パーパス実現に向けた組織風土改革と新たな人づくりの取組み 「Employee Experience Day 2024」3rd Talk Session Report | 株式会社エモーションテック

パーパス実現に向けた組織風土改革と新たな人づくりの取組み 「Employee Experience Day 2024」3rd Talk Session Report

更新日:2024.09.17

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エモーションテック 編集部

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eNPSを活用したエンゲージメント向上に取り組む商工中金。eNPSというエンゲージメント指標の改善において、統計解析や生成AIによる分析を用いた組織課題の可視化にチャレンジし、役員と従業員が一体となって組織改善に取り組んでいます。

パーパス実現という北極星に向けてアクションを起こし続けている同社の事例からは、組織の課題を一つずつクリアしていくことで必ずや組織風土は変えられるという強い信念がうかがえました。

<登壇者>
船曵 泰雄氏

株式会社商工組合中央金庫 DE&I推進部長

澤井 伸介
株式会社エモーションテック シニアXMコンサルタント

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不正事案からはじまった組織風土改革

船曳さま(以下敬称略):商工中金は、中小企業に融資をする政府系金融機関で、国内全都道府県に102店舗、海外に5店舗を有しています。私は同社にて、法人営業や広報部などを経て、現在はDE&I推進部にて、DE&Iやパーパスの推進、人的資本経営、人材育成を担当しております。
弊社のDE&Iの取組みもまだまだこれからで、今も試行錯誤をしながら進めている最中なのですが、少しでもみなさまのお役に立てれば幸いです。どうぞよろしくお願いします。

これまでの弊社のDE&Iの歩みを時系列でまとめてみたのが下記の図です。

船曳:2019年からはじまっていますが、そもそも弊社が旧来型の人事管理をやめ、社員全員が活躍できるようなキャリアサポートをしていこうと組織風土を改革するきっかけとなったのは、2016年に発生した不正事案でした。
組織の抜本的な見直しが求められ、経営陣も変わり、社を刷新するため経営改善計画を進めてきました。社員一丸となり、二度とこういう不正事案を起こしてはいけないと、まずはじめたのがリーダーシップを変えていこうという取組みです。

株式会社商工組合中央金庫 DE&I推進部長 船曳氏

船曳:当時、弊社では「指示命令型」のリーダーがかなり多かったのですが、まずここから変えていこうと。
上意下達の排除を起点に、コミュニケーションを向上させ、風通しのよい組織をつくり、組織風土を改善していきました。不正事案の要因の一つに、上意下達という組織風土と、それによるコンプライアンス意識の欠如があったと考えたからです。
コンプライアンスの遵守を一丁目一番地に置き、4年ほどで「指示命令型」のリーダーは減り、「ビジョン型」「関係重視型」のリーダーが増え、コンプライアンスに関する調査を見てもかなり意識が改善されてきたと感じていました。
そこで、コンプライアンスの遵守を前提としつつも、さらに高みを目指して北極星たるパーパスを設定させていただきました。
その際に、パーパスとeNPSには相関があることを澤井さんからもお聞きし、eNPSを指標として置きました。

澤井:日本の中小企業さんの数自体がかなり減っているなかで、既存事業にくわえて新しい事業に発展するような取組みをしていきたい…そういう思いも、我々にお声がけいただいたときにうかがっていました。

「人材版価値創造モデル」を策定し、人的資本経営の指針に

船曳:澤井さんのおっしゃるように、サービスをシフトしていくことを主要戦略の一つとして定めています。
私たちは「企業の未来を支えていく。日本を変化につよくする。」というパーパス、「安心と豊かさを生み出すパートナーとして、ともに考え、ともに創り、ともに変わりつづける。」というミッションを定款に規定し、代表をはじめ経営陣が変わっても経営理念は変えないんだという意志表示をしています。これに基き、中小企業に不足するリソースの提供や経営課題への対応強化等を目指すなかで「幸せデザインサーベイ」という従業員の方にアンケートにお答えいただき、会社と従業員との関係をわかりやすくレポートしてお届けするというサービスや、 「マイパーパスワークショップ」というパーパスを自分ごと化するプログラムを企業様向けに提供しています。

こうしたサービスを提供していくにあたって、弊社の知的資本、人的資本の充実も求められます。「お客さまの企業価値向上のため、変革し続ける人財」を育てるための人財戦略を銀行らしく貸借対照表風にまとめたものがこちらです。

船曳:銀行の業務スキルを左上の流動資産とおき、学んだスキルを実践に結びつけるヒューマンスキルを固定資産として左下に、右側に成長のてこ(負債)、成長の源泉(資本)を示しました。
人的資本経営の実践状況を可視化するためのアウトカムの指標として、eNPS、NPSをおいて定点的に調査をしています。

パーパス経営の推進において重要なのは、右下の「成長の源泉(資本)」ですね。このなかに「マイパーパス」が入っています。
会社のパーパスと、社員自身が大切にしている価値観(じぶんのきほん)が重なる部分をマイパーパスと定め、全社員がマイパーパスを策定しています。
このマイパーパスは、社員一人ひとりが商工中金で働くうえで、中長期的に実現していきたい自分の姿であり、羅針盤となります。

全社員が「マイパーパス」を策定し、会社のパーパスを自分ごと化する

澤井:商工中金では、いかにパーパスを浸透させるか、社員一人ひとりに行動させるかという取組みにかなり力を入れていらっしゃる。そういったお話しもおうかがいできればと思います。

船曳:マイパーパスというのは、さきほどお話ししたように会社のパーパスと社員のもともとの価値観が重なる部分と定めています。私はもちろんのこと、社長も含めて約4,000人がそれぞれのマイパーパスを作っています。
ちょうど2年前にマイパーパスワークショップという取組みを実施するにあたり、全国から85名のファシリテーターを募集しました。そのうち17名は新入社員でした。
ファシリテーターを中心に、全社員シャッフルでグループを作り、グループワークを行いました。以前の弊社であれば、役員だけ、課長や支店長だけと役職ごとにグループワークをしていたでしょうが、職位関係なく全員シャッフルです。

船曳:少し小さいのですが、この右下の写真は新入社員と社長が一緒にグループワークをしているところですね。
マイパーパスの策定はなかなか難しく、社長の関根も悩んでいたところ、写真右側の新入社員の「社長は商工中金のお父さんみたいですね」という発言から【全ての社員の良き父になる】という社長のマイパーパスが決まりました。
「良き父」というのは、心理的安全性であったり、本当に家族のことを思う優しい心であったり…いいパーパスなのかなという風に思います。

社員たちがどういった思いでパーパスを作ったのかや研修、ワークショップの様子は、QRコードから動画をご覧いただけますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

船曳:それからもう一つ、今年から「パーパス休暇」という特別休暇を作りました。まだ施行から3か月ですが、少しずつ事例が出ていますので、こちらもご紹介します。

船曳:策定したマイパーパスを自分ごと化するのは難しいということで、まずは自律的に外を向いた行動をしてもらいたいと特別休暇として措置しました。土日だけではプライベートもあり、こういったボランティア活動や社会貢献活動をするのは難しいという声を受け、いわゆる有給休暇とは別で特別休暇を取り入れました。

eNPSサーベイを軸に、9つの領域で施策を展開

澤井:エモーションテックではeNPSのサーベイをさせていただきました。経年でeNPSが推移していく様子、サーベイの結果をどう捉えられていたのか、結果に対してどのようなアクションをとられてきたのかについてもご紹介いただければと思います。

株式会社エモーションテック 澤井

船曳:エンゲージメントサーベイはまだ数年、これからというところではありますが、現時点では継続勤務意向、パーパス理解度、マイパーパス実践度、ダイバーシティ満足度の指標をとっています。着実に数値は改善してきており、特にパーパス理解度は95%を超え、「みんな知っている」状態になっています。ただし、策定したマイパーパスを業務に活かせているかというとまだ70%。
その差分を埋めるアクションが必要だと感じています。

また、eNPSに影響を与える項目が「ストレスのない職場」であるとレポーティングいただき、そこを再分析していくことで、職場の人間関係ですとか、上司に考えを理解してもらえているかに課題があるということが見えてまいりました。
一方で、研修や人事制度への満足度はあがっていました。

澤井:一点補足をさせていただきますと、いま船曳さんがお話しくださったのは2023年の結果です。2022年調査では、「将来に対する不安」が若干ネガティブに出ていました。そこに対して取り組んできた結果が、23年に「自信が成長するのに必要な研修を受ける機会がある」「自分のキャリアビジョンが反映される人事制度である」といったスコアに結果となって表れているのだと思います。そこで実際に行ってきた施策についてもお聞かせいただけますか?

船曳:ありがとうございます。eNPSサーベイを軸に、仕組みでどのように取り組んでいくのかをパーパス関係、社員の意識改革、女性活躍推進などDE&Iで人材育成の仕組み、制度の仕組み、価値観醸成の仕組みという9つに分類して施策を展開しています。

船曳:このなかで澤井さんからお話しいただいた人財育成から「人づくりカレッジ」についてお話しさせていただきます。
まず、私たちは社員に、会社という枠から自分がはみ出し、会社<自分<社会と「自分基軸」で考え、社会貢献や価値実感のところで社会と自分がつながる主体性・自立性をもってもらいたいと考えています。以前は、会社が基軸で自分<会社<社会であったと思います。会社が行動規範を作り、そのなかに個人に落とし込んでいくという文化でしたが、「自分」が「会社」の上にのるイメージですね。

人づくりカレッジで大切にしているのは、「ともに考え、ともに創り、ともに変わり続ける」こと。これはミッションにも入っている一文です。

船曳:これまでは階層型の研修が中心でしたが、社員一人ひとりが自分の学びたいことに自ら手を上げ参加できる「手上げ型研修」を拡充しました。100以上あるコースのうち4割がヒューマンスキルの講座です。
体験型研修では、われわれは地域のためになにができるのか…を感じてもらうため、南三陸や淡路島に2泊3日で行ったりもしています。一度の参加者は30人ほど。人によって研修での感じ方も違いますので、夜に懇親会で話し合いをしたり、お寺でみんなで座禅を組んだりなど。
ほかにも、たとえば新規事業関係ですと、児童養護施設で育った社会的擁護者が制度の問題で、施設から出るタイミングで就職ができないという課題について向き合い、他企業とつなぐなど新たな関係を構築することを考える講座もあります。
研修をより深めるために、東京都東村山市にある研修施設をリニューアルし、よりコミュニケーションをとりやすい仕組みを各所に折り込みました。

ここ数か月では、ほかの企業の方と一緒に学びましょうということもトライアル的に始めています。ご興味のある企業さんがございましたらご一緒できるとありがたいなと思っています。

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