
顧客満足度調査でよく陥りがちな失敗
顧客満足度調査は導入コストが低いこともあり、多くの企業で長年活用されています。
しかし、せっかく調査を行ってもそれを改善施策まで落とし込めている企業は稀です。
漠然と顧客満足度調査を行うことでよく出てくる悩みとしては、以下のようなものがあります。
・長年の顧客満足度調査では高得点が続いており、これ以上何をしたらお客さんに期待以上の体験を届けることができるかわからない
・満足度調査をしたものの、優先的に解決すべき課題が特定できない
・施策を打っても満足度の数値が変動せず、何が顧客満足度に影響しているのかわからない
・できればポジティブな口コミを広めてほしいが、実際に口コミにつながっているのかがわからない
・満足度を向上させることがどの程度収益につながっているのかわからず、いまいち調査の意義を感じない
ではこのような状態に陥らないためには、どういったポイントに気を付けるべきなのでしょうか?
顧客満足度調査を改善施策までつなげるためのポイント
施策まで落とし込むためには、誰に何をしたら満足度が向上するかを明確にする必要があります。
満足度調査の結果を集計するだけでなく、具体的な改善施策までつなげるポイントとしては、下記の4点があげられます。
1,調査の目的を明確にする
大前提として、何に関する評価を調査してどのように活用するか、明確なビジョンを持っておく必要があります。
なぜなら、商品や営業担当者、キャンペーンなどすべての満足度を調査しようとしたり、調査の結果をどの部署で何のために活用するかが決まっていないと、調査すべき質問が漏れてしまい、施策を検討するための具体的な課題を見つけられないことに加え、調査に基づいた施策の検討も難しくなるからです。
2,満足度に影響を与える可能性がある要素についての評価もとる
満足度調査を行う際には単純に満足度の評価だけを集めるのではなく、満足度に影響を与えうる要因に関しても調査を行いましょう。
調査を施策まで落とし込むためには、満足度が高かった、または低かったという情報に加え、なぜそうなったかを探る必要があるからです。
そのためには、満足度に影響を与えうる要因についても調査し、どの要素が満足度と連動して動くか見ていく必要があります。
3,セグメントを分けるための質問を入れておく
具体的な施策を検討するためには、満足度が高いセグメント、低いセグメントを把握し、各グループごとの特徴を調べる必要があります。
したがって、質問設計の段階で、購入頻度や利用頻度などの収益性に関する指標や、地域、性別、家族構成などの属性質問を混ぜておくと、個別に具体的なアプローチが可能になります。
4,コメントの数ではなく、影響の大きさに着目する
データが十分集まったらそれを集計するだけにとどまらず、相関分析や重回帰分析などを用いて満足度の点数に何が影響しているか、定量的に分析することをお勧めします。
一般的な顧客満足度の分析方法として、低い点数をつけた人のコメント欄に記載されている事項を集計して、言及されている数が多いものから改善に取り掛かるという手法を用いることがあります。
しかし、このような方法で見出したポイントを改善した場合、顧客の不満を改善するために手は打っているものの、一向に満足度が改善しないという問題がよく発生します。
なぜなら、コメント欄に記載されている意見は往々にして不満を述べているだけで満足度の上下には関係がない場合が多いからです。
実際に重回帰分析をすると、それまで全く手を付けていなかったが実は重要なポイントが見つかることが多々あります。
顧客満足度調査の限界
すでに幅広く活用されている顧客満足度調査ですが、顧客満足度が万能な指標というわけではありません。
というのも、顧客満足度は収益性との相関がみられないことに加え、質問の性質上クチコミの発生可能性まで評価することができないという限界があります。
ある調査では、離反客のうち80%が直前の顧客満足度調査で「満足している」と答えていたとする調査結果もあります。
実際に、アメリカのゼネラルモーターズはJDパワーが公表する顧客満足度調査で2000年代に多くの賞を受賞したにもかかわらず、ビジネス面では社債格付けが投資不適格に引き下げられるというケースがありました。
したがって、いくら満足度調査を慎重に行い満足度を向上させる施策を実施したとしても、売上につながるとは限らないのです。
こういった問題点を修正し、収益性と連動するだけでなく口コミの発生可能性も織り込んだ指標が2003年にハーバードビジネスレビューで発表されたNPS®(ネット・プロモーター・スコア)という指標です。
NPS®とは?
NPS®とはNet Promoter Scoreの略で、2003年にアメリカの大手コンサルティング会社であるベイン・アンド・カンパニー社のフレドリック・F・ライクヘルド氏がハーバード・ビジネス・レビューで発表し、GEやアップル、レゴなど様々な企業がその有効性を証明したことで、急速に広がっていきました。
現在でも、NPS®はアメリカの売上上位企業(フォーチュン500)のうち3分の1以上が活用していると言われており、例えばアメリカンエクスプレスやP&G、グーグルもこの指標を活用してサービスに対するロイヤルティを計測し、日々サービスの改善に務めています。
NPS®算出方法
NPS®を計測するためには、「あなたは○○を友人にすすめたいと思いますか?」と質問し、0〜10点で評価してもらいます。
その中で0〜6点を付けた人を「批判者」、7・8点を付けた人を「中立者」、9・10点を付けた人を「推奨者」と分類します。
NPS®は「推奨者」の割合(仮に45%)から「批判者」の割合(仮に20%)を引いた数値(45%-20%=25%)のことを指します。(つまり、推奨者が増えるほど数値が高くなり、批判者が減るほど数値が高くなるように設計されています。)
NPS®について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください
【徹底解説】ロイヤルティを可視化するNPS®とは?
NPS®で得られるインサイト
1,売上向上につながる改善点がわかる
上述の通りNPS®の最大の特徴は収益性と相関があることです。
したがって、NPS®を向上させることは顧客からのロイヤルティと収益性の両方を改善することになります。
こちらの『大手生命保険会社のモデルケース』で詳しく解説していますが、カスタマージャーニーマップと組み合わせてNPS®を活用することで、リソースを投下すべき改善点を明らかにすることができます。
2,口コミの発生可能性を計測できる
NPS®のもう一つの大きな特徴としては口コミがどの程度広がる可能性があるかを評価できるところにあります。
詳細については『新規顧客を獲得するためのただ一つの方法』という記事で解説していますが、過去のEC、スポーツメーカー、通信業界などの調査では推奨者は批判者に比べ実際に口コミを行った人の割合が2~5倍になることが示されました。
3,ロイヤルティが高く高収益な顧客を創出できる
改めて説明すると、NPS®は計測する際0〜6点を付けた人を「批判者」、7・8点を付けた人を「中立者」、9・10点を付けた人を「推奨者」と分類します。
それに顧客の収益性を掛け合わせると下図のようなマトリクスが完成します。
このマトリクスでは右上の最優良顧客層は収益性も推奨度も高いため、単に個人として利益貢献するだけでなく、優秀なセールスマンとなり、新規顧客の獲得に貢献するセグメントになります。
これに対して、左下の反逆者は収益性が低いだけでなく、批判的な口コミを広める可能性があるため早急に対処する必要があります。
このようにNPS®と収益性によりセグメント分類を行ってうえで、各セグメントが抱えている課題を分析するとより具体的で解決性のある施策を検討することができます。
以上のことから、NPS®を活用することでより収益性に直結する調査ができることがご理解いただけたかと思います。
顧客満足度調査だけでは十分なインサイトが得られないと感じたときはNPS®を指標にした調査を行ってみてはいかがでしょうか。
NPS®解説資料ダウンロード
本資料では、これまでにご紹介したNPSの特徴を始め、NPSに関するよくある質問やNPSが合う業界・合わない業界などについても解説しています。
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