【国内】NPSを活用する企業事例8選!取り組みのポイントも解説 | 株式会社エモーションテック

【国内】NPSを活用する企業事例8選!取り組みのポイントも解説

更新日:2024.08.01

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エモーションテック 編集部

NPS活用やCX向上のためのお役立ち情報を発信しています。

顧客ロイヤルティを測る指標であるNPS®︎(Net Promoter Score)は、日本国内企業においても徐々に浸透が進んできており、指標として採用されているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

NPSデータを正しく活用し、成果を生み出すためには、同じ業界や似たような課題をもつ企業がどのようにNPSを活用しているか、その実践例を知ることも重要なポイントです。

そこで今回は、実際にNPS®︎を指標として活用し、顧客体験価値(CX)の向上に取り組んでいる企業とその実践例をまとめました。
CX向上の取り組みを考える一助として、NPS活用のイメージを掴んでいただければ幸いです。

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NPS®︎とは?

NPS®︎(Net Promoter Score)とは、企業に対する信頼や愛着の度合い(顧客ロイヤルティ)を数値化する指標です。

NPSを調査するには、まず「あなたは商品やサービスを親しい友人や知人に、どの程度おすすめしたいと思いますか?」という質問を行います。
そして、0〜6点を付けた人を「批判者」、7〜8点を付けた人を「中立者」、9〜10点を付けた人を「推奨者」と分類し、「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いた数値がNPSです。

関連記事:
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楽天グループの事例

楽天グループは、NPS®︎を成長戦略の重要なKPIとして位置付けています。
NPSの導入理由は、「楽天市場」創業後、2014年に今まで順調に伸びていた新規利用者数が増えなくなってしまったことにあります。分析の結果から、顧客との関係性にさらなる改善の余地があると考え、NPSを新たな重要KPIの一つとして採用しました。

楽天グループでは、顧客を基点とした事業戦略を推進する部署として「顧客戦略部」を設置しています。

またNPS向上の推進施策の一環として、NPS推進室が新設され、顧客理解を促進するための研修が各事業部で行われました。
楽天では、事業部門だけでなく、開発部門でもNPSを指標として採用し、全ての事業で顧客目線での開発を実施しています。

同社は顧客志向の浸透に力を入れており、全ての従業員が参加する朝会で、顧客の声を共有する場を設けています。また、各事業所内にNPSの向上に責任を持つNPSマネージャーを配置し、サービスを横断した知見の共有がなされています。

NPS導入以前に行われていた短期的な売上を重視したサービス改善や開発だけではなく、顧客目線に立った施策が行われるようになりました。メールマガジンの改善や、検索機能の改善、送料無料ラインの導入などの様々な改善施策が実施されています。
成果が出ている取り組みに対しては、他のサービスにも横展開され、広がりが生まれています。

徹底的に顧客の声に向き合い、2022年第4四半期のスコアは競合他社と比較して7.9ポイント差で上回る結果となっています。

NPSスコア推移
画像出典:Empowering All Stakeholders.コーポレートレポート2022

2023年第1四半期決算資料において、「楽天エコシステム(経済圏)」のNPSと、ユーザーから特に評価を得ている体験を公開しています。
楽天グループのNPSは、競合の経済圏のNPSよりも高いスコアを得ていることがわかります。

携帯キャリア各社のNPS比較
画像出典:2023年度第1四半期決算説明会 CEOグループ戦略

2022年にはEC業界におけるNPSランキングで1位を獲得しました。

参考元:株式会社楽天グループ 顧客満足を推進する全社KPI設計

楽天グループの取り組みのポイント

  • 朝会の場を利用して顧客の声を共有し、全社で取り組む文化の醸成
  • 各事業所内に、 NPS向上の責任者を配置し、サービス横断で知見を共有
  • 各現場の成果を共有し、良い改善事例は他のサービスに横展開する

ポーラ・オルビスグループの事例

ポーラやオルビスなどの化粧品ブランドの展開、製造・販売を手がけるポーラ・オルビスグループでも、アンケートによるNPS調査をもとに、お客様の声を事業に反映する取り組みを行っています。

アンケートでは、NPSに対して、どのタッチポイントがどのような印象を与えているのかについて定常的に調査を行っています。
調査結果を基に接客を改善することで、リピート率が向上するなどの成果に結びついています。

オルビスでは、開業当初からお問い合わせとして届く顧客の声を「知恵の泉」と呼び、顧客との関係性を重視してきました。

これをデジタル化させた「CHIEIZU」という情報共有システムを構築し、お問い合わせや、SNS、商品へのクチコミ、顧客満足度アンケートなどのテキストデータを集約しています。
これらのテキストデータと、自社が保有する定量データを組み合わせて分析まで行います。
このデータベースには全ての社員がアクセスでき、タイムリーに顧客の声に対応することができるようになっています。

また、顧客の声を聞く取り組みとして「Kiku labo」という会員制のアンケートサイトを提供し、顧客参加型のコミュニティを形成しています。アンケートの結果は、事業開発に活かされています。

参考元:ポーラ・オルビス ホールディングス:サステナビリティ

ポーラ・オルビスグループの取り組みのポイント

  • 定常的にNPSに影響する体験を10項目で調査し、接客を改善
  • 自社開発の情報共有システムで、顧客の声に関する情報を集約
  • 顧客参加型の商品・サービス開発サイトでアンケートコンテンツを提供

富士通株式会社の事例

電子デバイスの製造・販売やITサービスの提供を行い、トップクラスの実績を誇る富士通株式会社でも、NPSが活用されています。
富士通は非財務指標と財務指標の両軸で経営指標を定めています。
NPSは非財務指標として位置付けられ、財務指標との相関を検証しながら経営判断に活かしています。

2020年からは30カ国共通の質問でアンケート調査を実施し、世界中の顧客の声を横断して分析・共有しています。今まで各国で個別に行っていた調査をグローバルで統合することで、グループ全体の経営判断に活用できるようにしています。

グローバルNPS調査ロードマップ
画像出典:フジトラニュース:お客様や従業員の「声」を新たな経営指標に、VOICEプログラムの取り組みとは

改善活動をリードするCXリーダーは世界の各地域で任命し、グローバルに組織化しています。他の地域においても有益な情報は共有されるようになっています。
また、四半期ごとに各地域の事業責任者が集い、経営課題として取り上げ、改善アクションの提案から効果検証までを一貫して行っています。

経営計画
画像出典:株式会社富士通 中期経営計画について

2023年の中期経営計画によると、2021年には+2.3ポイント、2022年には+18.1ポイントのNPS向上を達成しています。
2025年には、2022年度比較で20ポイント向上させることを目標として掲げています。

参考元:フジトラニュース お客様や従業員の「声」を新たな経営指標に、VOICEプログラムの取り組みとは

富士通株式会社の取り組みのポイント

  • CX調査とEX調査を行い、課題を解析する
  • 現場レベルではCXリーダーを地域ごとに任命し、顧客課題を解決
  • 30カ国共通のNPS調査を実施し、グローバル化

第一生命ホールディングスの事例

第一生命ホールディングスは、顧客体験を向上させることを目的とした「CXデザイン戦略」を構築しています。
コロナ渦での顧客の価値観や行動様式の変化により、「顧客目線」での価値観の変革が求められていました。
2018年には、従来から実施していた「お客さま満足度調査」に変わって、より踏み込んだ「推奨度」を計測するNPSを導入し、国内事業におけるグループ重要経営指標の一つとして位置付けています。

顧客の声に真摯に耳を傾ける文化の定着を目指し、顧客目線での事業運営を目指しています。
2026年度には第一生命のNPS®️を国内トップ水準へ、国内全体の顧客数は約1,000万人まで伸ばすことを目標値としています。
今後は第一生命単体のみではなく、NPSの計測を国内グループ各社にも拡大させていく予定です。

NPSスコアの公開と導入理由
画像出典:第一生命グループ 2021-23年度中期経営計画

同社が行っているNPS調査は以下の3種類です。

  • 定常的な調査を行う 自社NPS調査(接点)
  • 年一度の総合的な評価を取得する 自社NPS調査(総合)
  • 年一度の外部調査機関による 他社比較NPS調査

自社NPS調査(接点)では、日常のWEBアンケートでのフィードバック取得による業務改善を行っています。契約時やお手続き時の体験、担当者の対応など、顧客接点ごとの満足度を計測し、担当者へ個別のフィードバックを行っています。
自社NPS®調査(総合)でも年に一度、顧客体験向上の取り組みの効果測定を行い、次の施策の検討をします。

2つの自社調査を組み合わせることで、課題の深掘りと改善アクションのPDCAサイクルを回し、持続的な顧客ロイヤルティの向上を実現しています。

また他社比較NPS調査では、外部の調査機関を通じて、他社との比較による、客観的な課題の抽出を行っています。
これらの調査結果を活かした取り組みは、毎年レポートとしてホームページ上で公表されています。

NPS調査構造
画像出典:消費者志向経営 お客さまの声を活かした取組み レポート2022

参考元:第一生命ホールディングス お客さま満足の向上

第一生命ホールディングスの取り組みのポイント

  • 他社と比較したNPS調査も実施し、客観的に課題を抽出
  • 年一回の総合NPS調査と毎日の定常的な調査を組み合わせる
  • 取り組み結果をレポートとして公開

アップル引越しセンターの事例

アップル引越しセンターは、2016年にWEBで見積りと引越し予予約が完結するサービス「ラクニコス」を提供し、デジタルを通した顧客体験の向上にも取り組んでいます。

同社は「NPS経営」を掲げており、 NPSスコアと全てのアンケート内容をホームページ上で公開しています。67.5というかなり高いスコアとなっており、推奨度の点数分布やコメントの内容まで公表しています。

アップル引越しセンターのNPSスコア
画像出典:https://apple-hikkoshi.jp/npsex/

アンケート結果は、CSアンケート専門チームにてデータ化して集計し、社内SNSでも公開されます。部署や役職の垣根なく、全ての社員が閲覧できるようになっています。

また、人事評価にもNPSが活用されています。全社・支社別・職種別・スタッフ別に、それぞれの目標スコアを設定しており、達成度を計測しています。
また同社は、従業員がやりがいを持ち仕事に取り組むことによって、顧客体験を向上させるモチベーションにつながる好循環を生むと考え、ES(従業員満足度)の向上にも取り組んでいます。

顧客満足と従業員満足の好循環
画像出典:アップル引越しセンター NPS®経営 部署・人事評価制度

参考元:アップル引越しセンター NPS®経営とは

アップル引越しセンターの取り組みのポイント

  • 従業員評価の最重要指標としてNPSを導入
  • 全社・支社別・職種別・スタッフ別に目標スコアを設定し、達成度を計測
  • アンケート結果は全員に共有し、改善を行う

ヤマト運輸の事例

大手運送会社のヤマト運輸では、データ・ドリブン経営を推進しており「データ活用」と「お客さまドリブン」を軸に、品質のマネジメントを実践しています。
顧客起点で課題を解決する取り組みの一環として、NPSの計測があります。
個人・法人の顧客を対象に、「自社に関すること・競合比較・世の中の当たり前」の3つの視点を軸として調査を行っています。

また、電話やメール、チャットを通じた顧客からのお問い合わせ、直接いただく声やデジタルログなど>VoCデータを集め、データベースを構築しています。
これらのデータはBIツールを活用して分析を行い、現状把握と改善すべき事項の明確化に繋げています。

また、経営層を中心として「お客様と向き合う会議」を実施しています。
この会議では、VoCデータを元に、顧客体験の向上を目的とした施策の策定と、優先順位づけを行っています。
顧客体験や利便性を向上させるための取り組みは、ホームページ上で発信されています。

参考元:ヤマトホールディングス 統合レポート2022

ヤマト運輸の取り組みのポイント

  • 経営層を中心に「お客様と向き合う会議」でCX向上に向けた施策の策定と優先順位づけを行う
  • VOCデータベースを構築し、顧客の声を一元化
  • 改善アクションの取り組みをホームページ上で公開

ヤマト運輸の品質マネジメント
画像出典:ヤマトホールディングス 統合レポート2022

コニカミノルタグループの事例

コニカミノルタ株式会社では、グループ全体で「カスタマーリレーションシップ」の強化を図っています。
その目標指標としてNPSを導入したのは2012年のことです。
2017年には顧客接点ごとのNPSを調査する「トランザクション(トランザクショナル調査)」を導入しました。
2020年にはNPS調査を起点とした改善アクションプログラムをスタートさせ、一人ひとりの顧客の声をリアルタイムに把握し、迅速にサポートを行っています。
情報機器事業では2022年以降、日本、米国、欧州、アジアなど、24カ国の地域でCX改善に取り組んでいます。

また、NPSだけではなく「当社の製品・サービスを使い続けたいかどうか」という継続意向を設問設計に加えて独自の調査を行っています。この評価は週単位で集計・分析され、翌週の販売活動に活かされています。

各年度ごとのNPS推移はホームページ上で公開されています。

コニカミノルタグループのNPS推移
画像出典:コニカミノルタについて 顧客満足向上と製品安全 新たな品質価値の創出

参考元:コニカミノルタについて 顧客満足向上と製品安全 新たな品質価値の創出

コニカミノルタグループの取り組みのポイント

  • 情報機器事業ではNPS調査をグローバルで実施
  • 「当社の製品・サービスを使い続けたいかどうか」という設問の調査も実施
  • 顧客接点に注目した評価やご要望をリアルタイムに把握し、迅速に改善

大和証券グループの事例

大和証券グループでは「お客様第一の業務運営」の実現状況を計測するために、2018年よりNPSを導入しています。

同社では「NPS推進部」を中心に、顧客からのフィードバックを集約・分析を行い、店舗での営業品質の向上と本社での商品・サービスの改善の両軸でCX向上に取り組む体制を構築しています。
また、NPS向上の最高責任者として「CCO(Chief Customer Officer: 最高お客様満足度責任者)」を設置しています。

大和証券グループの調査
画像出典:お客様第一の業務運営を実現するための取組事例

顧客志向の企業文化を定着させるために、以下のような「NPS行動指針」を策定し、担当者の行動の規範としています。
NPS行動指針
画像出典:お客様第一の業務運営を実現するための取組事例

このような取り組みの結果、大和証券グループではNPSスコアが改善するとともに、紹介による新規口座開設実績の比率が向上しています。

NPSと紹介率の推移
画像出典:お客様第一の業務運営を実現するための取組事例

また、「新中期経営計画」では、NPSの向上に伴って、法人顧客の紹介による開拓件数が増加するなどの成果が発表されています。
個人や個人事業主を対象とするリテール部門ではNPSの推移を公開しています。
NPSと収益指標(顧客ひとり当たりの手数料)との関連性の検証結果や、取り組みの進展度合いも公開しており、NPS向上が業績向上に寄与していることを示しています。

大和証券グループのNPS向上に向けた取り組み
画像出典:2021年度経営戦略説明会新中期経営計画”Passion for the Best“ 2023

参考元:お客様第一の業務運営を実現するための取組事例お客様第一の業務運営に関する取組みと大和版NPSの導入

大和証券グループの取り組みのポイント

  • NPSをドライバーとした持続的な取り組みの継続
  • コンタクトセンター・お客様相談センターでの定期的な研修を実施
  • 「NPS行動指針」の策定による浸透施策

NPS活用のポイントを押さえて成果に繋げましょう

国内の企業において、NPS®︎がどのように活用されているかについてご紹介してきました。
顧客体験を向上させるには、NPSをただ計測するだけではなく、顧客体験ごとの評価を正しく捉え、組織全体で改善施策に取り組むことが重要です。
また、全社でCX向上施策を行っていくためには、専任の担当者を設けたり、顧客と接点をもつ担当者に定期的にフィードバックを行うことがポイントです。

よくある課題として、「各部署でお客様アンケートの取得状況が違い、データを活用できていない」というご相談をいただくことがあります。
このような場合には、各部署にあるVOCデータを一元集約し、管理していくことも必要でしょう。
また、顧客が求める価値を正しく理解するために、CXに関する研修やワークショップを行うなどの浸透施策も有効です。

エモーションテックでは、NPS®︎をはじめとした顧客満足度の調査・データ分析から改善策のご提案までをトータルでサポートするシステムとコンサルティングサービスを提供しています。
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