BtoB企業のCX推進者に聞く! NPS®で実践する、顧客起点のサービス改善〜社内を巻き込み、やり抜く秘訣とは〜【セミナーレポート】 | 株式会社エモーションテック

BtoB企業のCX推進者に聞く! NPS®で実践する、顧客起点のサービス改善〜社内を巻き込み、やり抜く秘訣とは〜【セミナーレポート】

更新日:2024.11.05

医療機器商社として、90年以上の歴史を持ち、東京・千葉シェアNo.1の株式会社イノメディックスでは、厳しい環境変化の中にある医療機関にさまざまな側面から、より複合的な提案ができるように「EmotionTech CX」を導入し、顧客のフィードバックをもとにサービス改善に取り組んでいます。

SPD事業でのNPS®調査の実施を主導された経営企画室長の山崎 洵様に、BtoB企業ならではの課題、その解決方法についてお話しいただきました。

※本コンテンツは、2024年9月5日に開催したセミナーから抜粋・再構成したものです。(オンデマンド配信はこちら

厳しい状況下で変化していく顧客ニーズを捉えるために導入

弊社は、首都圏の高度急性期病院を中心に、最適な組み合わせで医療機器を提供する医療機器商社です。
近年、さまざまな要因により、医療機器卸売業界ではSPD事業における価格競争が激化しています。SPDとは、Supply Processing and Distributionの頭文字からなる言葉で、医療現場における医療材料の供給、在庫、またリパックなどの流通加工も行い、柔軟かつ円滑に病院の物品管理を一元化する方法のことです。弊社は医療材料を医療現場にとって有益な情報と共に提供し、また特定の手術用セットを組むなど、顧客ニーズに合った最適な組み合わせで提供しております。
病院を取り巻く環境はますます厳しくなっており、SPD事業における価格競争が激化するとともに、医療機関においてはより高度な経営支援を求めてコンサルティング会社と契約をしたり、病院間で密な情報連携をしたりとこれまでにない変化が生まれています。
SPD事業を受託するためには、これまでの事業を見直し、単にコスト削減だけでなく、競合他社と差別化できるよう、病院スタッフの業務改善などさまざまな側面からの複合的な提案を可能にするため顧客ニーズを捉えることが必要だと考え、EmotionTech CXを導入するに至りました。
SPD事業の契約期間は2〜3年。一度契約しても必ず更新の時期がきますので、その中で変化していく顧客ニーズを捉え続けることが大切だと考えています。

社内を巻き込みやり抜くために、NPS®調査実施の必然性や意義、背景を丁寧に説明

実施が決まってすぐに直面した課題が、「対象となるのは誰なのか」という点です。
BtoBにおいては属性とポジションにより体験が大きく異なるため、同じ設問では改善につながる示唆が得られないのではないかと考えました。
弊社の主要顧客は、500床規模の高度急性期病院です。病床に対して約1.5倍の人数の方が働いていらっしゃるので、500床規模となると750名ほどの方が在籍しており、大きな組織体になります。
その中には、医師はもちろん、看護師、事務方とさまざまな属性の方がいらっしゃいますし、同じ属性の中でも医療材料を「使う」方と、「購買の判断をする」方、あるいは「その両方を担う」方がいます。使う方は使い勝手や在庫状況、購買の判断をする方は価格や新たな提案など、気にしているニーズが大きく異なります。

BtoCでは、同じアンケートに対しての回答を一斉に取得したあとに、年齢や性別などの属性によって分析をすることが多いと聞きますが、そもそもの体験が大きく違うBtoBにおいては体験によって設問設計を分けたほうが改善につながる結果が得られるのではないかと考え、体験が異なる属性やポジションはどこなのかを検討し、4種類のアンケートを作成しました。
アンケート作成という調査設計を通じて、一つの医療機関の中にいらっしゃる顧客一人ひとりの体験について考え、改めて自社の事業と顧客への理解が深まりました

実施に際しては、「社内の啓蒙活動」と「顧客への提案」という2つの壁がありました。
アンケートを作成したものの、社内から顧客の声を聞くのが不安だという声があがったのです。
それには、ひとたび顧客の声を聞いたら迅速に対応しないといけないという意識と、実際にどんな声が寄せられ、それにどのように対応したらいいのかがわからないという背景がありました。
反応速度が求められるというのも、BtoBに特徴的かもしれません。

医療機関内にあるSPD倉庫で物品を管理している現場メンバーは、アンケートに回答するお客様と毎日ふれあい、日々求められるさまざまな要望に応えつつ、最適な対応・提案を常に求められています。
その中で、顧客から今までにない要望が寄せられた場合、しっかり対応できるのかと不安になるのは無理もないことです。
みなさん頭では「顧客の声を聞いたほうがいい」と理解しているものの、実施した後の回答・その対応が想像できないことが心理的ハードルになっていました。
そのハードル、不安を取り除くために、「なぜNPSを用いたCX調査が必要なのか、実施の必然性や意義、事業を取り巻く背景」について丁寧に説明をしました。
その上で、プロセスを提示し、顧客対応までさまざまな階層を巻き込んでフォローアップする体制を作ることで理解を得ることができました

「大切なお客様だから声を聞きたい」、業務改善のその先を伝えることが鍵に

いざ実施しようとなった際に浮上したのが、「顧客への説明は、誰が、どのように行うのか」という新たな問題です。
調査実施前に顧客に対しても説明が必要というのも、BtoBならではかもしれません。
丁寧な説明の結果、社内においてNPS調査導入の意義は理解していただけていたものの、実施前ですからどのような回答が得られ、それがどのように自分たちの業務に役立つのかは未知数です。
この段階で通常の業務にONするだけのメリットを感じてもらうのは難しいですし、この取り組みがどの程度事業全体に資するかも明確に説明できませんから、顧客への説明にあたって専任者を作るのも困難でした。
そこで、まずは私自身が説明を担うことにしました。
その際に意識していたのは、今後、NPS調査のメリットを感じ、継続していくとなった場合に向けて、プロセスを構築し、型を残すことです。

また、ご提案においても大きなポイントがありました。
医療機関に向けてアンケートを実施するには、医療機関の窓口の方にも取り組みを理解していただき、その上で組織内でアナウンス・共有していただく必要があります。
私どもが勝手に顧客の組織内でアンケートをばら撒くわけにはいきません。医療機関の窓口の方に「業務改善を目的としたアンケート調査を実施させていただきたい」とお伝えしても、なかなかご了承いただけませんでした。

実施させていただけなかった理由は、日々お忙しい医療機関の皆様にとっていかにメリットがあることかをお伝えしきれていなかったためです。
NPS調査を実施したいのは業務改善をしたいからですが、なぜ業務改善をするのかというと、それは大切なお客様だから、お客様を大切にしたいからです
業務改善という目的までしかお伝えしていないときは実施させてもらえませんでしたが、その業務改善の背景に、お客様を大切にしたいという気持ちがあると伝わったことで、晴れてアンケートを実施させていただけることになりました。

実施のためのご説明を通して、重要なお客様の声を直接聞けたことは、私にとってもよい経験となりましたし、お客様からしても、普段やりとりをしていない部署の責任者が出てきて、声を聞くための取り組みについて説明することは会社への信頼、体験向上につながったのではないかと思います。

「現場と俯瞰」2つの目線から分析し、現場・お客様に丁寧にフィードバック

EmotionTech CXのダッシュボードの分析を見ながら、SPD倉庫で働く現場の目線、そして現場からはすこし離れた俯瞰の目線で次の打ち手を考えました。
打ち手の考案には現場状況への理解、事業内容(事業環境・構造・歴史)の理解、どちらも必要ですが、現場の方は忙しいため、まずは私とSPD事業部の責任者とで俯瞰的に見て、頂いた声をグルーピング・要約し、現場との議論のベースとなる資料を作成しました。

大量の言語データと向き合い、NPSの点数、プラスに影響するコメント、マイナスに影響するコメント、ご要望……と分類・整理していくのは大変でしたが、お客様からの評価、嬉しいご意見も多数あり、やりがいも感じられました。
一方で、やはり改善すべき課題も散見され、実際にお客様の声が聞けるNPS調査は気づきが多いと感じました。厳しいお声もありましたが、お忙しい中でお時間を使ってご回答くださる時点で、期待のあらわれ、伸びしろだと捉えております。
調査の目的は「改善」ですので、結果から見えた課題に対しては、現場の目線でどのような対応策ができるのかを議論することが大切です。現場のさまざまな階層を巻き込み、業務改善のサイクル作りを進めました。

また、この取り組みに協力してくれた社内のみなさんに対しての丁寧なフィードバックも行いました。
厳しいご意見をそのまま伝えると、現場の方にとっては責められているように感じることもありますので、ポジティブな変換をして伝える工夫をしました。加えて、現場の方が大切に向き合っているお客様のことを、私たち経営企画室も大切に考えているということも積極的に伝えました。

今回調査を実施したSPD事業に限らず、今後はさまざまな業界で製品・サービスのコモディティ化は避けられないと考えます。
私たちの業界においては、現時点で競合よりも先んじていても必ず追いつかれる状況ですので、お客様の声を聞き、それを起点に進化する。そのサイクルを始めることが大切だと考えています。
声を聞くというのはお客様の声に右往左往するのではなく、NPS調査を用いて能動的にご意見を捉えて対応することで、お客様にとってのパートナーの立ち位置を確立することを目指すものです。パートナーとしての立ち位置を築くことで、よりお客様の声を捉えやすく、結果的によりニーズに合ったサービスが提供でき、双方にとってプラスに作用していくのではないかと思います。お客様の声の中に次なるチャンスが眠っているのではないでしょうか。

この取り組みを進める中で、現場も経営層も改善に向けて何かしないといけないと危機感を抱いていたことがわかりました。その「何か」に、NPS調査がピッタリはまったものと捉えています。

NPS調査はいかなる製品・サービスにおいても実施できるもので、自社の他事業への拡張性があるとも考えています。他の事業においても「EmotionTech CX」を展開し、稼働率を高め、製品・サービスの質向上を図りたい。
そのためにも今後は、社内でCX戦略の理解者を増やし、推進者を作っていく活動を強化していきたいです。そうして社内でCX戦略の推進者を作ることで、本事業におけるCXマネジメントの推進は、今後は事業部門へと自然にバトンタッチしていけることを目指しています。


セミナーでは、視聴者からのご質問にもお答えいただきました。CX推進にあたっての社内外での課題にお悩みの方は、ぜひオンデマンド配信をご覧ください。

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