イベントレポート:『CXの立役者たち』(ゴンチャ ジャパン編) | 株式会社エモーションテック

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2024.03.14

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イベントレポート:『CXの立役者たち』(ゴンチャ ジャパン編)


『CXの立役者たち』は、話題企業をお招きし、顧客体験(CX)向上に携わる様々な立場の方々にお話を伺っていくトークイベントです。記念すべき1回目のゲストは、国内でティーカフェを展開するゴンチャ ジャパン。
代表の角田様、CX推進者の酒井様、葛西様、香山様をお招きしました。


エモーションテックは、2013年の創業以来、約600社のCXのマネジメントをご支援してきました。その経験から、CXマネジメントの要となるのは「戦略」「仕組み」「文化」の3つであることがわかってきています。お客様を中心とした戦略立案を行い、それを仕組み化し、土壌となる文化を醸成すること。これら3つのどれが欠けても、CXマネジメントの本質的な取り組みには至りません。顧客体験向上の取り組みは、誰か一人の力で実現できることではなく、会社全体で、横断的に取り組んでいくことが重要です。

今回のイベントでは、ゴンチャのみなさまに、それぞれの立場と視点から、CX向上のヒントとなり得る成功事例から失敗談まで、様々なことを伺いました。

顧客ロイヤルティ向上には、“ 全社横断の仕掛け ”が重要な一歩

酒井:私たちゴンチャは、『Brewing Happiness』というミッションを掲げています。『Happiness Project』は、このミッションを実現するための、顧客体験と従業員体験の向上を目的とした全社横断プロジェクトです。21年10月に角田が社長着任後、経営上の重要施策として22年2月にプロジェクトが発足しました。

顧客ロイヤルティ指標としてNPS®︎を、従業員エンゲージメント指標としてeNPS℠を重要指標として採用しています。また、この指標を継続的にモニタリングし、データを取得するための仕組み化を目指し、2022年4月からエモーションテックのツールを導入しています。
最初は直営店から調査を実施し、現在では、FC店舗も含めた全店舗に導入しています。

角田:どのビジネスにおいても、お客様のことを知ることは基本的なことだと思いますが、このプロジェクトでは、顧客ロイヤルティ(推奨度)に着目しているという点が特長です。

株式会社ゴンチャ ジャパン 代表取締役社長 角田 淳 氏

お客様が『満足しているかどうか』ではなく『ファンになっていただけているのかどうか』。ファンになっていただければ、他の方にまでおすすめしてくれるため、この視点を入れられるかということはとても重要だと思います。

今西:プロジェクト立ち上げの背景には、どのようなものがあったのですか?

角田:私が社長に就任した当初のゴンチャは、タピオカブーム終焉やコロナの影響で売上が落ち込む中で、経営トップの入れ替わりがあったりと、とにかくいろいろなことが社内で起きているタイミングでした。当たり前かもしれませんが、当時を振り返ってみると、やはり社内には活気がなくて。
売上がついてきている時の組織は、基本的にどのような状態であってもみなさんハッピーなんですが、売上の厳しい時には、そうはいかない。そこで、私がまずやらなくてはならないと感じたことは、ゴンチャの団結力をつくること。『Happiness Project』がその中核的役割となってくれればと思っていました。

葛西:当時、僕は店長でしたが、社内に漂う閉塞感を感じていました。そんな中で角田が社長に就任し、『出る杭になれ』『空気を読むな』という言葉を会議の場でもらったことを覚えています。
その言葉を聞いて『ついに自分の時代が来た!』とワクワクしました。
そこから、どんどんと社内が変わっていったことが、本当に嬉しかったです。

香山:私は当時アルバイト(以下、クルー)としてお店で働いていたのですが、角田が就任してから髪色が自由になったり、実際に角田自らが店舗に来てくれていろいろな意見交換をしてくれたり。仕組みそのものもどんどん変わっていきましたし、クルーの立場であっても、様々なことに意見がしやすくなって、どんどん社内の雰囲気が変わっていきましたね。

従業員エンゲージメント、顧客ロイヤルティ、売上は繋がっている

酒井:調査をしてみると、弊社では、顧客ロイヤルティと従業員エンゲージメント、収益に相関関係があるということがわかりました。弊社ではフランチャイズ店舗も多いのですが、この事実とお客様の声をもとに、フランチャイジーさんと建設的な会話ができていることは大きな成果だと思っています。

香山:私自身、実はそれまで接客があまり得意ではありませんでした。でもCX調査がはじまってからは、接客に対する意識がだんだんと変わっていったのです。きっかけとなったのは、CX調査項目の中にある『輝いているスタッフを教えてください』という質問項目です。「ここにいつか自分の名前を書いてもらいたい!」という気持ちが芽生えたことがきっかけでした。

私だけでなく、お店全体が、「お客様に喜んでいただくために何をしたら良いのかな?」といったことを大切にした接客に変わりはじめたように思います。

葛西:CX調査がはじまった初日、早速名前が書かれたスタッフがいたんです。そのことを伝えると、目が輝いていたことを覚えています。現在、その方は正社員として大活躍しています。

プロジェクトメンバーには、“ハッピー” な人をアサイン

今西:素晴らしい成果ですね。プロジェクトメンバーのアサインについても伺います。
推進者に酒井さん、プロジェクトメンバーには葛西さんらがアサインされたということですが、全社横断のプロジェクトは、どのような観点で人選されましたか?

角田:チームの人選って、すごく重要ですよね。このプロジェクトは、突き詰めればハッピーを広げていくということ。ですから、そもそも、ハッピーな人じゃないと務まらない。そういう意味では、葛西は明るく、まさにぴったりの人材でした。
推進者の酒井は、ハッピーな人という点はもちろん、コミュニケーション能力が高く頭も良い上に、全然偉そうじゃないというフラットさがある。これがとても良いと思っていて、推進者としてお願いしました。

日本人って、クールになりがちですから、どうそれを冷めないように、飽きないようにやり続けるのかが大事だと思っています。

葛西:そういえば、酒井が店舗にわざわざ訪ねてきてくれて、『あなたがこのプロジェクトのキーマンだと思っています。期待しているよ!』と言ってくれたことがありました。
わざわざ店舗まで会いに来てくれたということに感動して、さらにやる気を出したことを覚えています。とても嬉しかったです。

お客様からの声は、重要な会議で、定期的にしっかりとフィードバックする仕組みをつくる

酒井:顧客と、従業員を対象とした調査を実施しています。ここでは、顧客向けの調査の結果の流れを図解して説明します。

まずゴンチャでは、お客様の購入レシートに、QRコードを印字していて、そこから日々回答を集められるようにしています。ご回答いただいたインセンティブとして、ゴンチャでのトッピング無料券を配布し、回答率を上げています。毎週メールで結果レポートを共有するほか、毎月1度、各種会議でも結果を共有しながら、「ありたい姿に近づいているのか」ということをディスカッションしています。

角田:結果は、経営会議の場でも見ています。NPSは数値が出るものですが、点取りゲームではないので、スコアに対して一喜一憂すべきではないと思っています。まずは、どのあたりに課題が潜んでいそうかということについて、経営陣全員で結果を見るようにしています。

また余談ですが、フランチャイジーの経営者からは、調査に対する信憑性を問われることもあります。結論として、CX調査で全体の傾向感を把握することは間違いなくできているため、信憑性はある、と回答しています。

酒井:以前は月に4回程度、ミステリーショッパーに店舗調査をお願いしていました。しかし調査頻度が低く、『その時、たまたま悪くて・・・』ということもあって、店舗スタッフからの納得感が得づらいということも。現在の調査形式にしてからは、1店舗月400件ほどの声が集まるようになり、回答への信頼感が高まりました。

店舗と現場、店長とアルバイト。“信頼” のカルチャーを育むことで強いチームになっていく

今西:角田さんはよく店舗に訪れると伺いました。その理由は何ですか?

角田:数字から見えることもありますけどね。でもやはり、現場の状況を肌で感じないことには、色々な判断がしづらいですよね。現場こそ本部だと思っています。

葛西:本当に現場感ある社長ですよ。とても忙しい時期に時々来られるのを見ると「ちょっとは手伝ってくれよ…」なんて思う時もありますが…(笑)

角田:手伝いたい気持ちもあるけど、僕はお店では足手まといになってしまうから(笑)

今西:なるほど(笑)お店の要になるのは、クルーのみなさんだと思うのですが、プロジェクトにクルーの方たちを巻き込む上で、ご苦労も色々とあったのではないでしょうか。

香山:社員になったばかりの時は、苦労もありました。急に他の店舗からやってきた人間の言うことなんて、だれも聞いてくれないのです。そこで、当時の上司だった葛西に教わったことは、『まずはみんなからの信頼を得ること』でした。

牛島:信頼を得るということは、とても難しいことのように思います。実際、どのように信頼を得ていったのですか?

香山:まずは、丁寧にコミュニケーションを取ることを大事にしました。あとはクルーからの提案や要望をどんどん吸い上げて、クルーの自発性を大切にしました。

葛西:従業員エンゲージメントを上げようと言っても、本当に難しいことだと思います。30人いれば、30通りの難しさがあるというか。これまで私も5店舗ほどの店舗マネージメントを経験してきましたが、以前成功したはずのパターンが全く通用しないということは、本当によくありましたね。

一つ、思い出深いエピソードがあります。
とある店舗に店長として着任した時の話です。私がいるにも関わらず、バックヤードから色々な愚痴が聞こえてくるという状況に直面しました。でも面と向かって「そういうのはやめよう」と注意したとしても、全く響かないということもわかっていました。
そのようなコンディションの店舗で働く中、ある日、クルーの一人から、「葛西さんのやり方にはついていけません」と言われて…。

年下のクルーにそのように言われて、とても言い返したい気持ちになりました。でも、そこはぐっと堪えて「どうしたら良いと思いますか?」と逆に質問をしてみたんです。すると、「こうしたらよくなると思います」というマニュアルを作ってきてくれた。
これに私は深く感動して、その提案を採用したんです。

この経験から、「クルーの提案を私は採用するんだ!」ということを繰り返し表明しては採用していきました。すると、一人、また一人と、フォロワーが増えていく感覚がありました。そして段々と、みんながついてきてくれるようになった。そして、従業員エンゲージメントの向上と共に、売上も伴っていきました。

今西:実際にフォロワーを広げていった素晴らしいエピソードですね。本部ではいかがでしたか?

酒井:店舗での大変さと似ているかもしれません。このプロジェクトを始めるにあたって、「そんなことって意味あるの?」「面倒だな」という反発はありましたね。でも、その中でも、プロジェクトに賛同して、むしろ応援し、乗っかってくれた人もいました。

私は、そのような人たちの協力を得ながら、より人を巻き込むことを意識していきました。
また何より、自分自身が諦めないということを大事にやっていきました。根気強くやっていくことが、このようなプロジェクトにおいては本当に重要だと思っています。

eNPSの開示。透明性をあげるとチームとしての意識が高まっていく。

角田:現在は改善していますが、実は弊社の直営店のeNPSは、フランチャイズ店舗と比較してそこまで良くなかった。しかし透明性を大事にしようと思っていて、社員、フランチャイズ各社とスコアを共有しています。『みんなでやっていこう!』というスタンスと、チームとして共にゴールを目指そうという姿勢を大事にしました。

今西:eNPSの開示って、経営者としては、嫌ではありませんか。

角田:経営陣の成績表だと思っていますから、気にせずオープンにしています。

チャレンジなくして成長はない

香山:入社8ヶ月の時に、戦略発表会で角田さんに直接プレゼンテーションをさせてもらった案件が採用される、ということがありました。

内容を少しお話しします。ゴンチャのドリンクを提供する際、お客様には、飲み物の中に入っている氷を少なめ、多めにしてほしいといった要望があって、よくそのことについて店頭で尋ねられていました。実際は氷の少なめと多めについては、対応が可能なのですが、当時メニュー表記には「氷あり」か「氷なし」かの表記しかなくて、口頭での説明コストが高いなと感じていました。今回の話は、このメニュー表記について角田さんに提案し、採用されました。

葛西:その話を香山から聞いた時、「私が責任を取るので、うちのメニューに限り、メニューを書き換えても良い」と許可をだしました。本当は例外に当たることなので特定の店舗だけで実施するのは、だめなんですけど。でも、お客様にとっては絶対に悪いことではないため、怒られたら自分が責任をとるよ、という気持ちでやりました。一定期間、やってみたわけですが、実際、説明コストが減ったことを体感して、その話も踏まえてプレゼンしたという経緯があります。

角田:基本的に、ゴンチャでは、コンプライアンスに関すること以外の失敗はOKだというふうに思っています。チャレンジなくして、成長はないのですから。
そういうふうに考えて、みんなと仕事をしています。

今西・牛島:貴重なお話、誠にありがとうございました!


登壇者紹介

株式会社ゴンチャ ジャパン
代表取締役社長

角田 淳 氏

アメリカのペンシルべニア州立テンプル大学を卒業し、大手自動車メーカーに勤務。その後独立し、スポーツや音楽イベントの企画やマネジメントを行う。約10年間スポーツマネジメント/マーケティングに携わり、2010年に日本サブウェイに入社。マーケティング・経営企画などを経て、2016年、日本サブウェイ合同会社 社長に就任。新商品、新型店舗開発、デジタルシフトへの注力により2019年より既存店売上を大幅に改善。2021年、ゴンチャ ジャパン代表取締役社長に就任。

 


株式会社ゴンチャ ジャパン
経営企画本部長

酒井 洵 氏

経済学部卒業後、パナソニックにて海外マーケティングに従事。ASEAN地域担当として事業戦略の策定・実行を担当。内2年間はインドネシアに駐在。その後、ボストンコンサルティンググループにて、大手通信会社、製造業企業に新規事業立上げや成長戦略の立案・実行を支援。2017年にトリドールに参画。丸亀製麺等全社マーケティング戦略策定のほか、海外事業体支援やM&A、グループ編入後の統合業務を担当。2020年よりゴンチャ ジャパンに参画。事業戦略策定やESCS最大化プロジェクトなど多数のプロジェクトをリード。2023年3月より現職。


株式会社ゴンチャ ジャパン
営業統括部 スーパーバイザー

葛西 康弘 氏

2020年ゴンチャ ジャパン入社。入社直後より、オリジナルトレーニングツールの導入やクルーの接客スキル向上をはじめとした数々の取り組みを自主的に進め、早期退職の回避や接客満足度の大幅な改善を実現。2022年に、社内のES/CSの最大化を目指すプロジェクト「Happinessプロジェクト」に参画し、担当店舗の先進事例を他店舗へ共有。2023年には、ブランドの模範となる店舗運営の実践者として、社内表彰も受賞。現在はエリアマネージャーとして、本社とのパイプ役やスタッフ教育、運営方針や戦略の立案、個店マーケティング施策の策定と幅広い業務を行う。


株式会社ゴンチャ ジャパン
営業統括部 ストアマネージャー

香山 茜 氏

2022年ゴンチャ ジャパン入社。入社直後より、本部社員の店舗実地研修を積極的に受け入れ、店舗で培った“お客様目線“の本部への還元の一役を担う。同年に実施した、社内のES/CSの最大化を目指すプロジェクト「Happinessプロジェクト」へも参画。プロジェクト後導入された「お客さまアンケート」により選出される「クルー週間MVP」を、複数回獲得。現在は、ストアマネージャーとして、自ら店舗業務をこなしつつ、QSC向上、人財育成、PLコントロールを担い、利益の最大化を通じてビジネスの成長に貢献している。

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