エモーションテック 編集部
NPS活用やCX向上のためのお役立ち情報を発信しています。
NPSはさまざまな店舗業態の企業様に導入が広がっています。本記事では架空の家電量販店「エモ電気」を例に取って、家電量販店ではどのようなNPSを活用したCX改善サイクルを回していくと良いのか、理解を深めていきましょう。
目次
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顧客体験改善するための2つの調査を設計
エモ電気では、R-NPS調査とt-NPS調査という2種類のNPS調査を並行して行っています。
R-NPS(リレーショナルNPS)調査設計
過去や競合と比較しながら自社の現在地を把握
まず1つはR-NPS調査です。通称R-NPSとはRelationship Net Promoter Scoreの略で主に企業のブランドや商品に対するロイヤルティを評価します。エモ電気では会社に対するロイヤルティを把握するのと同時に同業他社のブランドに比べてどのように評価されているかという競合調査の目的でも活用しています。
R-NPS調査では、まず「エモ電気で商品を購入することをどの程度親しい友人や知人におすすめしたいと思いますか?」と、エモ電気ブランドに対する推奨度を聞きます。それに続いて、エモ電気の推奨度を答えるにあたって、下記の項目はどの程度プラスもしくはマイナスに影響を与えましたか?と認知から購入までの体験を要素分解して、評価してもらいます。
同じ質問で競合他社のブランドについても調査を行うことで、業界全体の傾向や各社の強み、弱みを把握することができます。
また、電化製品は家族構成等によってもニーズが変わってくるため、年齢や性別、居住地域を含む属性を把握するための質問も加えると良いでしょう。
t-NPS(トランザクショナルNPS)調査設計
店舗における具体的な改善点を見つける
t-NPSは、Transactional Net Promoter Scoreの略で、店舗における課題を発見するために活用します。リレーションシップNPS調査ではエモ電気というブランドに対するロイヤルティを調査しましたが、トランザクショナルNPS調査では、店舗における購買体験についてのロイヤルティを調査します。
質問も「エモ電気〇〇店で商品を購入することを親しい友人や家族にどの程度おすすめしますか」となります。推奨度に影響する要因も店舗での体験にフォーカスするため、リレーショナルNPS調査に比べかなり具体的なポイントを評価してもらうことができます。
R-NPSと同様に基本的な属性情報についても調査を行います。加えて、エモ電気の主力商材である白物家電に関しては、どのようなポイントを重視しながら商品を探していたかも調査します。どのような属性の人たちがどのようなポイントを重視しながら商品を購入しているのかが把握できると、店舗での改善点を分析する際に役立てることができます。
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調査のタイミングと方法
リレーショナルNPS調査のタイミング
年4回のパネル調査で市場における自社の現在地を知る
リレーショナルNPS調査は、主に4半期に1度調査を行います。家電量販店ではシーズンごとに様々なキャンペーンが走るのでその効果検証も含めての調査となります。
データの取得はパネル調査で行います。多くの家電量販店は顧客のポイントカードと一体になったスマホアプリを作って会員のメールアドレスを取得しているため直接会員向けにアンケートを送ればよいのではないか、という意見もあるかもしれません。
しかしながら、リレーショナルNPS調査では、競合比較が重要な目的になります。そのため、自社の評価だけを自社会員に向けに調査してしまうと、調査結果に偏りが出てしまう可能性があります。したがって、リレーショナルNPS調査は、競合も含めてすべてパネルでデータを集めるのが良いでしょう。
トランザクショナルNPS調査のタイミング
買い物直後に即調査を実施し、常にお客様の最新の声を把握する
トランザクショナルNPS調査は常時行います。エモ電気の場合、会員向けのポイントアプリを配布しているため、アプリ上でアンケートURLを配信します。アンケートを配信するタイミングは、購入直後です。店舗での体験がまだ鮮明に残っているうちに解答してもらうのが良いでしょう。ポイント付与とセットで実施すると、よりスピーディーに多くの回答を集めることが可能になります。
また、海外から旅行等で買い物に来たため、アプリの導入そのものが難しい顧客に対しては、レシートに印字したQRコードからアンケートに回答してもらいます。エモ電気のNPSアンケートは中国語と英語にも対応しているため、インバウンド顧客の意見もしっかりとデータとして蓄積することができます。
エモ電気のNPS調査における分析のポイント
リレーショナルNPS調査分析のポイント
強み・弱みを知る競合比較と、客層と傾向を知るセグメント分析
リレーショナルNPS調査で確認したいポイントは大きく2つあります。1つ目は、競合との比較で自社の立ち位置と強み、弱みを把握することです。
競合分析では、まず各社のNPSを確認して総合的に自社ブランドに対するロイヤルティがどの程度の位置を占めているか確認します。そして、可能であれば推奨度を目的変数に、認知から購買までの各体験の評価を説明変数にして重回帰分析を行うと各社どういったポイントが推奨度に影響しているのかヒントを得ることができます。難しい場合は、各体験の評価の平均点を見比べるだけでも相対的な強み・弱みを大まかに把握することができます。
2つ目はセグメントごとに評価を確認することです。パネル調査をする際、性別や家族構成、来店頻度や購入単価も合わせて大まかに質問します。その属性と、推奨度の点数をかけ合わせてクロス集計を行うことで、セグメントごとの評価を把握できます。また、評価の高いセグメントの特徴や逆に低いセグメントの特徴を整理してその違いを分析することで、課題を特定するための情報が得られます。
また、定期的に調査を行うと時系列でNPSを追うことができます。それにより、施策の効果を検証することも可能です。特定の顧客セグメントに対し施策を打った場合は、各セグメントのNPSの推移を見ることで、反応を確認することができます。
トランザクショナルNPS調査の分析ポイント
収益との相関を確認し、店舗の改善点を見つける
収益性分析
トランザクショナルNPS調査では、収益性の分析と、店舗における課題を発見するための分析を行います。
収益性分析では、まず、店舗ごとの収益性に関する指標と推奨度の相関を確認します。NPSを活用した改善を行う上で収益性とどの程度推奨度が連動しているか確認することは非常に重要です。なぜなら、継続的に大きな組織でNPS調査に基づいた改善施策を打つためには現場の納得と協力が欠かせないからです。多忙を極める店舗の責任者やエリアマネージャーに新たな取組としてしっかり腰を入れてもらうためには、「これをやると売上が伸びる」という明確なメッセージを発信することが最も説得力があります。
多店舗型の業態では、一概に収益性の指標といっても、店舗ごとの売上や目標達成率、店員あたりの売上、店舗面積あたりの売上、来店者数、来店者あたりの売上など、考えようによって様々存在します。どの指標を取るか明確な答えはありませんが、各指標にどのような偏りがあるかは認識しておく必要があります。例えば、店舗ごとの売上高は、立地や店舗のサイズに大きく影響されます。また、目標達成率はもともと成績の良い店舗の目標が大きくなる傾向や目標を振る担当者のバイアスがかかります。各指標ごとにどのような偏りがあるかを踏まえた上で一通り分析し最もフィットする指標を軸に添えるのがいいでしょう。
エモ電気では店舗ごとの前年比売上成長率を主に使って推奨度の相関を確認しています。そして、収益相関がある程度確認できたら、推奨度を1上げるとどの程度のインパクトになるか把握します。エモ電気では推奨度あたりの売上成長率を計算し、推奨度が一点上がるごとの売上成長率の差分の平均値を推奨度を1点上がるごとのインパクトと捉えています。計算の結果、推奨度を1上げるごとに店舗の売上は前年に比べ平均で0.42%成長するという事がわかりました。推奨度向上による売上へのインパクトを大まかに把握することで、施策を検討する際に欠けられる費用の限度を目安として知ることができます。
オペレーション上の課題分析
オペレーション上の課題を分析するためには、顧客セグメントごとのニーズを知る必要があります。セグメントの分類は、年間の購入回数や購入総額などの収益性に紐づく切り口から、単に性別や年齢、家族構成など様々な分類が考えられます。
エモ電気では顧客が購入した品目別に課題を把握するようにしています。なぜなら、購入する品目によって顧客体験が異なるからです。例えば、高額な白物家電を購入する際は基本的に現場の販売員に相談しながら自分の生活スタイルにあった製品を選びます。
価格の相談や購入の手続きもレジに並ぶのではなく販売員とテーブル席で行います。反対に、ワイヤレスイヤホンやゲームソフトなどは基本的に販売員とコミュニケーションを取ることがありません。ただ、細かくセグメントを切りすぎても分析が大変なので、大まかにエアコンや洗濯機、冷蔵庫などの「家庭家電」、「PCとその周辺機器」、カメラやテレビなどの「AV機器」、「その他商品」の4分類に収めています。
セグメントごとに課題を把握するためには重回帰分析という統計的な手法も用いながら、推奨度に影響を与えている体験とその現状の評価を分析していきます。推奨度に強い影響を与えているものの、現状評価が低い体験というのは優先的に取り組むべき課題として認識できます。加えて、NPSが高い店舗と、低い店舗でどのように評価が異なるかを比較することで、より施策が具体的に見えてくるでしょう。
エモ電気におけるNPS調査の分析結果活用方法
リレーショナルNPS調査は出店戦略や広告戦略に活用し、トランザクショナルNPS調査は細かな地域のニーズを店舗運営に反映
リレーショナルNSP調査の結果からは、競合他社に比べてどの地域でどのように評価されているかが分かります。つまりこの結果は、出店戦略や広告戦略などに役立てる事ができます。
また、時系列でNPSの推移を把握することができるため、施策の効果検証が可能です。特定の地域で小さくキャンペーンを打って上手くいったものを全国展開するといったパイロットテストにも活用することができます。
トランザクショナルNPS調査は店舗の改善に使われます。全国展開している家電量販店では、地域によって来店する顧客層が異なります。例えば、地方都市では高齢の顧客も多くPCのような複雑な電子機器についてはゆっくり丁寧な説明が求められる一方、都内の比較的若い単身者が多い地域では、そうではありません。地域度とのニーズを汲み取って販売員の研修に活かします。
また、店内にある各種案内の文字の大きさや、わかりやすさ、多言語対応の必要性など、アンケートデータから課題を汲み取り、その地域に合わせた店舗づくりを心がけます。
トランザクショナルNPS調査ではエモ電気で商品を購入した際にどのようなポイントを重視したかも調査済みです。この情報と属性情報を組み合わせて、どのような人たちが何を重視しながら商品を検討しているのかを現場の販売員に共有します。これにより、販売員も事前に把握しておくべき情報や、押し出すポイントを明確にイメージすることができます。
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