エモーションテック 編集部
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目次
製薬会社のMR活動におけるNPS調査方法
NPS調査では、目的に応じて適切な質問設計をすることが重要です。またNPSは、ただスコアを算出するだけではなく、NPSに影響を与えている体験がなにかを把握し、推奨度と各体験に対する評価の関係を明らかにすることで、医師に重要視されている体験や課題となっている体験を把握することができます。
※一般的なNPS調査の質問設計については、以下の記事で解説しています。
関連記事:
改善に繋がる!NPS®︎を活用した顧客体験調査方法【質問設計例を紹介】
NPSと医師にとっての顧客体験をツリー構造で捉える
NPSは顧客がサービスや商品に対して抱く信頼度や愛着度(ロイヤルティ)を計測する指標です。またNPSは収益との相関性が強いことが証明されています。
今回の製薬会社においても、薬剤に対する推奨度と薬剤処方意向との相関が確認できました。
そこで、今回は図のように、
①「MR推奨度」と薬剤に対する推奨度・薬剤処方意向との関係性
②「MR推奨度」と各MR体験の満足度
をツリー構造で捉えていきます。
このように顧客ロイヤルティがどのように構成されていて、そこにはどのような体験が紐づいているのかを階層構造で整理して捉えると良いでしょう。
医師にとっての顧客体験を洗い出す
まずは、医師がMRとの接触で受ける「体験」を洗い出しましょう。
今回は下図のように整理しました。
このように、MR活動において医師が受ける体験を洗い出します。対面(オフライン)時の体験・オンライン接触時の体験・MR自身から受ける体験(知識、マインド等)等、タイミングやカテゴリに分けて考えると洗い出しやすく、アンケート設計や分析も行いやすくなります。
体験が整理できたら、次は質問設計に落とし込みます。
どの体験がNPSに影響を与えているか明確にするためには、それぞれの顧客体験に対して、「不満」~「満足」まで評価を行います。
こうした質問によって、「何が理由でおすすめしたいか(したくないか)」を分析するためのデータを得ることが可能になり、「なにが医師にとって重要な体験であるか」を分析することが可能になります。
具体的な調査票の例としては以下のようなものが考えられます。
また、前回の調査で属性ごとに重要だと感じるポイントが異なってくるのではないかという仮説があったので、以下のように属性に関する情報を集めることにしました。
- 専門医 / 非専門医
- 専門科
- 該当患者数
- 治療に対する考え方
質問設計においては、このように、仮説を立てて今回の調査で明らかにしたいことを明確にし、それに合わせた設計をすることが重要です。
やみくもに、あれもこれも1つのアンケートで聞こうとするのではなく、目的に合わせて必要な質問を入れるようにしましょう。
MR活動に関するCX調査タイミング
MR活動に関するCX調査のタイミングには、次の2つがあります。
- 年に1〜2回程度
- MRとの接触後、定常的に実施
前者の場合は、全体感を捉えていくのに有効です。MR活動と、企業推奨度や薬剤推奨度との関係からどのようにブランディングが伝わっているかなど、長期スパンで捉えたい施策の効果検証に活用できます。
後者の場合は、MRとの接触が発生する都度、医師からフィードバックがもらえる仕組みをつくることができるため、医師ひとりひとりに対する振り返りの実施や、MR自身の日頃のアクションについて改善活動が行えます。
ただし過度なアンケートの実施は医師に負担を強いることになってしまい逆効果となってしまったり、直接MRがアンケート回収を行う場合はバイアスがかかった結果となってしまうなどのリスクもあり、慎重に調査を企画する必要があります。
MR活動に関するCX調査の分析のポイント
①MR推奨度が、処方意向などの収益指標と相関しているか
まずは、MR推奨度が収益指標と相関しているかを確認しましょう。
製薬会社における収益指標では「薬剤の処方量」が主な指標ですが、医師一人ひとりの処方量を正確に把握することは難しい側面もあります。
その場合には、医師一人ひとりの「薬剤に対する処方意向」や「処方頻度」「処方率」を調査にて取得し、NPSとの相関を確認し顧客ロイヤルティの向上が処方に繋がることを確認します。
②MR推奨度に影響する体験の分析
次に、自社にとって強みとなっているポイント・弱みとなっているポイントを把握します。
このとき、それぞれの顧客体験の平均点を算出し、「点数が低い=課題」だと認識してしまうケースがあります。
もちろん、点数が低い(つまり不満が大きい)体験は改善するに越したことはないのですが、まずは「何が医師にとって重要な体験であるか」を分析する必要があります。
今回のケースでは下の図のような分析結果になりました。
赤い線は「医師が感じている、現在の満足・不満の状態」を表しています。
赤い線が上に向かうほど、その体験について満足している度合いが高く、且つ推奨度(NPS)に対して良い影響を与えていることを示しています。
反対に赤い線が下に向かうほど、その体験に対する満足度合いが低く、且つ推奨度(NPS)に対して悪い影響を与えていることを意味しています。
このグラフでは、「訪問頻度」の体験についての不満が、推奨度(NPS)に対して最もマイナスの影響を与えていることがわかります。
一方で、青い線は推奨度(NPS)に対する影響の度合い、つまり「医師にとってどの程度重要な体験か」を示しています。
「訪問頻度」を見てみると重要度はそれほど高くないのがわかります。
それよりも、MRの知識に関しては「製品知識」「疾患知識」、MRのマインドの「対応スピード」などが重要だと感じられているようです。
つまり、「訪問頻度の満足度は高くないが、医師にとってあまり重要ではない」ということです。そして同時に、「製品知識」や「疾患知識」は、医師にとって、推奨度(NPS)においてはとても重要だと感じているからこそ、より高いレベルの知識を求めていることが明らかになりました。
こうした状況下においては、MRの知識をより高めていくためのアクションを行うことが、NPS向上に最も効果的だと考えられます。
データを分析する際には、まず「医師にとって重要な体験は何か」を見極めることが大切です。
また、薬剤に対する処方意向が高い医師と低い医師との比較、属性情報で取得した「専門医/非専門医」での比較、「治療に対する考え方」による比較、など様々な切り口で分析を行うことで、新たな気づきを得るヒントに繋がります。多様な視点で分析を行い、医師とのコミュニケーションにおける課題をより具体的に捉えることが分析においては重要です。
もちろん、やみくもにデータを見ていくのではなく、当初に立てた仮説・今回検証したいことを念頭においてデータを見ましょう。
MRのスキルアップのための分析
処方意向とMRの推奨度に相関が見られる場合は、MRの行動に絞った分析をすることで、処方意向を向上するためのヒントを探ることができます。
これは、特にMRの日頃の活動改善に有効です。
定量的な分析に加え、定性的なコメントをMR一人ひとりがリアルタイムで確認できるような仕組みづくりが有効です。
NPS調査の結果を活用した改善施策
調査をおこなった後には、そのデータや分析結果を活用し、改善施策に取り組みます。
調査結果から、今回は以下のことに取り組みました。
- 情報提供の体制やオペレーションの改善
- MRのスキルアップ
また、こうした改善策が効果的だったかどうか、3ヶ月後に再度医師からのフィードバックを集め、NPSスコアが改善するかどうかを確かめていきます。
MRが提供する体験価値を向上させる、改善サイクルを仕組み化する
今回は、MR活動が医師にとって重要となるポイントを捉えるためのNPSの活用方法についてお伝えしました。
このようにNPSでは全体を捉えて現在の医師からの評価を可視化するだけではなく、医師が重要視している体験を捉えて改善活動に落とし込むところまで活用することが可能です。
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