エモーションテック 編集部
NPS活用やCX向上のためのお役立ち情報を発信しています。
NPS®導入の背景
今回課題を抱えていたのは創立100年以上の歴史があり、日本に十数か所支店をもつ老舗高級ホテルに勤めるBさんです。
Bさんは入社後、レストラン事業部やフロント業務などの現場研修を終えた後、営業部を経て、営業企画部に配属されました。
現在のミッションは施設稼働率と顧客満足度の向上です。
観光客の増加に伴い外資系の高級ホテルも日本に参入してきている影響で、競争環境は激化しており、稼働率は徐々に低下しています。
また、満足度も5点満点中、平均で3.8~4.2の間をさまよっており、批判的なコメントを中心に改善策を打っていますが、効果が全く出ていないという状況に陥っています。
この状況を打破するためにBさんは顧客からの評価と稼働率の両方を向上させるための方法、特に批判的なクレームに対応するだけでなく、ファンを増やしリピート率を向上させる施策を模索していました。
そこで目をつけたのが、NPS®という顧客ロイヤルティを可視化するための指標です。
NPS®調査の実施
NPS®とは「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」の略で、顧客ロイヤルティ(企業やブランドに対する愛着・信頼の度合い)を数値化する指標です。
NPS®を計測するためには、「あなたは○○を友人にすすめたいと思いますか?」と質問し、0〜10点で評価してもらいます。
その中で0〜6点を付けた人を「批判者」、7・8点を付けた人を「中立者」、9・10点を付けた人を「推奨者」と分類したうえで、全体の中の「推奨者」の割合から、「批判者」の割合を差し引いた数字がNPS®です。
この指標は、推奨度を質問するため、口コミがどの程度広まる可能性があるかを計測することができ、多くの調査でNPS®が高いほど実際に口コミを広める顧客が多くなることが示されています。
また、指標の特徴として収益性と相関が強いことがあげられるため、Bさんはこの指標を向上させることができれば、口コミやレビューサイトにポジティブな評価が増えるだけでなく、従来の満足度調査では得られなかった課題を発見することができ、改善を重ねることで、稼働率もおのずと高まるだろうと考えました。
そこで、Bさんはこの指標に影響を与えている要因を特定するために顧客と企業の接点を可視化するカスタマージャーニーマップ(CJM)を作成し、各接点の評価を顧客から収集しようと考えました。
NPS®と口コミの関係についてはこちらをご覧ください。
Emotion Tech 業界調査レポート
NPS®に影響を与えている要因を洗い出す
アンケートが回収できるとBさんはデータを解析して、各顧客接点がNPS®にどの程度影響を与えているのかを青線、現在各顧客接点において顧客のNPS®を下げているのか、引き上げているのかを赤線で示し課題を把握しようとしました。
このグラフでは赤線と青線のギャップが大きいほど、「NPS®に強い影響力がある顧客接点にも関わらず、現状の評価が低い」状態であることが視覚的に表現できるため、優先的に改善するべき要素を直感的に理解することができます。
今回の分析では、特に「客室での体験」と「観光地での体験」の二つの要素が優先度の高い課題として明確になりました。
ここから、より具体的な施策を考えるために「客室での体験」と「観光地での体験」についてどういった要素が評価を下げているのかを定性的なコメントを使って分析しました。
その結果、「客室での体験」の中では「他のホテルに比べてシャンプーや化粧水などに特色がない」や「宿泊した記念になるアメニティがあると嬉しい」など「アメニティ」について言及している人のNPS®が低くなる傾向にあることが判明しました。
また、「観光地での体験」では「思っていたほど、観光地を回ることができなかった」「行こうと思っていた観光地や飲食店が軒並み混雑していて満喫することができなかった」などの「観光地を思うように楽しめたかどうか」という点についてコメントしている人のNPS®が低い傾向にあるという課題が浮き彫りになりました。
NPS®について詳しくし知りたい方はこちらの記事をご覧ください
【徹底解説】NPS®(ネット・プロモーター・スコア)とは?満足度との違いから、分析・活用手法まで
解決策
そこで、Bさんは「アメニティ」に関して、従来のハイブランドシャンプーやボディソープを採用するだけでなく、ある地域限定でパイロットテストとして地元の老舗石鹸ブランドとコラボレーションし、より地域性を感じることができて、かつリラックスすることができるボディソープとボディソルトをアメニティとして提供し、顧客からのフィードバックを集めてみることにしました。
また、顧客に観光地をどう楽しんでもらうかという課題に関しては、地域の観光地についてより多くの知識を有している、ホテル側から回り方を提案するようにして対処するようにしました。
具体的なオペレーションとしては、このサービスを希望する人を対象として、予約時にメインで行きたい個所を入力してもらい、その観光地を中心に、時間帯ごとのおすすめスポットをリストアップするという形をとりました。
そして、このリストをチェックイン時に顧客に渡し、混雑が予想される飲食店に関しては、顧客に了承を得たうえで、予約をするといったところまで顧客中心のオペレーションを徹底しました。
結果とその後
1年間この施策を回し続けた結果、NPS®は12%向上しました。
その結果低下気味だったリピート率がV字回復し稼働率も月平均で前年比8%ほど向上しました。
施策の評価も上々で、パイロットとして特定の支店に導入した、地域の特色を生かしたアメニティはメディアにも大きく取り上げられ、特に女性客からの口コミが広まり、今ではそのアメニティが宿泊するホテルを選ぶ決定打となったという声も上がっています。
現在では7割以上の支店でその地域特有のアメニティを導入し、顧客からのフィードバックを生かしつつ、より喜んでもらえる客室づくりに努めています。
観光スポットをレコメンドする施策も、準備段階では従業員を説得し専用のチームを立ち上げるのに苦労しましたが、顧客から非常に喜ばれるサービスに成長しました。
国内の観光客だけでなく、外国人の観光客からも厚い支持を受けており、従業員も自分が提案したプランのおかげで充実した一日になったという顧客からの声が返ってくることに非常にやりがいを感じているようです。
今後はホテル全体の課題の解決にとどまらず、支店一つ一つの課題を明確にしつつ、地域ごとのニーズを満たすことができるよう顧客体験を改善していく予定です。
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