エモーションテック 編集部
NPS活用やCX向上のためのお役立ち情報を発信しています。
目次
カスタマー・エクスペリエンス(顧客体験、CX)とは?
カスタマー・エクスペリエンス(Customer Experience、CX)は日本語で「顧客体験」と訳され、サービスや商品の認知〜購買・利用〜アフターフォローまでの、企業と顧客の一連の接点の中で顧客が受け取る価値のことです。そのため顧客体験価値とも言われます。
ここでいう価値とは、「価格」や「機能」といったサービス単体の物理的な価値だけではなく、「対応が丁寧」「安心できる」といった感情・感覚的な価値、メリットも含まれています。
こうしたあらゆる価値が加算的に評価されるため、顧客接点の総合力によって、顧客体験は変化します。
カスタマー・エクスペリエンスを高めることは、ひいてはブランドや企業に対するロイヤルティ(信頼や愛着心)を高め、商品・サービスを購入し続ける大きな要因になっていることが様々な研究結果から明らかになっています。
製薬業界における、カスタマー・エクスペリエンス(CX)の重要性
ここでは、医療用医薬品業界におけるカスタマー・エクスペリエンスについてみていきます。
昨今の環境変化によって製薬業界においては、従来の「製品中心のディテーリング」「SOV(シェアオブボイス)」の考え方から、「医師や患者さんのニーズに対する価値訴求」へと多くの製薬会社が変化しようとしています。
これまでの生活習慣病をはじめとしたプライマリー領域での新薬創出による戦略から、バイオ製剤を中心としたオンコロジー領域や希少疾患領域でのオーファンドラッグの創出に開発ターゲットが変わり、各疾患領域におけるスペシャリティファーマとしての地位確立を目指す戦略へと転換しています。こうした疾患領域においては、とりわけ専門的な情報を、医師や患者さんへ適切に届けることが求められています。
医師に対しては、対象となる患者さんや症状に出会った際に”第一選択薬”として想起をしてもらい、また合わせて正しい使用方法を理解し安全に処方・投薬してもらう必要があります。そのためにはさまざまなチャネルを活用し適切な情報を届けておかなければなりません。
特にアフターコロナの昨今の環境下においては、従来通りのMR活動によるディテーリングや講演会・説明会による情報提供活動が十分にできなくなり、オウンドメディアやサードパーティメディア、オンライン面談での情報提供がますます重要な手段になりました。
環境の大きな変化により、その手段も劇的にかつ急速に変化したと言えるでしょう。
このように今までにはなかった接点が増え、それらを活用する必要がある中で、こうした様々な体験を通じた価値を高めていくことは、顧客ロイヤルティを高め、処方意向を高めるために重要な考え方だとして、近年カスタマー・エクスペリエンスの考え方を取り入れる製薬会社が増えています。
体験を洗い出し、整理する
顧客体験の改善に着手するためには、まずは体験そのものを洗い出し、整理する必要があります。
医師と製薬会社とのタッチポイントは非常に多岐にわたるため、目的や仮説にあわせて製剤別、あるいは情報収集チャネル別に、医師目線での体験を整理していきましょう。体験を洗い出し整理することで、カスタマー・エクスペリエンスを向上させるポイントがわかり、処方意向の向上へと繋がります。
医師にとって重要な体験を見出す方法とは?
医師はさまざまなところで薬剤に関する情報収集を行い、また様々な患者さんに対して治療や薬剤処方を行います。医師が薬剤の処方に至るまでの間にある重要な体験を見出すための大きな手段のひとつとして「実際に医師に聞いてみる」ということが挙げられます。
その際、顧客がサービスや商品に対して抱く信頼度や愛着度(ロイヤルティ)を計測する指標として開発された「NPS®︎(ネット・プロモーター・スコア)」を活用すると良いでしょう。
また、NPSは収益との相関性が強いことが証明されています。
製薬会社において収益指標として大きく位置付けられるのは薬剤の処方量ですが、医師ごとの処方量を正しく把握するのは難しい側面もあります。そういった場合は医師ごとの薬剤に対する処方意向や処方頻度、処方率を調査にて取得し、NPSとの相関を確認し顧客ロイヤルティの向上が処方に繋がることを確認します。
弊社の取り組みでも、下図のようにNPSと処方率変化の相関性を見ることができた事例があります。
NPSはスコアを算出することのみならず、各顧客体験における重要ポイントや改善すべきポイントを把握するためにも活用できます。
そのためには単に推奨度を聞くだけではなく、併せてそれぞれの顧客体験に対する評価や満足度を聞くことが重要になります。推奨度と各体験に対する評価の関係を明らかにすることで重要な体験・課題となる体験を把握することができるようになります。
回答者は、それぞれの顧客体験に対して、「不満」~「満足」まで評価を行っていきます。
こうした質問によって、「何が理由でおすすめしたいか(したくないか)」を分析するためのデータを得ることが可能になり、「なにが医師にとって重要な体験であるか」を分析することが可能になります。
*NPSの一般的な活用や分析方法については、こちらの記事で解説しています
関連記事:
NPS®とは?顧客満足度との違い・質問方法・事例まで詳しく解説!
NPSを用いて階層構造で捉えることが重要
顧客体験マネジメントを行うにあたっては、まず顧客ロイヤルティがどのように構成されているのか、またどういった体験がそこに紐づいているのかを階層構造で整理して捉えると良いでしょう。
NPSには、リレーショナルNPSとトランザクショナルNPSの2つの考え方があります。
リレーショナルNPS(R-NPS)は、主に企業やブランドに対するロイヤルティを調査します。この調査を行うことで、ブランド全体で何を改善すべきか、大まかなあたりを付ける事ができます。また、他社ブランドとの比較を行い、自社の強みや弱みを把握する際にも活用できます。
トランザクショナルNPS(T-NPS)は、医師との接点ごとに調査を行い、プロセスに対する評価を取得します。
例えば上図のように、薬剤に対する評価をキーに、
①薬剤に対する評価(NPS)と、ブランドに対するNPS評価
②薬剤に対する評価(NPS)と各チャネルの評価
③各チャネルの評価(NPS)と各体験の満足度
の階層構造で捉えます。
各チャネル別にそれぞれの体験まで落とし込むことで、日頃の業務で改善すべきポイントが明らかになります。
また、階層構造で捉えているので、改善すべきポイントが薬剤NPSの向上に影響し、ひいてはKPIにインパクトすることがわかります。
他業界においても同様に階層構造で捉えたことによって、CX向上に繋がった成功例があります。
>>セブン&アイ ホールディングス社の取り組み事例を読む
エモーションテックの分析手法を使えば、こうした階層構造の分析はもちろん、NPSスコアに影響を与える重要な体験について優先順位をつけて可視化できるため、現実的なアクションプランを立てることが可能です。
*優先順位を可視化したグラフは、特許第6176813号、第6588176号、による特許取得済みの特定技術です。
製剤中心から、医師や患者さんを中心においた企業活動へ
NPSを活用し顧客体験を捉えた調査を実施することで、医療従事者や患者さんを中心とした施策が実行できるようになります。
こうしたステークホルダーの声を定期的に取得し施策の効果検証〜改善活動を継続して取り組むことで、本当に求められる情報提供や顧客体験の実現が可能となるのです。これにより真の「カスタマー・エクスペリエンス」が向上し、顧客ロイヤルティが醸成されていきます。
顧客ロイヤルティを高めることは、製剤が必要とされる場面において、第一選択薬として選ばれ続けることに繋がり、企業の成長へと還元されます。
まずは、医師の体験を整理し、真の「カスタマー・エクスペリエンス」の向上に影響する体験を特定しましょう。
エモーションテックでは、顧客体験向上のための体験の整理、継続的な効果検証〜改善活動の仕組みづくりのご支援をしております。
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