最良の顧客体験を生み出すために、組織をどう動かすか 「Employee Experience Day 2024」2nd Talk Session Report | 株式会社エモーションテック

最良の顧客体験を生み出すために、組織をどう動かすか 「Employee Experience Day 2024」2nd Talk Session Report

更新日:2024.09.17

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エモーションテック 編集部

NPS活用やCX向上のためのお役立ち情報を発信しています。

「よりよい顧客体験を創出する」ために、従業員体験を大切にしている丸亀製麺と物語コーポレーション。両社がどのような従業員体験を提供し、組織を動かしているのかについてうかがいました。

<登壇者>
間部 徹氏
株式会社丸亀製麺 マーケティング本部 エクスペリエンスデザイン部

春山 陽介氏
株式会社物語コーポレーション 新事業開発部 部長

佐野 真啓
株式会社エモーションテック エグゼクティブXMディレクター

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「ワクワクしていますか?」 CX(顧客体験)向上のカギは、EX(従業員体験)の向上にある~丸亀製麺の取組み~

間部さま(以下敬称略): 丸亀製麺のマーケティング本部 エクスペリエンスデザイン部の間部徹です。私のミッションは、「未来を描き、感性とデータを両立し、ビジネスを動かしていくこと」。未来を先に描き、それに対してデータをどう分析し、どう成長させていくのかを考える仕事です。
丸亀製麺は、トリドールホールディングスというグループのブランドの一つで、28の国や地域に出店しています。トリドールホールディングス全体の日本での店舗数は本日(イベント当日/2024年7月24日)段階で1,110店舗、そのうち約840店舗が丸亀製麺の店舗になります。
すべての店で粉からつくる店内製麺であり、「手づくり・できたて」をコアな魅力に据え、五感で楽しめるライブ感のある店を目指しています。

スローガンは「食の感動でこの星を満たせ。」、ミッションは「本能が歓ぶ食の感動体験を探求し世界中をワクワクさせ続ける」…と、「感動」をメインにおいています。
外食サービスなので、うどんを提供し、うどんを食べてもらう、食を楽しんでもらうというのはもちろんなのですが、それだけではなく、食を通じて体験をご提供して、感動していただけるようにしたいということで柱に置いています。

なにか判断に迷ったら「感動」を判断軸にする、という考え方です。
「感動」こそが、顧客を創る源泉であり、人は心が強く動かされ感動することで行動(購買)する、ということです。

もう1つのキーワードが「二律両立」。常識にとらわれず、お客さまに感動してもらうために 非合理を追求していこうという考え方です。
たとえば効率面からみると、各店舗で製麺するのは非効率です。ですが、お客さまに感動を感じていただくために非合理を大切にし、チャレンジするマインドがあります。

そこで大切になってくるのが、「感性とデータの両立」になります。
当たり前かもしれませんが、データからは感動は作れません。
だけど、感性だけでは勝ち続けられないので、データで再現性を保っていく。両方を組み合わせたマーケティング戦略・戦術が必要です。

丸亀製麺 間部氏

そのうえで、最良の顧客体験を生み出すために、組織をどう動かすか?というのが今回のテーマです。
最良の顧客体験の提供は、働く従業員、スタッフがワクワクしていないとできません。
なので、従業員がもっとワクワクすることをやっていこうと、「内発化」をテーマに掲げて、ワクワクする仕組みづくりをしています。
従業員が自ら、お客さまに感動してもらうために「これをやりたいな」「あれをやっていきたいな」と内から湧き出る思いで考え、実行する。つまり、丸亀製麺にしかできない、唯一無二の感動体験を想像し、提供していきましょう…ということです。
ご来店したお客さまが、丸亀製麺のことを好きになるように、ベビーカーを押している方に声掛けをしたり、お子さまに手作りおもちゃをプレゼントしたり、そういうことを従業員一人ひとりが自分らしく、お店らしく、それぞれで考えて実践していきましょう、と。

自発的に考え、実践するための仕組みとして、全店で導入しているのが「感動スコア」です。
丸亀製麺で食事をすると、レシートの下のほうにうどんのどんぶりの絵とQRコードがついています。そのQRコードを読み込むとアンケートになっており、お客さまにお食事体験を直感的にお答えいただけるようにしています。そのお客さまの感情(アンケート結果)を、毎日お店で見られるように翌日にはフィードバックしています。良いコメントが来ると、モチベーションがあがり、やる気につながります。
お客さまのために、もっと笑顔に…その気持ちがお客さんの体験に、スパイラルのように気持ちが高まっていく体験をつくりたいと考え、どうしたらアンケートっぽくなく直感的に楽しく答えていただけるか、検証と改善を繰り返してきました。


「ごちそうさま!」「おいしかったよー」というお客さまからのコメントからは、感情がストレートに伝わってきて、スタッフのモチベーションになります。
「こうしたほうがいい」というご意見も、昨日のことなので取り入れやすいように思います。
この「感動スコア」の使い方は店舗によってさまざまです。型を決めてしまうと、その型をこなすことが目的になるので、このスコアをどう使うのがいいのかは店長やスタッフさんにお任せしています。

まず従業員の気持ちを動かす、その気持ちからのアクションが顧客の体験向上につながる、そしてそれをスピード感もってPDCAサイクルを回していく、それが丸亀製麺の取組みです。

「本気だから面白い!」本気にさせる仕掛けで従業員体験を引き上げ、顧客体験に焦点をあてる~物語コーポレーションの取組み~

春山さま(以下敬称略):株式会社物語コーポレーションは、焼肉きんぐ、丸源ラーメン、寿司・しゃぶしゃぶゆず庵など17のブランドを国内外に展開する業態開発型フードビジネスカンパニーです。郊外の大型飲食店が多いのですが、徐々に都市部にも進出してきましたので、ご存じの方もいらっしゃるのではないかと思います。
私は新事業開発部で、アンケートから店舗別の課題を出し、これに対して経営と店舗が一緒になって改善を図ることで顧客満足度をあげていく仕組みを作っています。

NPSとeNPSを導入させていただいており、私たちは<eNPS・NPS・売上>を<予兆・評価・結果>だと捉えています。
つまり、従業員からの評価(eNPS)は店舗でなにが起きているのか、過不足が何かを知ることができる「予兆」であり、顧客からの評価(NPS)は「評価」、店舗におけるチームワークや新人教育など取組みの結果が悪ければスコアとして反映されるもの。そしてその予兆、評価が最終的な結果として売上に反映されるという考え方です。
顧客からの評価が下がった場合、リピート数の減少や来店率の低下を招き、売上の低下につながります。

従業員からの評価は、必ずしも当たるわけではないが、おそらくなにか起きそう、起きるベースがそこにあるだろうと捉えています。ただし、あくまでも焦点をあてるべきはお客さまです。
従業員同士でもめごとがあると、従業員はお客さまのほうを向けないので、従業員体験は引き上げるべきで、そこへ向けた取組みをしますが、常にその先のお客さまの体験を引き上げることを目的にしています。

アンケートで私たちがやろうとしているのは、ブランド価値の維持向上です。
ブランドとは顧客との約束だと考えています。
一店舗でなにか問題があった場合に、それがトリガーとなりブランド全体の価値が落ちることは容易にあり得ます。
ですので、すべての店舗で体験のばらつきを低減し、お客さまの期待を裏切らないようにブランドを守らないといけません。ただし、守るだけではなく価値を上げていかないといけない。価値を高めながら守る、それができるマネジメント体制づくりをするために、NPSとeNPSを指標にしています。
私たちにとって、NPSはお客さまからの通知表です。
その評価をもとに、お店のなかで何が起きているのかを可視化し、問題のあるところから改善していきましょうというサイクルをまわしています。

ここで大切なのが、わかりやすい指標と競争させる仕組みです。
当社はいま720店舗ありますので、一律に「やってください・やりなさい」では従業員は動きません。じゃあどうするのかというと、「おもしろくする」んです。
丸亀製麺さんの「ワクワク」と少し似ていますね。

物語コーポレーション 春山氏

毎日、店舗から何十、何百という「これをやったら売上があがった」「これやったらクレームが減った」といった発信をおもしろおかしくまとめて、100点満点中何点と数字で伝えています。
従業員の大半は、アルバイトの高校生、大学生ですので、彼らにとってわかりやすい指標ということで「100点満点」を置いています。また、アルバイトやパートである彼らは毎日出勤するわけではないので、当日のうちに結果を共有するようにしています。昼の営業結果が、その日の夜にはわかる。そうすることで、鮮度高く情報を受け取ってもらえます。
このように毎日お客さまからの通知表を公表するわけですが、アンケートの結果が一気に下がっていた場合は、これは店舗側や従業員のせいではなく、本部に課題があるのではないかと考えます。
たとえば、低評価の原因が「炙りのメニューを増やしたら提供スピードが遅くなった」だった場合、解決策は「気合でやろう!」や「あの店はできてるらしいよ、やりましょうよ」ではありません。最初から、炙りメニューを削減する方針を決め、本部でスケジュールを引くことで、体験品質を担保します。

当社の長期経営ビジョンは「『個』の尊厳を『組織』の尊厳より上位に置き、『とびっきりの笑顔と心からの元気』で世の中をイキイキさせる」というものです。笑顔でまわりのみんなを巻き込んで進めていくことを掲げています。
「おもしろくする」というお話しを先ほどしましたが、その最たる例を一つご紹介します。

「物語甲子園2023」画像
さあ、日本一番店を決めよう!

「物語甲子園」、これはNPSのスコアで全店舗が競うというイベントです。トーナメントで勝ち上がっていき、全業態から1位の店舗には、スタッフ全員に1万円賞金が出るというもので、けっこうお金もかけてやっているのですが、学生たちは賞金があるとなると本気で取り組みます。そして、本気になれば……本気だからおもしろい!
従業員が本気になるような仕掛けでエンジンをかけています。
10代、20代の若者中心に改善サイクルをまわすので、こうしたおもしろいイベントをすることで、日々のマネジメントを辛くないようにと、仕組みとして作りながら、発展させていただいています。

丸亀製麺×物語コーポレーション トークセッション

佐野(エモーションテック):両社ともに、顧客体験をいかに作り出すのかに注力し、しっかり設計したうえで、そこをまわす従業員の方がどうしたら楽しく動けるのかへ向けた工夫をしていらっしゃいます。
「人」を大事にするのが共通点かと思いますが、人を大事にする具体的な工夫はありますか?

間部丸亀製麺では全店舗に「麺職人」という方がいます。「感動スコア」にて「麺職人さんの〇〇さんのうどんがおいしい」というファンレターのようなコメントが届くこともありますし、公式ホームページでどの職人さんがどの店舗にいるのか公開していることから、その店舗まで食べに行ったりするお客さんもいらっしゃるようです。
接客においては、人が人をもてなすというところを大切にしています。今まではそうした取組みによってお客さまがどう感じたのか、お客さまの声が届かなかったのですが、アンケートを通じてわかる・伝わる仕組みを作り上げられらたのはいい取組みになったと思っています。まだブラッシュアップ中ですけれど、まず一度作り上げられたという点がよかったな、と。

春山:アンケートも含めて「鮮度」を非常に重要視しています。毎日出社する社員と比べると、バイトやパートの人は毎日出社するわけではないので、お客さまの声もその日すぐに届けないと心に響かなくなるんですね。届く「鮮度」があると思っていますので、鮮度のいいうちに届けるのが工夫の一つですね。
あとは、褒めるためにどういう場を設けるのか。
さきほどご紹介した「物語甲子園」のように賞金が出るものもあれば、社内のメディアに取り上げるなど、なにかで輝ける仕組みや仕掛けを設けています。

佐野:丸亀製麺の「麺職人」や「おせっかいさん」、物語コーポレーションの「物語甲子園」やアンケートを鮮度高く届けるなど、仕組みや制度を作ってやる気にさせるところがあるんですね。それによって、出たいい効果、すごい面白いエピソードがあればぜひ教えてください。

間部:少し前に「麺職人が全店に配置されました」というテレビCMを実施させてもらったんですね。そのCMに出ているのが実際の麺職人なのですが、ウェブサイトにも載っていますし、自分たちが「お客さまから期待していただいている」という感覚がプライドをもつこと、またモチベーションの向上につながるという効果があると思います。
また、「感動スコア」により、単に不足を指摘して改善するのではなく、プラスをよりプラスにしていく考え方が浸透してきています。 「褒める文化」です。

佐野:褒められたりメディアに出る機会があると、「私もやりたい」と好循環が起きるんですね。春山さんはいかがでしょうか?

春山:もともと私は昨年までDX戦略の担当もしていました。人の作業をデジタル化する、どんどん人でなくてもよいサービスを減らしていくことをしていました。なので、NPSによりここを補完する機能をつくれたら…と考えています。
DXにより、店舗のなかで人との接点が減っていく……世の中全般そうだと思うのですが、そうなると一回一回の接点、顧客サービスの重要度が増します。だからこそ、その限られた機会になにをしてほしいのか、アンケートを「こうすればお客さまが喜んでくれる」の根拠とし、会社としてロールモデルとして示すことができ、顧客体験をよくする仕組みがつくれたかなと思っています。

佐野:いい顧客体験をつくるために、いい従業員体験をデザインされていらっしゃいますが、人を大事にするというのは大変なことです。どんな苦労があったか、従業員の方におもしろい工夫をするためのアドバイスがあれば、最後に一言ずつお願いします。

左 春山氏、右、間部氏

間部必ずやっているのは「事業成長と関係があること」をしっかり伝えることです。実際にデータからは証明できてきているので、それをどうスタッフさんたちに伝えるのかは見極めていかないといけないなと。その他では、物語コーポレーションさんもされていることですが、おもしろく、楽しく、ワクワクするようにビジュアルを入れるなどを意識してやっています。参考になりますでしょうか。

春山:先ほどのお話しに少し似てるんですが、財務面と非財務面の両方で評価するという点を工夫しています。店長は収益を追ってるので収益に結びつかないと意味があると思えないんですよね。でも、現場の従業員からしたら数字なんて知ったことじゃない。楽しいか、おもしろいか、もしくは気持ちよくなれるかという非財務面で評価して、まずこの二面を成立させないといけない。
あとは、とにかく学生の従業員が多いので、「春山さん、飽きました」ってすぐ言われるんですよ。似たようなことを続けていると「それもういいっす」って言われるんです。辛いです(笑)。なので、鮮度を高めること、おもしろさを次々と出す、陳腐化させないように本部がめげずにがんばる、これが大事かなと考えています。

佐野:ありがとうございます。間部さんのお話しでも「アップデート」という言葉が出てきたかと思うのですが、陳腐化しないようにまわしていく、がんばった先になにがあるのか、CX側・事業側成長とつなげながらの取組みを進めていらっしゃるんですね。間部さん、春山さん、今日はありがとうございました。

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