エモーションテック 編集部
NPS活用やCX向上のためのお役立ち情報を発信しています。
銀行業界では金融庁による顧客本位の業務運営への取り組みが進んでおり、各銀行はNPS調査や顧客満足度調査により顧客からの評価を定期に把握し、顧客体験やサービスの改善に努めています。
本記事ではエモ銀行という架空の銀行をモデルに、銀行におけるNPS調査の活用について紹介していきます。
目次
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エモ銀行におけるNPS®調査設計
エモ銀行では、個人の顧客に対する金融商品を販売する部門のサービスについてNPS調査を行います。
個人向け金融商品販売のNPS調査の質問設計
エモ銀行におけるリレーショナルNPS調査
ブランドロイヤルティを数値化
エモ銀行のリテール部門ではブランドに対するリレーショナルNPS調査とオペレーションに対するトランザクショナルNPS調査の両方を行っています。
リレーショナルNPS調査では、一般消費者に向けて「親しい知人や友人にエモ銀行で口座の開設や資産運用の相談をすることをどの程度おすすめしたいと思いますか?」と質問して、ブランド・ロイヤルティを数値化します。
また、「エモ銀行のブランド推奨度の質問に答えるにあたり以下の項目はどの程度プラス、もしくはマイナスに影響しましたか?」と認知から実際に銀行と接点を持つところまでの体験を分解して評価してもらいます。そうすることで、分析の際にエモ銀行のブランドNPSに影響を与えている要因を可視化することができます。
エモ銀行におけるトランザクショナルNPS調査
営業担当者の評価を可視化
トランザクショナルNPS調査では、金融商品を販売している営業担当に対して、商談後に顧客からの評価を調査します。この調査では、「資産運用を検討している親しい友人や親族がいたとして、〇〇(当日の営業担当者)に相談することをどの程度おすすめしたいと思いますか?」と推奨度を訪ねてNPSを算出します。
そして、リレーショナルNPS調査と同様に、推奨度に何が影響を与えたのかを評価してもらいます。評価項目としては、見た目や話し方から感じる印象や、説明のわかりやすさ、納得感、アフターフォローなど営業担当者の評価項目になりうる要素を洗い出して質問します。
銀行NPS調査レポート:
銀行NPS®︎調査レポート2023:<個人顧客対象>
銀行NPS®︎調査レポート2023:<法人顧客対象>
エモ銀行におけるNPS調査のタイミング
リレーショナルNPS調査のタイミング
半年に一度調査
リレーショナルNPS調査は半年に一度調査を行います。対象は一般消費者と既存の顧客です。あえて既存顧客にもリレーショナル調査を行うのは年齢や性別、過去にどのようなサービスを利用しいるかなどの属性情報が豊富に取れるからです。
調査の方法としては、一般消費者に関しては外部のベンダーに依頼し、オンラインで回答を取得します。既存顧客に対しては、メールアドレスがある顧客に対しては、メールで回答URLを送付します。また、メールアドレスのない顧客に対しては、葉書にQRコードを印字して送付します。
トランザクショナルNPS調査のタイミング
営業担当者との面談後に調査
トランザクショナルNPS調査は金融商品の営業担当者について調査するため面談後に回答を集めます。アンケートは面談後にメールにてURLを送付し、答えてもらえるようにします。評価項目としては、上述のとおり営業を担当する行員の印象や話し方、提案された商品の納得感、悩みが解決されたかいなかなど推奨度に影響を与えそうな要因をピックアップし、どの程度プラスもしくはマイナスに作用しているか確認していきます。
金融商品の商談はニーズ伺いから初めてクロージングまで一回の商談で購入まで至らないことも多いです。そのため、商談を「ニーズ確認」、「比較検討」、「クロージング」、「解約相談」と4種類に分けて、どのフェーズにおける調査なのかもデータを取れるようにすると、フェーズごとに求められていることを明確にすることができます。
エモ銀行におけるNPS調査データの分析
リレーショナルNPS調査の分析
セグメントごとの評価と時系列での推移を確認
リレーショナルNPS調査の結果は、顧客セグメントごとにどのような評価を受けているか確認し、現状をできるだけ正確に把握することに活用します。推奨度のデータと属性情報や既存顧客の過去のサービス利用履歴などを掛け合わせてクロス集計することで、おおまかに評価の高いセグメントとそうでないセグメントを把握することができます。
全体の傾向が見えてきたら、推奨度とそれに影響を与えた各体験の評価データを用いて、セグメントごとに相関分析や回帰分析を行うと、各セグメントにおいてどのような体験が推奨度をプラスもしくはマイナスに影響を与えているのか把握することができます。特に、推奨度の点数を独立変数、各体験の評価を説明変数にして重回帰分析を行うことで、各体験のうちどれが相対的に推奨度に強く影響を与えているのか定量的に理解することができるため、より具体的に顧客を理解することができます。
調査の回数を重ねて長期間のデータが溜まってきたら、NPSの推移をグラフ化して定期的にモニタリングを行います。半年に一度の調査ですが、その半年間に行った施策を一覧にまとめて施策のターゲットとなっているセグメントごとにNPSの推移をグラフにしていくことでおおまかに反応を掴むことができます。定性的なコメントを読みながら、どの程度施策が好評だったかや改善点を探っていきます。
トランザクショナルNPS調査の分析
セグメントごとの評価とオペレーション上の課題をあぶり出す
トランザクショナルNPS調査の分析は、営業担当の行員の良い点や課題を把握していくのに役立てます。
NPS調査ではよく収益性と紐付けて分析を行いますが、エモ銀行では、従来のインセンティブ設計がNPSにそぐわないこともあり、分析は慎重に進めます。というのも、今までのエモ銀行の収益源は、金融商品を販売した際の「手数料」になり、複雑な仕組みの金融商品が多い中必ずしもお客さんにとって最適な商品を提案することが売上最大化に繋がっていなかったのです。
一般的にはS&P500やNASDAQ100のようなインデックスと連動する投資信託が比較的安定してリターンを得ることができるとされていますが、インデックスファンドの投資信託は手数料の価格競争が激しく、あまり儲かりません。
それに対して、リスクの高い外貨建ての金融商品や新興国の株式や債券をポートフォリオに組みこんだ金融商品の方が手数料を多く取れる傾向にあり、エモ銀行側からするとこのような商品を販売するインセンティブがあったのです。
価格変動も激しく、かつ手数料も高いとなると顧客にとっては現金で寝かしておいた方がよかったケースも少なくありません。こういった社内の文化を打開するというのもNPS調査を導入した一つの背景となります。
したがって、従来の収益性の重要指標である各行員が獲得した手数料の額とNPSの連動性を見るのではなく、一旦はNPSに基づいた顧客本意の営業活動になるよう改善点を探っていきます。
分析の仕方は、リレーショナルNPS調査と同様にさまざまな切り口からクロス集計を行い、セグメントごとの評価をおおまかに確認します。そして、重回帰分析による解析を組み合わせながら、各セグメントや商談フェーズによって評価されているポイントとそうでないポイントは何かを探って改善施策を考えるヒントを得ていきます。
エモ銀行におけるNPS調査に基づいた改善活動
リレーショナルNPS調査の役立て方
対外的なPRに活用
リレーショナルNPS調査は、セグメントごとにNPSの推移を確認しながら、施策の効果検証を行い改善点を探ります。リレーショナルNPS調査はブランドを評価するものなので、広告関連の認知よりの施策の評価に適しています。
また、IR資料でNPSの推移をアピールすることで、投資家や顧客に対して、しっかり顧客に向き合った運営をしていることをアピールすることができます。例えばアメリカの大手リテール銀行であるJPモルガンチェースは毎年IR資料で自社のNPSの推移を公開しています。NPSを開示するということは非常に勇気のいることですが、顧客からすれば、自分の大事なお金をどこに預けるか考えるに当たって大きな安心材料になります。
トランザクショナルNPS調査の役立て方
行員の研修やモチベーションアップに活用
トランザクショナルNPS調査の結果は営業担当を担う行員の研修に活用します。顧客セグメントや検討フェーズごとにどのような対応が求められているかを定量的に示して、研修に落とし込むことで顧客本意の営業活動が可能になります。
また、営業担当者一人一人が自分の顧客の回答をリアルタイムに把握できるインフラを整えてポジティブな声は即座に伝えられるようにすることで、行員のモチベーションアップにもつながります。また、マネージャーも部下と話す際には顧客の声をベースに改善点を伝えることができるようになります。以前はマネージャーの経験則に基づく指導が中心でいたが、ファクトベースで顧客の視点に立って改善を促すことができるようになります。
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