NPS導入の失敗事例を徹底解剖!成果が出ない3つの典型パターンと成功への「次の一手」 | 株式会社エモーションテック

NPS導入の失敗事例を徹底解剖!成果が出ない3つの典型パターンと成功への「次の一手」

更新日:2026.01.13

このコラムの執筆者
梅川 啓

株式会社エモーションテック Marketing Manager 

複数企業の事業責任者を歴任したのち、2020年よりエモーションテックにCXコンサルタントとして参画。製薬会社や金融機関、化粧品メーカーのNPSプロジェクトやCXマネジメントの支援に携わる。2022年よりマーケティングに従事し、各種セミナーやイベントに登壇。

「NPS®を導入して顧客ロイヤルティを可視化したい」「顧客満足度を向上させたい」——。そんな意気込みでCX(カスタマーエクスペリエンス)向上の取り組みを始めたものの、「アンケートをとるだけで終わっている」「現場が動いてくれない」「一向に成果が見えない」といった壁にぶつかり、志半ばで断念してしまう企業は少なくありません。

これらの状況は、決してその企業の取り組みが間違っていたわけではありません。NPSの導入、CX向上に向けた取り組みにおいては、多くの企業が共通して突き当たる「壁」や、陥りやすい「落とし穴」が存在しています。

本記事では、これまで700社以上のCX支援を行ってきたエモーションテックの知見に基づき、CXの取り組みが停滞しがちな典型的な要因を整理しました。「なぜ、本来の目的から逸れてしまったのか」「どうすればその状況を打破できたのか」という成功に至るための「次の一手」を詳しく解説します。

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NPS・CXの取り組みにおける「失敗」とは何か?

NPS(ネットプロモータースコア)は、顧客のロイヤルティ(企業やブランドに対する愛着・信頼)を数値化する指標です。CX向上は、この数値を上げるプロセスを通じて、リピート率の向上や購買単価の増加といったLTV(顧客生涯価値)の最大化を目指すものです。

しかし、ビジネスにおける「失敗」とは、単にスコアが下がることではありません。本当の失敗とは、「集めた顧客の声(VoC)が事業成長や具体的な改善アクションに一切繋がっていない状態」を指します。

取り組みを継続する中で、これまでの取り組みの成果を振り返ったり、その結果にもとづきツールや手法の変更を検討する、といった「見直しのタイミング」は訪れます。大切なのは、このタイミングで「成果が出なかったから取り組みは終了(縮小)」ではなく、より本質的なCX向上に向けた取り組みを加速できるかどうかです。

※NPSの調査設計、分析がうまくいかない、といった点でお悩みの方はこちらの記事をぜひご覧ください。
NPS調査の作り方を解説!アンケートの作成や調査設計のコツがわかる
NPS®調査の分析方法とは?CX向上につながる集計と分析のポイント

CX推進を阻む「3つの共通課題」

多くの企業が直面してきた、成果創出を阻む代表的な課題を3つのパターンに分類して解説します。

パターン①:分析が「定型化」し、新たな示唆が得られない

NPSアンケートを導入しスコアの取得や顧客理解を深めていったとしても、それを「どう活用して現場を動かし改善していくか」のアップデートが止まると、取り組みは形骸化します。

  • ある通信サービス提供会社のケース
    カスタマージャーニー(顧客が辿る一連の体験ステップ)ごとに評価を取得していましたが、長年同じ設計でアンケートを続けていたため、「どこに課題があるか」が既に判明している状態が続きました 。しかし、その結果をどう改善のアクションに繋げるかという引き継ぎや議論が不足し、次第に「データをとるだけ」のルーチン作業になってしまいました。
  • ある人材紹介会社のケース
    一定期間、分析結果に変化がなく安定していたため、「十分に顧客理解はできているため、これ以上の深掘りはコスト的にも不要である」との経営判断で、取り組みが中止となってしまいました。

【改善へのヒント】

顧客体験のデータは、一度可視化して終わりではありません。重要なのは「課題が分かった後、どう現場の行動を変えるか」、そして「現場が実施した改善施策により顧客体験がどう変わったかを継続的にモニタリングすること」です。顧客が何を重視し、どう感じるかは日々変わり続けています。自社の強みやボトルネックも同様です。大きな課題が特定できたら、次は特定の接点(例えば店舗、コールセンター、アプリ内体験)に絞って解像度を高めるなど、フェーズに合わせた分析設計の柔軟な見直しが求められます。

パターン②:組織構造と「役割の不一致」による推進力の低下

CX向上の取り組みは、特定の部署だけで完結するものではありません。ビジネスの意思決定の責任者である経営陣、CXの主幹部署、顧客接点の最前線である現場それぞれの主体性と協力が欠かせません。取り組みにおける責任の所在や連携が曖昧になると、改善のスピードが落ちてしまいます。

  • ある大手玩具販売店のケース
    当初は人事部門が「スタッフ教育による顧客満足度向上」を目的に主導していました。しかし、現場の改善をより加速させるためにマーケティング部門へ移管する話が出た際、社内調整が難航。最終的に現場をサポートする体制が十分に整わず、取り組みが縮小してしまいました。
  • ある住宅メーカーのケース
    本部から現場へ改善要求を出すばかりの「一方的な関係」になってしまっていました。顧客からの改善要望ばかりを伝え続けた結果、現場スタッフが「自分たちが責められている」と感じてしまったことが、取り組みの停滞を招きました。

【改善へのヒント】

CX向上の主導権は、企業の戦略に合わせて柔軟にシフトさせる必要があります。「誰がやるか」よりも、「現場がどうすれば動きやすくなるか」を重視し、部門を越えた共通言語としてNPSを活用することが成功の鍵となります。

パターン③:インセンティブによる「コスト過多」

回答数を確保するためにインセンティブ(特典)を活用することは有効ですが、その設計を誤ると、取り組みの持続性が失われることがあります。

  • ある大手小売店のケース
    回答者に「10%オフクーポン」を配布した結果、回答数は飛躍的に伸びました。しかし、クーポン配布による利益へのインパクト(年間数千万円規模の割引損失)が、運用のコストを大きく上回ってしまいました。その結果、施策そのものの費用対効果が厳しく問われ、調査の中断を余儀なくされました。
  • ある人材紹介サービスのケース
    当初は高額なギフト券をインセンティブにしていましたが、コンプライアンス上の理由で廃止した際、回答数が激減しました。

【改善へのヒント】

インセンティブは「回答のお願い」ではなく、あくまで回答いただいたお客様への「感謝の印」として位置づけるのが良いでしょう。インセンティブがなくても回答したくなるような「顧客との関係性」の構築や、アンケート自体の回答体験(短さ、答えやすさ)の改善に目を向けることが、長期的なコストパフォーマンス向上に繋がります。

700社以上の支援実績から導き出した「成功への3原則」

CX・NPSの取り組みを「形骸化」させず、「成果」へと変えていくために、エモーションテックが大切にしている3つの考え方をご紹介します。

原則1:小規模な「成功体験」を組織内で作る

最初から全社一斉に完璧な運用を目指す必要はありません。

  • 成功のポイント:まずは特定の店舗や特定のサービスラインなど、コントロールが効きやすい範囲で「顧客の声を聞いて改善したら、結果が変わった」という小さな成功事例を作ります。
  • 具体例:まずは特定の範囲で小さく始め、サイクルを確立してから全体へ拡大するというアプローチの事例です。
    • 京都生活協同組合:全18店舗への導入前に、まず5店舗を「トライアル店舗」として選定しました。店舗課題の把握、施策検討、アクション宣言、実行、効果検証という一連のサイクルをこの5店舗で先行して実施しました。トライアルの結果、ポジティブに取り組める体制が整い、成果を確認した上で、全店舗への展開を進めました。
    • 株式会社ネオキャリア:NPSが自社の手法に馴染むかを検証するため、まずトライアルを実施する部門を決め、段階的にスタートしました。トライアル部門で成功事例が出始めると、他部署からも「やりたい」という声が上がり、その段階で役員や事業部長への勉強会を実施して理解を深め、全社展開へと進めました。

原則2:「現場をサポートするための武器」として再定義する

NPSを「現場を評価・管理するためのツール」から、「現場の努力を可視化し、支援するためのツール」へと位置づけを変えます。

  • 具体例:「現場を管理・評価するツール」ではなく、「現場の努力を可視化し、モチベーションを高めるツール」として活用している事例です。
    • 株式会社バーニーズ ジャパン:導入当初、従業員が「調査=怖いもの」と感じないよう、ポジティブなフィードバックを中心的に共有するように工夫しました。NPS調査でお客様からお褒めの言葉をいただいた個人を社内表彰の対象とするなど、接客に対するモチベーション向上につながり、従業員エンゲージメントを高める仕組みとして機能しています。
    • 株式会社アイダ設計:当初は本部から現場へ一方的に結果を報告する会議でしたが、これを現場が主体となって具体的なアクションプランを発表する場へと変更しました。現場が「自分ごと」として捉えられるようになり、優秀な評価を得た店舗や個人を社内報や全体会議で表彰することで、全社的な意識改革に成功しました。

原則3:変化に合わせて「分析の視点」を更新し続ける

一度作ったアンケートを数年間使い続けるのではなく、組織の成長や顧客の変化に合わせて問いを更新します。

  • 成功のポイント:自社の大まかな顧客体験の構造が見えてきたら、競合とのベンチマーク比較により業界内での立ち位置を探る、次は「フリーコメントのAI分析」に注力して現場の微細な変化を捉える、あるいは「特定のタッチポイント」を深掘りするなど、常に「今、現場が必要としている情報」が得られるように設計をチューニングし続けます。
  • 具体例:一度作った調査設計を柔軟に変化させ、課題の解像度を上げるための「深掘り」や、新たな技術(AI)を用いた分析へ進化させている事例です。
    • 株式会社ゴンチャ ジャパン:調査をフェーズ分けして実施しました。フェーズ1で「接客」に課題があることを特定した後、フェーズ2では「接客」に絞った深掘り調査を実施しました。その結果、「商品お渡し時の丁寧さ」や「笑顔」といった具体的な重要ポイントを明らかにし、現場が納得感を持って改善に取り組めるようにしました。
    • 株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ):従来のNPS調査やVoC活動に加え、サポートセンターへの問い合わせ内容(音声テキストデータ)をAI分析ツール「TopicScan」を用いて解析しました。これまでブラックボックス化していた「その場で解決した問い合わせ(全体の85%)」の内容を深掘り分析し、解約や転出に関するWeb上の導線不備を特定。FAQ改善などを行い、着信削減効果などの成果につなげました

まとめ:CX向上・お客様の体験価値向上に向き合い続けるために

NPSやCXの取り組みにおいて、途中で課題にぶつかったり、運用の形を変えたりすることは、決して「失敗」ではありません。それは、顧客とより真摯に向き合うための「進化の過程」です。

  • 分析をアクションに繋げる:データの可視化をゴールにせず、現場が「次の一手」を打てる情報を提供し続ける。
  • 組織の壁を越える:本部と現場が共通の目標を持てるよう、コミュニケーションの設計を丁寧に行う。
  • コストと質のバランスを見直す:過度なインセンティブに頼らず、持続可能な調査設計を行う。

エモーションテックは、こうした「運用上の壁」を乗り越えるためのパートナーとして、多くの企業の再スタートを支援してきました。今の取り組みに少しでも迷いを感じているなら、それはさらなる飛躍のためのチャンスかもしれません。

CX向上の「次の一手」にお悩みならエモーションテックへ

顧客体験(CX)の改善は、一度の調査で終わるものではなく、組織として継続し続けることが重要です。

エモーションテックでは、顧客の声を可視化し、現場の改善アクションに繋げるための「EmotionTech 」を提供しています。700社以上の支援実績で培ったノウハウをもとに、貴社の現状に合わせた最適な運用設計と伴走支援を行います。

「今のツールで十分な示唆が得られていない」「現場を巻き込む体制を作りたい」といった具体的なご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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