NPSにおける「クローズドループ」とは?顧客ロイヤルティを高めるVoC活用の極意 | 株式会社エモーションテック

NPSにおける「クローズドループ」とは?顧客ロイヤルティを高めるVoC活用の極意

更新日:2025.12.09

このコラムの執筆者
梅川 啓

株式会社エモーションテック Marketing Manager 

複数企業の事業責任者を歴任したのち、2020年よりエモーションテックにCXコンサルタントとして参画。製薬会社や金融機関、化粧品メーカーのNPSプロジェクトやCXマネジメントの支援に携わる。2022年よりマーケティングに従事し、各種セミナーやイベントに登壇。

昨今のビジネスにおいて顧客ロイヤルティは、企業の持続的な成長を左右する最も重要な要素のひとつとなっています。競合他社との競争が激化し、製品やサービスの差別化が難しくなる中で、顧客体験(CX)をいかに向上させるかが問われています。

そのCXマネジメントにおいて、顧客ロイヤルティを測る指標として不可欠となっているのが、NPS(ネット・プロモーター・スコア)です。NPS調査で得られた顧客の声(VoC)を取得しただけでは終わらせず、具体的な改善行動に結びつける仕組みこそがクローズドループです。

本記事では、NPSの取り組みを顧客ロイヤルティ向上に繋げるクローズドループの本質と具体的な実践方法を、プロフェッショナルな視点から徹底的に解説します。

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NPSにおけるクローズドループとは?

クローズドループの概念と役割

NPSにおけるクローズドループとは、アンケートなどの手段を通じてフィードバックを提供した個々の顧客に対して、改善や問題解決のための具体的なアクションを行い、その結果を顧客に伝える一連の流れを指します。言葉の通り「閉じた(完了した)サイクル」を意味するのです。

項目クローズドループ(Closed-Loop)
定義VoC提供者個人への対応とフィードバック
目的顧客ロイヤルティの即時的な向上・修復
効果解約(チャーン)の防止、批判者の推奨者化

クローズドループの目的:解約防止とロイヤルティ向上

クローズドループを実施することの最大の目的は、明確な不満を持っている「批判者」との信頼関係を修復し、離脱を食い止め、ロイヤルティの低下を食い止める点にあります。批判者は、不満を抱えているにもかかわらずその声を聞いてもらえなかったと感じると、企業に対する信頼を完全に失い、そのまま静かに他社サービスへの利用に切り替わっていきます。そして最悪の場合、ネガティブな口コミを広げ始めます。

クローズドループを実施し、早期に不満を抱えた顧客へのフォロー活動を行うことで、「あなたの声を真剣に受け止めている」というメッセージを伝え、「これからの改善、そして期待に応えることを約束する」ことで、不満は「ロイヤルティを築く機会」へと転換します。

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クローズドループ実践ガイド:3つのステップと具体的なアクション

では実際にどのようにクローズドループを回していくと良いのか、その具体的なステップを見ていきましょう。

ステップ1:顧客フィードバックを毎日の業務に組み込む

クローズドループに取り組むためには、顧客からのフィードバックを毎日社員に伝えるための仕組みが必要になります。つまり、顧客フィードバックに基づいた対応、そして改善を業務の中に組み込んでいく、ということです。

NPSアンケートなどを通じて、低評価(特に推奨度4点以下)の回答や、顧客からの明確な不満・クレームが記載されたフリーコメントを受け取った際には、なるべく早期に担当者、あるいは上長・責任者による顧客のフォローアップを行います、できれば24-48時間以内に対応を開始できるように体制を構築し対応フローを整備しておくことが理想です。

NPSツールの多くには、特定の回答が入ってきたら関係者にアラート通知を飛ばすなどの機能があるのでそういったものを活用すると良いでしょう。

ステップ2:フィードバックに基づく個別対応

日々の取り組みの中で実際に低評価や不満の声が入ってきた際には、事前に取り決めたフローに則って即時に対応アクションを起こします。

まず不快な体験をさせてしまったことに対し、真摯に謝罪し、共感の意を示します。その上で、不満に至った根本原因を特定し、いつ、どのように改善するかを約束することで信頼の回復を試みます。その場での即時の解決が難しい場合もあると思いますが、そういった場合も可能な限り改善の進捗報告を行うなど真摯な姿勢を顧客にみせるようにしましょう。

ステップ3:対応後のモニタリングと長期的な関係構築

クローズドループの目的は前述した通り、解約防止とそこから最終的なロイヤルティ向上です。即時対応を行うことが大前提であり重要な一方で、決して一時的な対応で終わらせてはいけません。
その後の顧客の行動をモニタリングし、長期的な信頼関係の構築に繋げていきましょう。

NPSアンケートは継続的に実施をしていると思いますので、次回のアンケート時にどのような評価がされてるか、またアンケート実施の前に直接のタッチポイントを持つ場合には、改めてのお詫びをするとともにその後の様子についてヒアリングし、さらなる関係構築に繋げるヒントを得ましょう。

「現場」と「全体」をつなぐ二重のクローズドループ構造

クローズドループは、顧客の声を単に、個人に対応するためだけでなく、企業の構造的な課題解決にも活用することで最大の効果を発揮します。NPSにおける「インナーループ」と「アウターループ」について簡単にご紹介します。

インナーループ(Inner Loop):現場レベルの個別対応

インナーループは、批判者からのフィードバックに対し、24時間以内といった迅速な対応を行い、個別の不満を解消します。これにより、目の前の顧客の離脱を防ぎます。

アウターループ(Outer Loop):経営・部門レベルの構造的課題解決

アウターループは、個々のVoCを束ねて傾向を分析し、「なぜこの問題が頻発するのか」という構造的な課題を特定します。例えば、「ウェブサイトの導線が分かりにくい」という声が多ければ、ウェブサイトの改修という全社的なプロジェクトを立ち上げます。これにより、VoCを経営に活かし、顧客体験の設計そのものを改善します。この二重のループを効果的に機能させるためには、VoCを自動で収集・分析し、適切な部門や担当者に振り分け、対応状況を一元管理できる専門のVoC管理システムが不可欠です。

特徴インナーループ(Inner Loop)アウターループ(Outer Loop)
主な目的個々の顧客ロイヤルティの回復・強化構造的な根本課題の解決とCXの全体改善
主な実行者顧客接点の現場担当者
(CS、営業など)
経営層、部門長、CX推進チーム
VoCの活用個別対応とフィードバックの修復VoCの集計・分析と傾向把握
対応のスピード即時(数時間〜48時間以内)長期的・戦略的(数週間〜数ヶ月)
主な対象顧客批判者問題発生中の顧客全ての顧客
(批判者、中立者、推奨者)
KPI/効果NPS、顧客解約率(チャーン率)低下NPS全体スコアの上昇、事業成長率、顧客単価向上
アクション例批判者への電話での謝罪・共感と個別問題解決VoCを基にした製品機能の改修プロセス変更サービス設計の見直し

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クローズドループ運用を阻む壁と成功のためのポイント

多くの企業はクローズドループを導入する際にいろいろな壁に直面しています。代表的なものとして以下の3つが挙げられます。

  1. VoCの放置: フィードバックが特定の部署で滞留し、対応が遅れる、あるいは実行されない。
  2. 部門間の連携不足: 顧客の問題が複数の部門にまたがっているにも関わらず、連携が取れずたらい回しになる。
  3. 「作業」化: 顧客のロイヤルティ向上ではなく、単なる「対応件数」をこなす作業と化してしまう。

これらの壁を乗り越えて、クローズドループを回し、NPSの取り組みを成功に繋げていくには、経営層のコミットメント、現場の顧客ファーストのマインド醸成など、全社で顧客の声に向き合っていくための文化をいかに作っていくかにかかっています。

まとめ:クローズドループで持続的なロイヤルティを築く

NPSにおけるクローズドループは、顧客の声(VoC)を「集める」だけでなく、「活かしていく」という実践的なプロセスです。批判者一人ひとりの声を真摯に受け止め、迅速にフォローアップを行うこと。そして、そこから得られた洞察を全社的・構造的な改善に繋げることが、持続的な顧客ロイヤルティの向上と企業の成長に不可欠です。

よくある質問

Q: クローズドループとは具体的に何をすることですか?

  • A: クローズドループとは、NPS調査などでフィードバックを提供した個々の顧客に対し、改善や問題解決のための具体的なアクションを行い、その結果を顧客に伝える**「閉じた(完了した)サイクル」の一連の流れを指します 。最大の目的は、不満を抱える批判者**との信頼関係を修復し、離脱を防ぐことです 。

Q: クローズドループで最も重要なアクションと、そのスピードはどれくらいですか?

  • A: 最も重要なアクションは、批判者などの低評価の顧客に対して、不快な体験への真摯な謝罪と共感を示し、具体的な改善を約束することです 。対応はなるべく24〜48時間以内に開始できるように体制を整えることが理想とされています 。

Q: インナーループとアウターループの役割分担は何ですか?

  • A: インナーループは、顧客接点の現場担当者が主体となり、数時間〜48時間以内に個別対応を行い、顧客ロイヤルティの即時的な回復・強化を図ります 。一方、アウターループは、経営層や部門長が主体となり、VoC全体を分析して、製品機能の改修やプロセス変更など構造的な課題解決を目指します 。

Q: クローズドループを成功させるために、特に乗り越えるべき課題は何ですか?

  • A: 多くの企業が直面する課題として、「フィードバックが特定の部署で滞留するVoCの放置」、「顧客の問題が複数の部門にまたがる際の部門間の連携不足」、「個別対応が単なる対応件数をこなす**『作業』化**」の3つが挙げられます 。これらを乗り越えるには、経営層のコミットメントや全社的な顧客ファーストのマインド醸成が不可欠です 。

Q: クローズドループを運用することで得られる具体的な効果は何ですか?

  • A: 短期的には、顧客解約率(チャーン率)の低下や、批判者が推奨者に変わることによるロイヤルティの修復が期待できます 。長期的には、アウターループによる根本的なCX改善を通じて、NPS全体スコアの上昇事業成長率の向上に繋がります 。

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