NPS®は日本人に向いてない?NPSがマイナスになる理由や計算方法を紹介! | 株式会社エモーションテック

NPS®は日本人に向いてない?NPSがマイナスになる理由や計算方法を紹介!

更新日:2024.07.26

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エモーションテック 編集部

NPS活用やCX向上のためのお役立ち情報を発信しています。

NPS®️は、事業を成長させるための重要な指標として、日本でも多くの企業に活用されています。
NPSが高いほど、より良い顧客体験を提供できていると思われるかもしれませんが、日本では実際に導入した企業から「NPSの調査結果がマイナスに出る」という声をよく耳にします。
「マイナスのスコアが出ているのだからサービスや製品に重大な欠陥があるに違いない!」と思われる方もいるかもしれませんが、そうではありません。実は日本においてNPSが低く出やすいのは日本の国民性が大きく影響しています。
NPSの意味やマイナスになりやすい理由を正しく捉え、データの活用方法を知ることが大切です。

本記事では、NPSの捉え方や活用方法をご紹介します。

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NPS®の計算方法

NPS®とは、Net Promoter Scoreの略で顧客ロイヤルティを定量的に把握するための指標です。

NPSを把握するには「〇〇(商品やブランド)をどの程度親しい友人や家族におすすめしたいと思いますか?」という質問に0~10点で答えてもらいます。

そして、9点と10点をつけた回答者を「推奨者」、7点と8点をつけた回答者を「中立者」、6点以下をつけた回答者を「批判者」と分類します。回答者全体の中の「推奨者」の割合から、「批判者」の割合を差し引いた数字がスコアとなります。

関連記事:
NPS®とは?顧客満足度との違い・質問方法・事例まで詳しく解説!

日本におけるNPS調査の傾向

日本でのNPSはマイナスに出やすい傾向がある

NPS調査を日本国内で行った場合、スコアがマイナスに出る傾向にあることが指摘されています。例えば、SatmetrixというNPSのコンサルティング事業を手掛けるアメリカの企業が行った調査では、「日本の顧客は他の国に比べ、最も満足度やロイヤルティの点数を低く付ける傾向にあった」と発表されています。
『ネットプロモーター経営』の著者の一人であるベイン・アンド・カンパニーのロブ・マーキー氏もQuoraという海外のQ&Aサイトにて、「多くの国で文化的な要因がNPSに影響を与えることはないが日本は別である」との指摘をしています。(参考元:Does the UK tend to score lower in consumer product net promoter scores (NPS)?

また、アメリカのコンサルティング会社のTemkin Groupが公表している2018年度の業界別のNPSベンチマーク調査では、平均がマイナスになっている業界が一つもないのに対し、弊社が過去に行った様々な業界における調査では日本国内の多くの企業でNPSがマイナスになるケースが確認されています。

このように日本においては素晴らしい商品やサービスを提供している企業であってもNPSがマイナスに出ることは決して珍しいことではないのです。

日本人特有の回答中心化傾向

日本においてNPSが低く出る原因の一つとして、日本人の「回答中心化傾向」が考えられます。「回答中心化傾向」とは、例えば5段階で評価を行う場合、そのちょうど真ん中である3の評価をつけやすいことを表します。
みなさんの中にも過去に回答したアンケートで心当たりのある方は多いのではないでしょうか。
ある出来事についてどれくらい合意できるかを尋ねるリッカート尺度を使用した調査において文化的バイアスが生じることは1990年ごろから多くの研究で指摘されてきました。

例えば、南カリフォルニア州のスーパーマーケットにおいて、日本人と中国人とアメリカ人に対して自身の健康について4択、5択、7択でアンケートを行ったところ、ポジティブに感じているかを問われた質問については、日本人はアメリカ人に比べて高い点数をつけずに中間点を回答する可能性が高いことが示されています。
つまり、日本人は高い評価をつけることを避ける傾向があるのです。研究内では日本は集団主義的な性質があり、「出る杭は打たれる」というように集団での合意を取りにくくする極端な意見表明を避ける傾向があることが原因ではないかと分析されています。

実際にエモーションテックが日本国内でNPS調査のご支援を行う中でもよく見られるのは、下図のように推奨度5点、8点に回答が集中するようなパターンです。

中間評価として5点、また商品サービスに好感を持っていたとしても5-10点の中間で8点を選んでしまうという中心化傾向が現れているように見受けられます。なお下図の分布の場合NPSは-38.1(推奨者15.1%-批判者53.3%)となります。

しかし5点・8点が多くNPSがマイナスに出てしまうからといってNPSが有用ではないわけでは決してありません。後述するように推奨度と収益指標の関係を併せて検証していくことで、7-8点(中立者)の評価を9,10点(推奨者)に上げていく、5,6点の批判者に分類されてしまっている中間層を中立者に上げていくことの意義が確認できます。

なぜ日本ではNPSがマイナスに出やすいのか?

ハイコンテクストかつネガティブフィードバックを避けるコミュニケーション文化

この日本人特有の性質は世界中の国々との比較においても明確です。
この背景としては、日本人のコミュニケーションスタイルがハイコンテクスト文化であるところが挙げられます。ハイコンテクスト文化とは言葉で直接表現しなくても、互いに意図を察し合う文化のことです。
INSEAD客員教授のエリン・メイヤー氏が執筆した『異文化理解力』という書籍では、日本は「最もハイコンテクストかつ最も間接的なネガティブ・フィードバックを行う国」として認識されています。

ハイコンテクスト・ローコンテクストとは、簡単に言えば思っていることを率直に伝える文化かどうかという意味で、ハイコンテクストとされる文化圏では、短く簡潔で率直なメッセージはあまり好まれません。メッセージをぼかしながら伝えたり、集団の前ではなく一対一で賞賛や注意を行ったりするのがハイコンテクスト文化の特徴です。
ハイコンテクスト文化の中では思っていることをはっきり表現しないので、NPS調査の回答も4~6点によってしまうのではないかと考えられます。上記の通り、NPSを算出する過程では、6点までを批判者とカテゴライズしてしまうため、ハイコンテクスト文化圏ではNPSが低くなってしまうのです。

つまり日本人は、他人とのコミュニケーションで評価を伝える際、一般的に思っていることをストレートに表現したり批判的な意見を言ったりすることが苦手であり、この傾向が回答の中心化傾向につながっているのではないかと考えられます。

反対にローコンテクスト文化では、言葉により直接的な表現をしないと意図が伝わりません。例えば、アメリカのような多民族国家で互いに共通する文化をあまり持たない環境では、思っていることをはっきり伝えないと意図が伝わらないのです。したがって、NPS発祥の地であるアメリカでは良いものにははっきりと9点や10点をつけるので、NPSがプラスになりやすいと考えられます。

コミュニケーションにおけるコンテクスト依存度合い

NPS調査は日本企業に向いていないのか?

では、日本ではNPSは使えないのかと言うと全くそんな事はありません。なぜなら、NPSの絶対値にはあまり意味がないからです。NPSの運用において重要なポイントを解説します。

NPSは推移や比較に注目し、顧客体験の改善につなげる

NPSを活用した顧客体験改善活動において、重要なのは過去の推移や競合に比べて今どのように評価されているかということです。

定常的にNPS調査を行い過去のスコアと比較することで、現状の評価を大まかに把握することができます。また、顧客体験を向上させるための何らかの施策を実施している場合は、効果を検証することができます。

また、他社との比較では、NPSに影響を与えそうな要因(例:店舗型のビジネスであれば、「商品の種類」や「接客」など)も一緒に聞いておくと、相対的な強み・弱みが把握できるのでおすすめです。

※NPS調査における質問設計の方法については、こちらの記事を参考にしていただけると幸いです。
NPSの効果的な調査方法とは?調査票の作成方法や調査設計のコツを解説

推奨度の売上に対するインパクトを把握する

NPSの特徴として挙げられるのが収益性との相関の強さです。弊社が過去実施してきた多くの調査でも、売上と推奨度の関連性の強さが確認できています。

NPS調査を実施する上ではまず、推奨度ごとに平均的な収益性を把握することをおすすめします。そうすることで、推奨度が1点上がるごとに売上がどの程度増えるかを知ることができます。

下図はある小売業を営む企業でNPS調査を実施し収益性との関連を調べたグラフです。横軸に推奨度、縦軸に回答者の総利用金額を取っています。推奨度と総利用金額にはきれいな相関が有り、推奨度が1点上がるごとに総利用金額は23,913円上がる計算になります。

加えて注目すべきポイントは推奨度8点と9点の総利用金額の差です。全体を平均すると推奨度1点ごとの総利用金額の差は約23,000円ですが、8点が9点に変わるタイミングで、約4万円ほど総利用金額に差が出ています。

上手の日本人によくあるパターンでは8点をつける傾向が強いことを示しましたが、この8点をつけるユーザーにより愛着を感じてもらい9,10点をつけてもらうことで大きく収益にインパクト与えられるであことが示唆されます。

実際にNPSを活用して改善施策を考える際はこのように推奨度ごとの特徴に注目し、8点のを9点に上げるためには何をすればいいのかといった視点で、顧客の属性情報やコメントを見ながら案を練っていきます。

NPSと総利用金額(LTV)

何が推奨度の改善につながるかを考える

NPS調査において、推奨度を聞く質問と同じくらい大切なのが、「推奨度の点数をつける上でどういった要素がどの程度影響しましたか?」という質問です。例えば、アパレルショップの場合、「広告や口コミによるブランドイメージ」や「商品のデザイン」、「店員の接客」などが推奨度に影響を与える要素として考えられます。それらの要素を整理して、「推奨度を答えるにあたって下記の要素はどの程度プラス、もしくはマイナスに影響しましたか?」と質問することで、分析の際に課題を把握することができるようになります。

以上のように、NPSを使って顧客体験を改善する上では、スコアがマイナスに出ようと関係ありません。まず大切なのは、相対的に他社や自社の過去のデータと比較し、現在どのような評価を受けているのかを知ることです。そして、推奨度を1上げるためには何をすべきかを顧客セグメントごとに考えていくことが顧客体験の向上に繋がります。

NPSを指標として顧客ロイヤルティ向上に取り組む日本企業の事例

日本企業においてもNPSの活用は着実に広がりつつあります。

業界として「顧客本位の業務運営」に取り組んでいる保険業界や銀行業界では多くの企業がNPSを顧客ロイヤルティの指標として採用し、対外的に公開している企業も少なくありません。

第一生命や三井住友銀行など業界を代表する企業はNPSを用いて顧客本位の業務運営に取り組んでおり、その取り組み内容や数値についても対外的に公開しています。

関連記事:
【国内】NPSを活用する企業事例8選!取り組みのポイントも解説

NPSがマイナスに出た場合の伝え方

NPSの絶対値自体にあまり意味がないことを知っていたとしても、そもそもマイナスに出てしまう指標を導入することに抵抗があるという担当者の方もいらっしゃるかと思います。

数値が「マイナス」であるということは、その結果を経営陣や社内の関係部署に伝える際にどうしても否定的に捉えられてしまうことがあります。

そういったケースを防ぐためにも、NPS調査を行う場合には上記したようなNPSの性質そしてスコアではなくそのものではなく、その改善・推移を追うことに意味があることをしっかりと事前に伝えておくことが大事でしょう。

またNPS調査の結果を社内に伝える際にはポジティブな声をまずは共有するように心がけましょう。

調査結果を見る際には「課題」と「改善点」にばかり目が行きがちですが、お客さまの中にどれくらい「推奨者」がいるのか、そして「推奨者」の方はどういった点に満足いただいて、どのように褒めていただいているのか、そういった声をまずは共有するようにします。

ネガティブな声や課題が先に伝えられてしまうと、聴く側にとってはお客さまの声が「聞きたくないもの」になってしまいます。調査結果を正しく改善に活かすためにも、社内にしっかりとお客さまの声を受け入れる状態を作るようにしましょう。

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