エモーションテック 編集部
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目次
カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスとは、その言葉が示すように顧客を成功に導くためのサポート業務です。実際に自社の商品を購入・契約した顧客に対して、企業側から、顧客が実現したいと思っていることのサポートを積極的に働きかけます。
従来の顧客対応は、顧客からの問い合わせやクレームに対して解決を目指すものでした。そのため企業から積極的に顧客に働きかけはせず、カスタマーサポートやお客様窓口の業務はあくまでも受け身というのが基本だったのです。しかしカスタマーサクセスの登場により、顧客対応の概念は大きく変化し始めました。
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カスタマーサクセスの役割
カスタマーサクセスの役割はさまざまですが、主なものとして次の2点が挙げられます。
1.顧客を成功させ解約を防止
BtoBでいえば、自社のツールやサービスを活用してビジネスを成功させるための効果的な利用法やカスタマイズのアドバイスです。BtoCでは、サブスクリプションサービスで新たな機能が追加された際に告知したりおすすめの使い方についてアドバイスを行ったりして、継続的な利用を促します。
どういった商品・サービスを提供しているかによって多少の違いはありますが、どちらにしろ目的は、「顧客に自社の商品・サービスが使いやすい」「競合よりも優れていると認識してもらう」こと。その目的のもと、長期的に利用してもらえるよう働きかけるのが、カスタマーサクセスの役割なのです。
2.顧客ニーズを吸い上げ、商品、サービスを改善する
カスタマーサクセスのもう一つの重要な業務は、顧客ニーズの吸い上げです。実際に商品・サービスを利用している顧客にアンケートを取ったり電話やメールなどでインタビューをしたりします。そしてその結果を分析して、商品・サービスの改善を行うのです。
「顧客の声を参考に改善し、新たな商品、サービスをリリース」「その後、再び顧客にアンケートやインタビューを行い、分析、改善」というPDCAを回すうえで、カスタマーサクセスは重要な役割を果たします。
カスタマーサクセス誕生の背景
これまで企業は、顧客からの問い合わせやクレームに対して、顧客が抱える問題の解決や不具合の改善などを受け身で対応して実現していました。そこからどうして企業側から積極的に問題解決に関わっていくカスタマーサクセスが登場したのでしょうか。その背景には次のような点があります。
クラウドコンピューティングとSaaSの誕生
従来、多くの企業はサーバーを自社内に設置し、ITツールは自社のパソコンにインストールする形で利用していました。いわゆるオンプレミスです。その後2000年代に入り、クラウドコンピューティング(インターネット上でソフトウェアやアプリケーション、インフラを提供するサービス)とSaaS(インターネットを経由してソフトウェアを提供するサービス)が誕生しました。
これにより、サーバーやITツールを自社内ではなく、インターネット経由のクラウド上から利用する企業が増加したのです。
サブスクリプションビジネスの台頭
SaaSの台頭により、オンラインストレージ、グループウェア、会計ソフト、営業・販売管理など社内のあらゆるITツールやソフトウェアでクラウドを利用する企業が増加しています。SaaSのビジネスモデルは基本的にサブスクリプションで、買い切りではなく、利用量に応じて課金されるタイプです。
またBtoCでも音楽、動画、車など多くのサブスクリプションサービスが登場。これにより、BtoBやBtoCに関わらず、購入ではなく利用といった形に顧客のマインドは変化してきています。
サブスクリプションサービスの解約(チャーン)抑止における重要度の高まり
サブスクリプションサービスの特性は、毎月の利用料が安く抑えられ、購入しなくても気軽に利用できる点にあります。しかし利用してもらえる機会が増えても、利用料は低額のため、短期で解約されてしまうとビジネスとして成り立ちません。そこで、できるだけ長期に利用してもらう必要があるのです。
長期に利用してもらうには、常に良質なサービスの提供を行い、顧客の成功に寄与しなくてはなりません。その流れから、顧客からの問い合わせを待つカスタマーサポートではなく、企業から積極的に顧客に関与していく必要が生じました。カスタマーサクセスはそうした背景のなかで必然的に誕生したのです。
CX向上による顧客ロイヤルティの向上が不可欠な時代に
カスタマーサクセスの役割として、解約率の低下や顧客ニーズの吸い上げがあると前述しましたが、これらを地道に行うことで実現するのが顧客ロイヤルティの向上です。顧客ロイヤルティとは、顧客が商品やサービス、企業そのものに対して持つ「信頼」や「愛着」のことです。
サブスクリプションサービスを継続利用してもらうには、商品やサービスへの、「信頼」「愛着」を高めなければなりません。そのために必要なのは、顧客に良質な体験(CX=カスタマーエクスペリエンス)を提供することです。
ただし、良質な体験はあくまでも顧客視点に基づかなくてはなりません。例えば、顧客が求めていない新商品の情報をメールでお知らせしたり顧客の成功に必要のないカスタマイズのアドバイスをしたりなどは、企業視点に基づくものであり、顧客の視点に立ったものとはいえないのです。
現在、多くの業種で市場の成熟化、商品のコモディティ化が進んでいるため、顧客は少しでも気に入らない点があれば、すぐに競合の商品・サービスに移行してしまいます。これを避けるには、企業視点ではなく、常に顧客視点を意識した良質な体験の提供が欠かせないのです。
常に顧客視点で良質な体験を提供できれば、CXが向上し、それが顧客ロイヤルティの向上へとつながります。顧客ロイヤルティの高い顧客が増えれば増えるほど、商品・サービスの解約率も減少するでしょう。
下記2つはどちらもカスタマーサクセスの重要な業務となります。忠実に実行すれば、顧客はそれを良質な体験(CX)として受け取り、顧客ロイヤルティが向上するのです。
1.顧客のニーズを収集・分析し、顧客がどこに課題を抱えて自社商品を利用しているのか、自社商品のどこに不満を感じているのかを把握する
2.把握した内容をもとに、顧客一人ひとりに対してアドバイスや情報を最適なタイミングで提供する
関連記事:
企業の継続的な成長に顧客ロイヤルティ向上が不可欠な理由
カスタマーサクセス(組織)の作り方
顧客の新たな消費行動に合わせた対応を可能にするカスタマーサクセス。しかし、カスタマーサポートの名称を変えるという単純な方法では、カスタマーサクセスとしての効果は得られません。ではどうしたらよいのでしょうか。ここでは、カスタマーサクセス(組織)の作り方についてポイントを説明します。
カスタマージャーニーマップの作成
まずやるべきは顧客の理解です。自社の商品・サービスを利用している顧客をしっかりと理解できなければ、何に課題を感じ、何を成功と考えているのかが見えず、企業側から顧客に関与しても的外れなものになってしまうでしょう。そこで、顧客理解を深めるためにカスタマージャーニーマップを作成します。作成方法は次のとおりです。
ペルソナの設定
最初に自社の商品・サービスを利用している顧客の具体像を共有するため、ペルソナを設定します。ペルソナとは、自社のビジネスの対象となる人物を象徴化したものです。その際、「男性」「会社員」といった抽象的な「群」ではなく、人格や生活スタイルまでできるだけ細かく具体的に設定します。
設定したペルソナの行動をいくつかに分解、整理する
ペルソナが自社の商品・サービスを認知し、購入や更新をしていくまでの行動をいくつかのフェーズに分解して整理します。例えば、「無関心」「興味・関心」「情報収集」「比較・検討」「契約(購入)」「更新(再購入)」などです。
企業とペルソナとのタッチポイントの洗い出し
分解したそれぞれのフェーズのなかで、企業はペルソナとどういった接点を持てるのかを洗い出します。例えば「無関心」のフェーズではテレビCMやSNSでの告知、「比較・検討」のフェーズでは営業担当者やオウンドメディアの情報発信などになるでしょう。
ペルソナの感情や思考の推測
ペルソナがそれぞれのフェーズで何を考えているのかを推測します。次のフェーズに進むための障壁となる理由を洗い出し、それぞれのフェーズに記載すれば、カスタマージャーニーマップの完成です。
顧客の成功を定義し、自社の目的を明確にする
作成したカスタマージャーニーマップをもとに、自社にとって顧客の成功とは何を示すのかを定義します。そのうえで、「解約率を下げたい」「アップセル(顧客の利用単価の向上)につなげたい」「顧客満足度を向上させたい」など、顧客の成功を実現することで自社として何を得たいかを、明確にするのです。
カスタマーサクセス業務を行う人材を集める
顧客の成功と自社の目的が明確になったら、カスタマーサクセス業務を行う人材を集めます。
カスタマーサクセスの業務では、商品・サービス知識が豊富かつ、顧客対応に優れているのが第一条件となります。それだけでなく、「営業力」「商品開発にたけている」「マーケティング戦略が得意」「マネジメント能力」など、さまざまな専門知識を持った人材が必要です。自社の目的に合わせ、適した人材を集めていきます。
カスタマーサクセスのKPI
カスタマーサクセス業務を行うための組織作りが完了したら、次に行うのはカスタマーサクセスのKPI(目標をどれだけ達成したかを測る指標)設定です。企業によって「解約率を下げる」「アップセルにつなげる」など目的はさまざまでしょう。
しかし共通しているのは顧客LTV(ライフタイムバリュー)の最大化で、この顧客LTVの最大化がカスタマーサクセスのKPIの一つになります。具体的な計算式は、次のようなものがあります。
LTV = (平均購入単価)×(年間平均購入頻度)×(粗利率)/(年間解約(チャーン)レート)
顧客LTVを最大化させるためのポイント
顧客LTVを最大化させるためには、次の2点に注意する必要があります。
1.定期的に顧客の状態を把握(計測)する
例えば、「平均購入単価の下落」「解約率の増加」などが起こっていないかを定期的に計測します。もし実際に起きている場合は、何が原因となっているのかを調べ改善策を検討するのです。
特に、「平均より購入単価が高額な層の単価が下落している」「一番高額なプランを契約している」層がまとまって解約している場合、早急な原因究明や改善策の検討が必要でしょう。
2.LTV最大化に大きな影響を与える変数の改善
顧客LTVの最大化に影響を与える変数は、「平均購入単価」「年間平均購入頻度」「年間解約レート」ですが、なかでも重要なのは、「平均購入単価」「年間解約レート」です。この2つの変数を意識すれば、おのずと顧客LTVが最大化しますが、具体的には次のような施策が考えられます。
平均購入単価の向上施策
平均購入単価を向上させるための施策としては、アップセルやクロスセルが考えられます。アップセルとは、現在利用している、商品もしくは契約しているサービスよりも高額な上位モデルへの移行です。クロスセルは、ある商品の購入を検討している顧客に追加で別の商品やサービスを購入・契約してもらうものとなります。
年間解約率の低減施策
解約率を低減する施策として考えられるのは、顧客に対する定期的なコンタクト、サービスのアップデートです。購入・契約後のフォローを一切しないようでは、顧客が競合に流れてしまうかもしれません。常にサービスをアップデートしつつ、電話やメールなどで定期的にコンタクトを取り続けることが、解約率低減につながるでしょう。
カスタマーサクセスのもう一つのKPIとなるNPS®
顧客LTVの最大化は、カスタマーサクセスの重要なKPIとなりますが、顧客LTVを向上させるだけでは顧客ロイヤルティは高まりません。顧客ロイヤルティを高めるには、「自社の商品・サービスを家族や友人に勧めたい」と思う顧客を増やす必要があるのです。
つまり顧客LTVの向上に加え、顧客ロイヤルティの向上もカスタマーサクセスの重要なKPIとなります。そして、顧客ロイヤルティ向上を測るKPIがNPS(ネットプロモータースコア)です。
NPSとは、自社の商品・サービスを家族や友人にどの程度勧めたいかを0~10の11段階で評価してもらうものです。0~6は批判者、7と8が中立者、9と10が推奨者となり、推奨者の割合から批判者の割合を引くと算出できます。例えば推奨者が60%、批判者が20%の場合、40がNPSの数値となるのです。
カスタマーサクセスとしてNPSの計測を定期的に行い、批判者が増えたらその都度、原因を探り改善していくと、自社の商品・サービスに強い愛着を持つ顧客ロイヤルティを高められるでしょう。
関連記事:
NPS®とは?顧客満足度との違い・質問方法・事例まで詳しく解説!
カスタマーサクセス事例
実際にカスタマーサクセスを設置し、成功した事例を2つ紹介します。
顧客のライフスタイルを分析して新規加入や継続利用を増加
動画ストリーミング配信によるサブスクリプションビジネスを行っているNetflix株式会社を見ていきましょう。提供しているサービスであるNetflixには無料お試し期間が存在するため、顧客は気軽に利用を始められます。さらに利用中はオリジナルを含めた多くのコンテンツが視聴できるのです。
またNetflixには3つのプランが用意されており、上位プランになるほど同時に視聴できる画面が1、2、4と増えていきます。そのため家族内で個々に契約せずとも、同時に別々の動画を楽しめるようになりました。こうした企業努力が新規加入および継続利用につながりました。その背景にあるのが、カスタマーサクセスが行ったライフスタイルの分析なのです。
日本におけるカスタマーサクセスの先駆け
顧客を一元管理するプラットフォームを提供する株式会社セールスフォース・ドットコムは、2005年頃よりカスタマーサクセスを提唱している日本のカスタマーサクセスの先駆けともいえる企業です。
● 顧客は好きなチャネルから好きなように企業へ連絡できる
● 顧客は情報がまとまったページから適切な情報を見つけ出せる
など、顧客に沿った機能を幅広く提供し、カスタマーサクセスの成功に貢献しています。
カスタマーサクセスを成功させるポイントは「自社のゴール設定」と「顧客との関係性強化」にあり
カスタマーサクセスという以上、顧客の成功を第一義にするのは当然ですが、それと同等に重要なポイントとなるのが、自社のゴール設定です。顧客の成功を実現させることで、自社はどういったゴールを目指すのかを明確にしなければ、顧客の成功と自社の成功は結び付きません。
またカスタマーサクセスを成功させるもう一つのポイントは、顧客との関係性強化です。サブスクリプション型のビジネスモデルで利益を上げるには、顧客との間に長期的な関係をつくる必要があります。
さらにその際、顧客を成功させるだけではなく、常に良質な体験を提供し、顧客ロイヤルティ向上を実現していかなくてはなりません。そのためにも、常に顧客の意見に耳を傾けましょう。それが顧客との良好な関係作りにつながります。
参考:
◆ カスタマージャーニーマップを活用したNPS®調査と顧客体験改善取り組みのすすめ|Emotion Tech
◆ アップセル・クロスセルとは?顧客単価を向上させる方法と事例|Emotion Tech
◆ 従来の顧客ロイヤルティ指標の限界、そして新たな指標となりうるNPS®の概要と活用方法|Emotion Tech
◆ 自社の成功はクライアントの成功から!カスタマーサクセスという発想 |Salesforce
◆ サブスクリプションにおけるカスタマーサクセスの重要性を徹底解説 |CXin
◆ セールスフォース・ドットコムが唱えるカスタマーサクセスとは? 20年実践中のパイオニア企業が大切にしていること |ITreview
◆ 世界中のユーザーが意見を交わし、製品改善を提案―― セールスフォース・ドットコムが膨大な顧客の声を拾い上げる仕組みを明かす |ITreview
◆ 顧客の条件やスケジュール、チャネルに合わせてスマートなサポートを提供|Salesforce◆ セルフサービスポータルとコミュニティを構築して、顧客一人ひとりのニーズに合ったサポートで顧客満足度アップ|Salesforce
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