:0.85
  • 「料理の見た目」:0.79
  • 「接客態度」:0.15
  • 「店内の清潔さ」:0.09

となっていた場合、「料理の味」と「料理の見た目」が第1主成分と強い正の相関を持っていることが分かります。ここから、分析者はこの「第1主成分」を『料理の質』と名付ける(解釈する)ことができます。

2. 主成分得点(Principal Component Scores)の計算

最後に、顧客(回答者)一人ひとりについて、新しく作られた主成分(例:『料理の質』『接客の質』)が「何点になるか」を計算します。これを「主成分得点」と呼びます。

この主成分得点を算出することで、例えば以下のような分析が可能になります。

  • 『料理の質』のスコアと、NPSのスコア(推奨者/中立者/批判者)との関係性を見る。
  • 『料理の質』は高いが『接客の質』が低い顧客グループ(セグメント)を特定する。

このようにして、主成分分析は「多すぎる変数」を「解釈可能で扱いやすい少数の主成分スコア」に変換し、次の分析(重回帰分析クラスター分析)や、具体的なインサイトの発見へと繋げていくのです。

主成分分析の活用事例と成功のポイント

主成分分析のプロセスが理解できたところで、CXの現場でどのように活用し、成果に繋げるのか、具体的な事例と成功のためのポイントを解説します。

【活用事例】コールセンターの顧客満足度調査データの分析

ある企業のコールセンターでは、応対後の満足度調査を実施していました。アンケートでは、総合満足度に加え、以下のような12個の詳細評価項目を5段階で聴取していました。

「担当者の言葉遣い」「担当者の共感度」「担当者の知識量」「質問への回答の的確さ」「回答の迅速さ」「問題解決までのスピード」「電話の繋がりやすさ」「ガイダンスの分かりやすさ」「手続きの簡便さ」「Webサイトでの解決誘導」「アフターフォローの提案」「問題の根本解決」

これら12項目すべてと総合満足度の関連を見るのは難しく、また「言葉遣い」と「共感度」のように似通った項目も多く、多重共線性が疑われました。

ステップ1:主成分分析の実施

そこで、これら12項目に対して主成分分析(標準化、相関行列を使用)を実施しました。
その結果、固有値1以上、累積寄与率が約75%となる基準で、3つの主成分が抽出されました。

ステップ2:主成分負荷量による解釈(ネーミング)

各主成分の「主成分負荷量」を確認し、それぞれの主成分が何を示しているかを解釈しました。

成分名 負荷が高い項目と解釈
第1主成分(Z1) 「担当者の共感度」「担当者の言葉遣い」「担当者の知識量」「質問への回答の的確さ」
→ 解釈:『オペレーターの応対品質』
第2主成分(Z2) 「回答の迅速さ」「問題解決までのスピード」「電話の繋がりやすさ」
→ 解釈:『問題解決のスピード・効率性』
第3主成分(Z3) 「手続きの簡便さ」「Webサイトでの解決誘導」「アフターフォローの提案」「問題の根本解決」
→ 解釈:『プロセスと根本解決力』

これにより、12項目あった評価軸が、「①オペレーターの質」「②スピード」「③プロセス・解決力」という、コールセンターの顧客体験を構成する3つの本質的な軸に要約されました。

ステップ3:主成分得点による「次の一手」の決定

次に、全回答者について、この3つの主成分得点(Z1, Z2, Z3)を算出しました。
そして、総合満足度を目的変数とし、この3つの主成分得点を説明変数として重回帰分析(主成分回帰)を行いました。

分析結果:
総合満足度への影響度が最も高かったのは、第2主成分『問題解決のスピード・効率性』であり、次いで第3主成分『プロセスと根本解決力』でした。
意外にも、第1主成分『オペレーターの応対品質』(言葉遣いや共感度)の影響度は、前の2つに比べて低いことが判明しました。

考察とアクション:
このコールセンターでは、従来「オペレーターの応対品質(言葉遣いや共感度の研修)」に最も力を入れていました。しかし、データ分析の結果、顧客満足度に本当に強く影響していたのは「スピード」と「プロセス(根本解決)」であったことが明らかになりました。

この結果を受け、同社はリソースの配分を見直し、「オペレーターの応対研修」は一定レベルで継続する一方で、「電話の繋がりにくさの解消(繁忙期のオペレーターの増員)」や「FAQシステムの刷新による回答スピード向上」「一度の電話で問題を根本解決するためのナレッジ共有強化」といった施策に優先的に取り組むことを決定しました。
主成分分析によって「多すぎる声」を「本質的な体験軸」に要約したことで、勘や経験則ではなく、データに基づいた的確な「次の一手」を導き出すことができた事例です。

【成功のポイント】主成分分析を使いこなすための注意点

主成分分析は強力な手法ですが、万能ではありません。活用にあたっては以下の点に注意が必要です。

1. 主成分の「解釈」は分析者のスキルに依存する

主成分分析が自動で教えてくれるのは、あくまで「主成分負荷量」という数値までです。その数値を見て、第1主成分を『オペレーターの応対品質』と名付ける(解釈する)のは、分析者自身です。

このネーミング(解釈)が実態とずれていると、その後の分析や施策もすべて間違った方向に進んでしまいます。アンケートの設問設計の意図や、対象となるビジネス(例:コールセンターの業務)への深い理解に基づき、慎重に解釈を行う必要があります。

2. 分析の「前提」が適切か確認する

主成分分析は、変数間に「相関がある」ことを前提としています。もし、分析対象の変数がすべて互いに無相関(バラバラ)であれば、主成分分析(=要約)は意味を成しません。(この場合、KMO統計量やバートレットの球形性検定といった指標で確認することがあります)

また、前述の通り「量的変数」を対象とするため、例えば性別や居住地といった「質的変数(カテゴリカルデータ)」をそのまま投入することは適切ではありません。(「数量化III類」や「コレスポンデンス分析」といった別の手法が適している場合があります)

3. 「要約」による情報損失を意識する

主成分分析は、情報を「要約」する手法です。累積寄与率が80%だった場合、それは元の情報の20%は「捨てている」ことになります。
全体像を掴むためには非常に有効ですが、もし特定の個別の設問(例:「Webサイトでの解決誘導」)の動向だけをピンポイントで深掘りしたい場合は、主成分に要約せず、元の変数をそのまま分析した方が良い場合もあります。目的に応じて手法を使い分けることが重要です。

主成分分析に関するよくある質問(FAQ)

Q: 分析結果の解釈(主成分のネーミング)が難しい場合はどうすればいいですか?

A: 主成分負荷量が高い項目の共通点を探してもネーミングが難しい場合、その主成分は「複数の意味が混ざっている」か「ノイズである」可能性があります。その場合、採用する主成分の数を増減させて再計算してみるか、あるいは「無理に名付けず、あくまで総合スコアとして扱う」という割り切りも必要です。現場の担当者や定性調査の結果と照らし合わせて納得感のある解釈を探りましょう。

Q:顧客アンケート以外に、どのようなデータ分析に活用できますか? 

A: CX領域以外でも幅広く活用されています。例えば、マーケティングでは「購買履歴データ」から顧客の嗜好性を要約する、人事領域では「従業員サーベイ」からエンゲージメントの構成要素を抽出する、製造業では「センサーデータ」から異常検知を行う、といった場面で利用されています。

Q:主成分分析のデメリットや注意点はありますか? 

A:最大の注意点は「情報の損失」です。データを要約する過程で、細かいニュアンス(捨象された情報)は切り捨てられます。また、元々のデータ同士に関連性(相関)が全くない場合は、分析しても意味のある結果が出ません。あくまで全体像を掴むための「地図」を作る作業であり、個別の詳細な分析が必要な場合は、クロス集計など他の手法と組み合わせることが大切です。

Q: クラスター分析との使い分け方は? 

A: 「何をグループ化したいか」で使い分けます。主成分分析は「変数(設問項目)」をまとめて要約・グループ化するのに対し、クラスター分析は「対象(回答者・顧客)」を似たもの同士でグループ化するために使われます。記事内でも触れた通り、先に主成分分析で変数を整理してから、そのスコアを使ってクラスター分析を行う(顧客を分類する)という組み合わせ技も非常に有効です。

Q: 主成分分析と「因子分析」の違いは何ですか? 

A:目的が異なります。主成分分析はデータを「要約」して新しい総合指標(主成分)を作ることが主目的で、データ量を減らして扱いやすくするために使われます。一方、因子分析はデータの背後にある「隠れた要因(因子)」を「発見」することが主目的です。ただし、CXの実務においては「アンケート項目の背後にある概念を見つける」という点で似た役割を果たすことも多く、広義には近い分析として扱われることもあります。

まとめ:主成分分析で「顧客の声」の全体像を掴む

今回の記事では、複雑なアンケートデータを「わかりやすく」要約し、CX向上の「次の一手」に繋げるための「主成分分析」について解説しました。最後に、本記事の要点をまとめます。

  • 主成分分析とは、多くの変数(設問項目)を、互いに関連性の高いもの同士でまとめ、より少ない「主成分(体験軸)」に要約する多変量解析の手法です。
  • CX推進における重要性として、①複雑な顧客の声を「本質的な体験軸」で捉え直せる、②重回帰分析時の「多重共線性」を回避できる、③「顧客セグメンテーション」の精度を高められる、といったメリットがあります。
  • 分析プロセスは、データの標準化、相関行列の計算、固有値・固有ベクトルの計算を経て行われます。分析者は「寄与率」や「固有値」を参考に採用する主成分の数を決め、「主成分負荷量」を見て各主成分の意味を解釈します。
  • 活用とポイントとして、算出した「主成分得点」を用いてNPSやCSATとの関連を分析(主成分回帰)することで、データに基づいた優先課題の特定が可能になります。ただし、主成分の「解釈」にはビジネス理解が必要であり、万能な手法ではない点に注意が必要です。

主成分分析は、みなさまが日々収集されている「顧客の声」という宝の山から、ノイズを取り除き、本当に価値のある「インサイト(洞察)」を掘り出すための強力な分析手法です。この手法を活用し、複雑なデータの奥に潜む顧客の本音を掴み、より的確なCX改善アクションへと繋げていただければ幸いです。

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