VoCを活用してコールセンター運営を革新する方法 | 株式会社エモーションテック

VoCを活用してコールセンター運営を革新する方法

更新日:2025.02.26

このコラムの執筆者
梅川 啓

株式会社エモーションテック Marketing Manager 

複数企業の事業責任者を歴任したのち、2020年よりエモーションテックにCXコンサルタントとして参画。製薬会社や金融機関、化粧品メーカーのNPSプロジェクトやCXマネジメントの支援に携わる。2022年よりマーケティングに従事し、各種セミナーやイベントに登壇。

VoC(Voice of Customer)とは、顧客が製品やサービスに対して抱く意見、感情、要望、クレームなど「顧客の声」を指します。現代の企業経営において、VoCは単なる数値評価やアンケート結果にとどまらず、顧客の本音を直接反映し、迅速な改善策や新たなマーケティング戦略の策定に不可欠な情報源となっています。

特にコールセンターは、顧客との直接的な接点であり、顧客のフィードバックをリアルタイムで収集できる現場です。本記事では、コールセンター運営においてVoCをどのように収集し、分析し、実際の改善施策へと反映させるか、その具体的な手法と実践例、さらにはPDCAサイクルによる継続的な改善について、詳しく解説します。

従来、コールセンターでは、顧客アンケートによる定量評価や電話インタビューによる定性評価、またCTIなどのシステムにオペレーターが手動でタグ付けやフラグ立てを行うことによるデータ集計が主流でした。しかし、近年は技術の進化により、通話記録の自動テキスト化や、チャットログ、メール問い合わせなど、多様なチャネルからのフィードバックを統合的に収集することが可能になりました。

また生成AIの登場により、テキスト化した通話記録を構造的に整理したり、話題となっているトピックを抽出したり、それらを集計・分析することも可能になりました。

生成AIやテキストマイニング、クラスタリングなどの先進的な分析手法を取り入れることで、膨大なデータの中から具体的な問題点や改善要求を迅速に抽出できるようになりました。これにより、企業は顧客の本音を正確に把握し、迅速な改善策を実施することで、顧客満足度の向上と解約率の低減、ひいては企業全体の収益安定化に繋げることができるのです。

1. VoCの基本とコールセンター運営における重要性

VoCとは、顧客の声全体を意味し、製品やサービスに対する顧客の意見や感情、要望、クレームなど、多岐にわたるフィードバックを含みます。コールセンターは、電話やチャット、メールなどで顧客から直接フィードバックが寄せられる場所であり、VoCの収集において最も重要な現場です。ここで得られるデータは、顧客が感じる不満や期待、具体的な問題点をリアルタイムに反映しており、企業が迅速に問題を解決するための根拠となります。

企業は、コールセンターで収集したVoCを活用することで、サービスの品質向上やオペレーターの対応改善、さらには製品改良に結び付けることができます。顧客からのフィードバックを定期的に分析し、改善策を迅速に実行することが、企業全体の競争力強化と持続的な成長に直結します。

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2. コールセンターにおけるVoC収集の実践方法

2-1. 通話記録の自動テキスト化

現代のコールセンターでは、顧客との通話内容を自動的に録音し、音声認識技術を利用してテキストデータに変換するシステムが導入されています。これにより、手動での記録作業の負担が軽減され、すべての顧客対応がデジタルデータとして蓄積されます。自動テキスト化されたデータは、後のテキストマイニング解析の基盤となり、顧客の不満や要望、改善点を迅速に抽出するための貴重な資料となります。

2-2. チャットログとメール問い合わせの記録

電話だけでなく、チャットやメールでの問い合わせも、コールセンターのVoC収集において重要な役割を果たします。最近ではノンボイス化と呼ばれ、顧客が電話で問い合わせを行う前に、チャットボットやFAQによってユーザーがセルフで解決できるようなツールが充実しています。

これらのコミュニケーションは、通話に比べて記録が容易であり、内容も詳細に残るため、顧客の具体的な意見や要望を正確に把握することができます。特に、メールでの問い合わせは、顧客が自ら考えた上で記述するため、より深いインサイトが得られるケースが多いです。

2-3. フォローアップアンケートの実施

対応後の顧客に対してフォローアップアンケートを実施することで、通話内容に対する満足度や改善点、具体的な要望を直接的に把握できます。アンケートは、簡潔かつ回答しやすい形式で設計することが重要です。これにより、顧客の生の声を数値化し、トレンド分析や感情分析の一部として取り入れることが可能になります。

NPSCESなどの指標を用いることで、同じ尺度を使って拠点ごとの評価やオペレーターごとの評価、そしてそれぞれの強みや改善点を把握することができるようになります。

2-4. CRMシステムとの連携

コールセンターで収集されたフィードバックは、CRMシステムに統合されることで、各顧客の履歴や属性と連動して管理されます。これにより、個々の顧客が過去にどのような問い合わせやクレームを出しているかを把握しやすくなり、改善点の優先順位や顧客ごとの対応策が明確になります。また、データの統合管理により、他部門との情報共有がスムーズになり、全社的な改善活動につながります。

3. VoCデータの分析手法

3-1. キーワード抽出と頻度分析

収集された通話記録やチャットログ、アンケートデータから、テキストマイニングツールを用いて頻出キーワードを抽出します。たとえば、「待機時間」「対応」「解決」などのキーワードが多く出現している場合、これらは顧客が不満を感じている要因である可能性が高いです。頻度分析を通じて、どの問題点が顧客にとって最も深刻かを定量的に評価し、改善策の優先順位を決定します。

3-2. 感情分析によるフィードバックの評価

感情分析(センチメント分析)を活用して、顧客のフィードバックがポジティブかネガティブか、または中立かを判定します。これにより、特にネガティブな感情が多い問い合わせやクレームの傾向を把握することができ、どの部分で改善が必要かをより明確に示すことができます。感情スコアを用いることで、数値としての改善効果の測定も可能になります。

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3-3. クラスタリングとテーマ抽出

似たような内容のフィードバックをグループ化するクラスタリング手法を用いると、共通のテーマや問題点が浮かび上がります。たとえば、複数の顧客が同様の「待機時間」や「対応品質」に関する不満を訴えている場合、これらは一つのクラスタとしてまとめられ、重点的に改善すべき領域として認識されます。テーマ抽出により、各クラスタにおける具体的な改善要求を詳細に把握できます。

3-4. 時系列分析とコホート分析

時系列分析を用いて、特定の期間におけるクレームの増減や傾向の変化を把握します。さらに、コホート分析により、特定期間に新規に加入した顧客のフィードバックを追跡し、初期対応の効果やオンボーディング施策の影響を評価することが可能です。これらの手法は、改善施策の効果測定や次のアクションプランの策定に大きく役立ちます。

3-5. 生成AIをした分析

生成AIは、大規模言語モデル(LLM)を用いてテキストの文脈を理解することができます。従来のテキストマイニングでは単語単位での集計や分析までしかできませんでしたが、生成AIを活用することで文脈単位での集計分析が可能になりました。

特にコールログデータではフィラーや話し方の癖、また方言や皮肉・比喩など様々な形の表現がある中でもより正確に分析することができるようになります。

今まではオペレーターがログの入力やタグ付けを行なっていた手間や、VoC分析担当者が時間を使って読み込みセグメントの仕分けを行なっていたようなケースも生成AIを活用することでかなりの効率化・高度化を見込むことができます。

4. VoCから導かれる改善策とPDCAサイクル

4-1. 対応プロセスの見直し

テキストマイニングや生成AIを活用した分析の結果から、顧客が最も不満を感じている点を抽出します。例えば、待機時間の長さやオペレーターの応対品質に関するネガティブなフィードバックが多い場合、これらを改善するために、通話システムの見直しやオペレーターの再教育、マニュアルの更新など、具体的な対応策を実施します。迅速な対応と改善策の実施は、顧客満足度向上に直結します。

4-2. 製品・サービスの改良

顧客からのクレームには、製品の使い勝手や機能不足、不具合に関するものも含まれます。これらのフィードバックを基に、製品やサービスの設計を再検討し、改善すべきポイントを明確にします。たとえば、操作性の問題が指摘されている場合、UI/UXの改善や使い方ガイドの充実を図り、顧客がストレスなく利用できる環境を整えることが求められます。

4-3. カスタマーサポート体制の強化

VoCから得られた情報を基に、カスタマーサポート部門全体の運営体制を見直すことも重要です。対応の遅延や不親切な応対が指摘されている場合、スタッフの研修プログラムを再構築し、より迅速かつ適切な対応を行えるようにします。また、チャットボットや自動応答システムの導入により、基本的な問い合わせには即時対応を実現し、オペレーターがより高度な問題解決に専念できる体制を整えることが効果的です。

4-4. 改善策の効果測定とPDCAサイクル

改善策を実施した後は、必ずその効果を定量的に評価し、PDCAサイクルを回すことが重要です。NPSやCSAT、リピート購入率、クレーム件数、平均対応時間などの指標を用いて、改善策がどの程度顧客満足度に影響を与えているかを測定します。これにより、さらに効果的な施策への見直しが行われ、継続的な改善が可能となります。

5. VoC活用でコールセンター運営を革新する成功事例

成功事例:クラウド会計ソフト企業

あるクラウド会計ソフト企業では、コールセンターでのオンボーディング時に顧客からのフィードバックが多く、特に「待機時間の長さ」や「対応の質」に関するクレームが顕著でした。テキストマイニングを用いて通話記録を解析した結果、これらの点が主要な問題であると特定され、専任のカスタマーサクセス担当を配置して、待機時間短縮のためのシステム改善やオペレーターの再教育、FAQの充実を図りました。結果として、解約率が大幅に低下し、顧客満足度が向上したと報告されています。

成功事例:EC企業のUI/UX改善

別のEC企業では、VoCを活用して、ユーザーから「操作が複雑」といった意見が多数寄せられていることが判明しました。これを受け、UI/UXの見直しや使い方ガイドの充実、さらにサイトのナビゲーション改善を実施。改善後のキャンペーンでのNPSが大幅に向上し、顧客のリピート購入率も増加しました。この事例は、VoC分析が具体的な製品・サービス改良につながることを示しています。

成功事例:カスタマーサポート体制の見直し

また、ある通信企業では、コールセンターでの顧客対応に関する不満をVoC分析で抽出し、スタッフの研修プログラムや自動応答システムの導入を強化しました。これにより、対応時間が短縮され、クレーム件数が減少。結果として、顧客満足度が向上し、ブランドの信頼性が強化されました。

6. まとめ:VoCを活用してコールセンター運営を改善し、顧客満足度を向上させる

コールセンターは、顧客の生の声が最も集まる現場であり、VoCを活用したクレーム分析は、企業が迅速かつ的確に改善策を講じるための基盤となります。収集された通話記録、チャットログ、アンケートなどのVoCデータからは、生成AIの活用やテキストマイニング、クラスタリングなどの手法を通じて、具体的な問題点や改善点を抽出することができます。

これにより、企業は待機時間の短縮、対応品質の向上、製品改良、さらにはカスタマーサポート体制の強化といった施策を講じ、顧客満足度の向上と解約率の低減を実現することが可能となります。

また、改善策の効果をNPS、CSAT、リピート購入率などの各種指標を用いて定量的に評価し、PDCAサイクルを回すことで、継続的な運用改善が促進されます。VoCの活用により、コールセンター運営は単なる問い合わせ対応の場を超えて、企業の戦略的な改善活動の中心的な役割を担うようになるのです。顧客の本音を正確に捉え、迅速な対応と具体的な改善策を実施することが、企業の長期的な成長と競争優位性の確保に直結します。

よくある質問(FAQ)

Q1. コールセンター運営において、なぜVoC活用が重要なのでしょうか?

A. コールセンターは、顧客との直接の接点であり、日々大量のフィードバックが集まる場所です。ここで得られるVoC(Voice of Customer)は、顧客が実際に感じている不満、要望、さらには改善点を具体的に反映しており、企業が提供するサービスや商品の質向上に直結します。例えば、顧客が通話中に「待機時間が長い」「応対が不親切」といった具体的な意見を述べる場合、これらは迅速な対応改善やオペレーターの再教育、システム改善などの施策に結びつきます。また、VoCを活用することで、従来のアンケートや定量データだけでは捉えきれなかった顧客の本音や微妙な感情の変化を把握でき、結果として顧客満足度の向上、解約率の低減、そしてブランドロイヤルティの強化を実現するための戦略的な基盤が整えられます。コールセンター運営においては、リアルタイムで顧客の声を収集し、即座に改善策を講じることが、企業の競争力を高めるために極めて重要です。

Q2. コールセンターにおけるVoC収集の具体的な手法はどのようなものがありますか?

A. VoC収集は、顧客からのフィードバックを多様なチャネルから取り込むことが基本です。主な手法としては、まず通話記録の自動テキスト化があります。音声認識技術を用いて、顧客との通話内容を正確に文字情報に変換することで、膨大なデータを後から解析できるようにします。また、チャットログやメール問い合わせ、SNSやオンラインレビューからのフィードバックも重要な情報源となります。さらに、対応後のフォローアップアンケートを実施することで、顧客の満足度や具体的な改善要求を直接収集できます。これらの手法を組み合わせ、CRMシステムや専用のVoCツールと連携させることで、各チャネルから得られるデータを一元管理し、全体としての傾向や問題点を正確に把握することが可能です。業種や企業規模に合わせた収集手法の最適化が、VoC活用の成功に直結します。

Q3. VoCに活かせるデータとはどのようなものなのでしょうか?

A. VoCに活かせるデータは、大きく定量データと定性データに分けられます。定量データは、アンケートの評価点、CSAT、NPS、リピート率、応答時間など数値として表現できる情報です。これらは統計的な傾向分析に有用です。一方、定性データは、顧客が自由記述で述べた意見、通話やチャットの内容、SNSの投稿、オンラインレビューなど、文章情報が主体となります。これらの定性データは、テキストマイニング、感情分析、クラスタリングなどの手法を通じて解析され、顧客が具体的にどの部分に不満を感じ、どのような改善要求を持っているかが浮かび上がります。両者を組み合わせることで、数字だけでは捉えきれない顧客の本音を明らかにし、具体的な施策に結び付けることが可能となります。

Q4. 業界ごとに最適なVoC収集方法は存在するのでしょうか?

A. はい。業界や企業のビジネスモデル、顧客層によって、最適なVoC収集方法は異なります。例えば、EC業界ではオンラインレビューやSNSでのフィードバックが多く、これらは自動的に収集・解析するツールが効果的です。一方、B2BやSaaS企業では、コールセンターやフォローアップアンケート、直接のインタビューが重要なデータソースとなります。また、金融業界などでは、顧客のプライバシー保護が重視されるため、匿名化されたデータ収集と厳密なセキュリティ管理が求められます。各業界の特性を踏まえた上で、複数のチャネルからのデータ統合と分析を行うことが、より正確なVoC把握と効果的な改善策の策定に繋がります。

Q5. アンケートによるVoC収集は本当に顧客の真意を拾えるのでしょうか?

A. アンケートはVoC収集の基本的な手法であり、定量的なデータとして評価スコアや満足度を数値化するのに優れています。しかし、アンケートには回答率の低下、回答内容の偏り、そして顧客が本音を十分に述べにくいという限界があります。そのため、アンケートだけでなく、通話記録、チャットログ、SNS投稿など、定性データも併用することで、より包括的に顧客の真意を拾い上げることが重要です。こうした複合的なアプローチにより、顧客の本音や潜在的な改善要求を正確に把握できるようになります。

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