エモーションテック 編集部
NPS活用やCX向上のためのお役立ち情報を発信しています。
目次
マーケティングと人事におけるリテンションとは?
リテンションとは、主にマーケティングと人事の2つの領域で使用される言葉です。
マーケティング領域におけるリテンションは、既存顧客と良好な関係を維持していくためのマーケティング活動のことを指します。新規顧客を獲得するためには、既存顧客を維持するよりも何倍ものコストが必要になります。
そのため、リテンションによって既存顧客と良好な関係を築くことができれば、コストを抑えて収益を確保することが可能です。
また、人事領域におけるリテンションは、必要な人材を維持するための施策等を指します。団塊の世代の大量退職や少子化などによって人材不足が懸念されているなか、転職する人も多く人材の流動化が進んでいます。
社員の採用や教育には、大きなコストと時間がかかります。社員が退職すると、このようなコストが損失されるだけでなく、業績にも大きな影響を与えかねません。
そこで、必要な人材を維持するためのリテンションが注目されているのです。
マーケティングにリテンションが必要な理由
マーケティングにおいて、なぜリテンションが必要なのでしょうか。どんな企業であっても新規に顧客を獲得するためには、とてもコストがかかるものです。提供する商品やサービスによっても異なりますが、既存顧客の維持に比べて5倍のコストが必要だといわれています。
既存顧客は一度商品を購入しているため、商品を認知しているだけでなく、商品のベネフィットもすでに理解しているでしょう。そのため、既存顧客であれば少ないコストでリピート購入してもらえる可能性が高いのです。また、企業に対するロイヤルティが高まれば、長期的に商品を購入し続ける生涯顧客となってもらえるでしょう。
リテンションによって既存顧客のリピート率を上げることができれば、大きな収益増につながるのです。アメリカのコンサルティング会社ベインアンドカンパニ―社が発表した資料によれば、顧客維持率を5%改善するだけで25%の利益増加をもたらすとされています。そのため、リテンションによって顧客と良好な関係を築くことが、企業の収益増を図るためにとても重要なのです。
人事施策にリテンションが必要な理由
人事においてもリテンションは、企業の収益に直結する重要なテーマです。せっかく社員を採用しても、退職してしまえば新たに社員を雇わなければなりません。この募集・採用にかかるコストは意外と大きく、マイナビの調査によれば2017年の新卒採用、中途採用ともに一人当たり約50万円の採用費がかかっているとされています。
また、社員が退職すると、それまでの研修や教育が無駄になってしまうだけでなく、その社員と強く結びついていた顧客をも失いかねません。そのため、リテンションによって、離職率を下げることが企業の収益増につながるのです。ベインアンドカンパニー社の調査によれば、あるトラック輸送会社では運転手の離職を半分に減らすだけで利益を50%も改善できることがわかりました。
また、ある飲食チェーンでは、社員の定着率で上位3分の1に入る店舗は定着率下位3分の1の店舗に比べて、社員一人当たりの売り上げが22%も高いことがわかったのです。リテンションによって社員と良好な関係を築くことが、企業の収益増を図るためには欠かせません。
リテンションを成功させるためのポイント
顧客のリテンションを行うにしても、従業員のリテンションを行うにしても、まず押さえておかなければならない大切なポイントがあります。
それは、顧客が商品やサービスを使ったり、従業員が会社で働いたりするなかで、どんなところに愛着を感じ、どんなところに不満を持っているかを調査し把握することです。
そのために効果的な調査手法にNPS®(Net Promoter Score)があります。NPS®は、顧客に「友人に進めたいか?」という質問をして推奨度を0~10点で評価してもらい、それを元に顧客ロイヤルティを可視化するための指標です。また、同じように従業員のロイヤルティを可視化するためには「この職場で働くことを友人に進めたいか?」という質問をして推奨度を0~10点で評価してもらう、eNPS℠(employee Net Promoter Score)が用いられます。
エモーションテックが2017年に行ったアパレルECサイトの顧客ロイヤルティ(NPS®)調査によると、NPS®が高いほど利用期間や購入頻度が高くなる傾向があることがわかりました。
また、eNPS℠に関する調査では、eNPS℠が高いほど現在の仕事をやめることを考えていないことが判明しています。
NPS®によって改善すべき点を把握するためには、顧客が企業や商品、サービスと触れる接点をすべて洗い出し、それぞれの接点が推奨度の点数にどれだけ影響しているかを調査することが必要です。
たとえば、ある高級ホテルでは、顧客接点を「ホテルを認知してから予約するまでの体験」「予約からホテルまでの体験」「ホテル滞在期間の体験」「アフターフォロー」と大きく4つに分類しました。さらに、認知から予約までの体験であれば、「TVCMや雑誌、ネットなどの広告」「比較サイトでの評価」「友人からの口コミ」などのように顧客の行動をさらに細分化し、各項目での顧客の評価を調査したのです。
同様に従業員のeNPS℠に影響している改善点を見つけるためにも、細かな質問設定が必要です。
たとえば、会社の社風や将来のビジョンなどから自由度や裁量、労働時間、業務量、休暇、福利厚生、給与、評価、上司との関係、同僚との関係など、多岐にわたった20項目程度の質問を用意するとよいでしょう。
マーケティングのリテンション施策例
マーケティングのリテンションを行う際には、まず購入頻度や購入単価によって顧客を分類し、購入頻度を上げるのか、購入単価を上げるのかを顧客属性に沿って決定することが必要です。
たとえば、購入頻度を上げるための方法としては、期間限定のポイント付与や継続購入に対するボーナス特典などが考えられるでしょう。また、購入単価を上げるための方法としては、お得なセットプランの案内や一定金額以上の購入に対しては特別なインセンティブを付与する施策などが効果的です。
このような施策をより効果的なものにするためには、常日頃から顧客と良好なコミュニケーションをとっていることが重要になります。顧客データを適切に管理し、その顧客に合った情報を提供することが施策の成否に大きく影響します。顧客と良好な関係を築き、ロイヤルティを高めることができれば、口コミなどによる新規顧客の獲得も期待できるでしょう。
人事のリテンション施策例
人事のリテンション施策例は、大きく金銭的報酬と非金銭的報酬に分けられます。金銭的報酬とは昇給やボーナス、ストックオプションなどの報酬のことですが、提供するには限度がありますし、離職率の改善につながらない場合もあります。
離職率が高い企業の場合、金銭以外の問題が社員の退職に大きく影響しているケースも多いのです。成果でのみ評価する成功報酬型の動機付けは、仕事の質や量を観察できる場合は、その効果を確認することができます。そのため、うまくいった過去の方法を踏襲すれば、同じような効果が期待できるでしょう。
しかし、仕事の質や量を観察できない高度で不確実性の高い仕事の場合には、成功報酬型の動機付けがむしろ逆効果となることが心理学の研究で指摘されています。非金銭的報酬とは金銭以外で与えられる無形のもので、研修などのキャリアアップ支援や仕事自体のやりがいを感じられる制度などが代表的なものです。また、フレックスタイム制度によるワークライフバランスに対する支援、従業員同士のコミュニケーションを強化できるような社内の部活制度なども挙げられるでしょう。
人事のリテンション施策を効果的なものにするためには、定期的にeNPS℠によって改善すべき点を把握し、必要に応じて金銭的報酬と非金銭的報酬を使い分けることが大切です。リテンションは顧客や従業員と強固な関係を築くためのものです。効果的なリテンション施策を行って、大幅な収益増につなげていきましょう。
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