エモーションテック 編集部
NPS活用やCX向上のためのお役立ち情報を発信しています。
NPS®導入の背景
課題を抱えていたのはある国内大手保険会社勤務15年目の営業企画職のAさんです。
Aさんは入社後、支店における営業サポートやマネジメント職を経て半年前に営業企画職に移転になったばかりで、全国に約1000店舗ほどある営業拠点の店舗当たりの売上を増やすことが部のミッションです。
Aさんが勤める生命保険会社は昔から顧客第一をスローガンに掲げており、長い間自主的に顧客満足度調査も行ってきました。特に最近は顧客満足度を向上させて収益を増やすという方針が強く推進されており、満足度に関しても向上させていく必要があります。
Aさんも店舗当たりの収益を増やすためにはまず満足度を向上させる施策に取り組もうと決め、この半年間満足度の低い顧客の意見に注意深く耳を傾け、対策を講じてきました。しかし、いくら批判的な意見に対応しても満足度は向上しません。
また、それに加え、世帯年収の減少や、共働き増加によるリスク分散に伴い店舗ごとの売上高も厳しくなる一方です。このままではミッションをクリアすることができないと考えたAさんはまず新規顧客の獲得に注力しようと決め、そのために調査方法から分析手法まで一度見直そうと考えました。そして調べた結果、NPS®という指標に行きつきました。
解説を見る限り、NPS®はより収益性に連動した指標であることがわかり、早速上司を説得し取り入れることを決定しました。
NPS®調査の実施
まず今回のNPS®調査の目的は新規顧客を獲得し店舗当たりの売り上げを増やすために顧客ロイヤルティに悪影響を及ぼしているタッチポイントの特定することです。
調査の方法は契約した直後の顧客にはメールを送り、オンライン上で集計しました。
また、既存の顧客に対しては、更新に関する書類などを送るタイミングでアンケートを同封し、一緒に送り返すようお願いしました。
AさんはNPS®調査の質問票を作るにあたり、まず顧客とのすべての接点における評価を可視化するためにカスタマージャーニーマップをまず作成しました。
カスタマージャーニーマップとは自社が抱えている顧客がサービスを認知する段階から最終的に購入に至るまでの、行動や感情のプロセスを図示化したものになります。
顧客が生命保険に関する情報を得る機会や会社との接点を整理することで、どのポイントがNPS®を下げる要因になっているか明確にすることができます。
今回は下記の通りマップを作成し、各タッチポイントにおける評価を集計しました。
NPS®を分析して解決策を考える
得られたデータから、NPS®の現状の評価とNPS®に影響を与える度合いをグラフにしたものが下記の図になります。
赤線は現状の各要素ごとの評価を示しています。また、青線は各要素のNPS®に対する影響度合いを示したものです。
したがって、赤線と青線のギャップが大きいほど、NPS®に与える影響度合いは大きいのにもかかわらず、現状低く評価されているということになり、改善の優先度が高くなります。
この分析を行いA氏が特に驚いたのは、現状の問題認識と大きくギャップがあったことです。
これまでの顧客満足度調査では、「書類などの手続き関する煩雑さ」や「保険内容のわかりやすさ」などに関するクレームが多く手続きの簡略化や、パンフレットを工夫して少しでもわかりやすい資料をつくすることに時間をかけていました。
しかし今回の調査で統計的な手法を使い解析した結果、優先的に改善が必要な要素としてあがってきたのは「信頼・期待できる雰囲気」「保険を考えている背景・要望についての理解」の2つでした。
この分析を具体的なアクションに落とし込むためにNPS®評価と同時にとったコメントから、なぜギャップが生じるのかさらに分析しました。
その結果、「自分の話をよく聞いてくれるか否か」がギャップを生じさせる要因として浮かび上がってきました。
Aさんは早速、各営業担当者にも顧客と接する際に相手の話に耳を傾けることが重要であるという意識を持ってもらうために、顧客へのアンケートに「営業担当者はよく話を聞いてくれましたか?」という質問を追加し、その項目の評価が高い担当者を表彰するだけでなく、ノウハウをベストプラクティスとして全社員に向けて発表してもらうようにしました。
それに加えAさんは、NPS®による評価がリアルタイムで集計され、営業担当者一人一人がダッシュボード上で自分の評価を確認できるクラウドを導入しました。
このクラウドシステムにより、顧客が「傾聴力」に関して低い点数をつけた場合、すぐに担当者にアラートが飛ぶようになり、その日のうちに上司と面談を行い具体的な改善策を話し合うようにしました。
また人材育成部のMさんに声をかけ、「傾聴力」に重点を置いたトレーニングを企画してもらいました。
NPS®改善活動の結果とその後の展開
Aさんがリーダーシップをとり1年間根気よくNPS®に基づく改善活動を続けた結果、NPS®は8%向上し、数ある課題も優先順位をつけて効率的に取り組むことができるようになりました。
また、新規顧客獲得数はもちろんのこと、既存の顧客から紹介してもらえる件数も大幅に増えてきています。調査を開始した当初は想定していなかった副次的な効果として解約率もじわじわと減少してきました。
今後は、解約率を低下させる施策を検討するために契約後のカスタマーエクスペリエンスに関して重点的にNPS®を活用し調査する予定です。
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